11月23~25日、富士スピードウェイで行われたスーパーGT GT500クラスのマシンとDTMドイツ・ツーリングカー選手権のマシンによる夢のレース『AUTOBACS 45th Anniversary presents SUPER GT X DTM 特別交流戦』。レースは今までのスーパーGTにはないバトルの連続で盛り上がりをみせたが、加えて多くの将来へ繋がる可能性をみせた。そのうち、ブノワ・トレルイエを擁して参戦したWRT Hitotsuyama Team Audi Sportは、日本とベルギーの混成チームとして、将来に向けた可能性を示している。
今回、DTMドイツ・ツーリングカー選手権からは7台のマシンが参戦し、スーパーGT GT500クラスのマシンたちと競演をみせてくれたが、そのうち4台を占めたアウディRS5 DTMは上位を争う活躍を披露。11月23日のレース1では、混戦のなかでアグレッシブな走りをみせたトレルイエのAudi Sport Japan RS5 DTMが6位に食い込み、DTM勢の最上位となった。
「日本とヨーロッパのファンはこのような迫力満点のレースを待ち望んでいた」BMW&アウディ首脳が特別交流戦を評価
もともと今回のスーパーGT×DTM特別交流戦に向けては、アウディはBMWと同様にワークスの3台が参戦する予定だった。一方、今季からDTMにプライベートチームとして参戦を開始したWRTとしては、できれば日本での特別交流戦に出場を希望していたが、いかんせんプライベーターであり、なんらかのサポートが必要だった。そこで実現したのが、GT300クラスでWRTとコラボレーションしていたHitotsuyama Racingとのコラボによる参戦だったのだ。
アウディジャパンとの協議の末に実現したWRT Hitotsuyama Team Audi Sportの特別交流戦参戦。カラーリングは、事前にHitotsuyama Racingからチームカラーの蛍光の黄緑、そしてふだんスーパーGTでチームをサポートしているスポンサー、アウディジャパンのロゴを配するように依頼した。
すると、WRTからはふだんDTMで使っているWRTのカラーリングパターンをベースに、ホワイトとグレー、黄緑が入ったカラーリングが完成。両チームのコラボを具現化したようなルックスに、Hitotsuyama Racingの一ツ山亮次代表も「一発OKを出しました」と笑顔で語ってくれた。
さらに今回の参戦にあたっては、WRTのスタッフがメインとなったが、Hitotsuyama Racingからもチームマネージャー1名、メカニック2名が加わり日欧の混成チームが実現。トレルイエもその実力をいかんなく発揮し、プライベーターとは思えぬ活躍を示した。「楽しんでます(笑)。うまくいったな……という感じです」と一ツ山代表は満足げな表情を浮かべた。
■2021年にアウディRS5 DTMがGT500挑戦?「可能性は、あると思います」
そして、今回のコラボレーションでの参戦は、将来のHitotsuyama RacingのGT500クラス復帰の可能性を見据えてのものだという。もちろん、使うのはアウディRS5 DTMだ。
チームはかつてはマクラーレンF1 GTRやフェラーリ550マラネロを持ち込みGT500クラスに外国車の彩りを加えてきた。そのGT500での歴史は、2009年に都筑晶裕/土屋武士のコンビで挑んだアストンマーティンDBR9で途絶えていたが、国産GT500と相まみえたのは、それ以来のことだ。
「もちろん今回の参戦は、将来に繋げることを望んでのことです」と一ツ山代表。ただ、当然ながら参戦には障壁も多い。2020年からGT500クラスも『クラス1+α』の車両規定となり、DTM車両との差はほとんどなくなるが、それでもスーパーGTに参戦するとなれば、わずかに差がある空力やエンジニアリング、そして何より特殊なGT500タイヤへの対応、さらにGT300からは大きく増えるであろうコストへの対応もしなければならない。
ただ一ツ山代表は「来年……ということは時期尚早ですし、今回のスーパーGT×DTM特別交流戦を見ていても、DTM第9戦ホッケンハイムを見ていても、いろいろ調整しなければならないことは多いですから。でも、2021年は可能性はありうるかな……とは思っています」という。
「やはり課題はコストですね。大きいコストがかかるものなので、そこをどうするかだと思います」
「逆に言えばそれをクリアすれば、アウディRS5 DTMを日本に持ってくることができる可能性は、あると思います」
あくまで噂レベルだが、アウディがもしGT500を始めるならば、足並みを揃えてBMWも始めるのではないか……という説もある(アストンマーティンはRモータースポーツのプライベートマシンであり、事情は異なる)。今回のスーパーGT×DTM特別交流戦では、まだ完全に規定が一緒ではないにも関わらず、DTMマシンの実力が、スーパーGTマシンと予想以上に僅差であることも証明された。
一ツ山代表の言葉にもあるとおり、問題はやはりコストとはなりそうだが、GT500へのドイツ車参戦という新たなステップが、今回のレースを機に見えはじめたのかもしれない。
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