成り立ちも異なる2台のGR86がスーパー耐久第2戦富士24時間に登場。ST-4がいよいよ開幕

　6月3～5日、富士スピードウェイで開催されるENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook第2戦『NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース』。今回多くの話題の車両が参戦するが、ST-4クラスに2台の新型トヨタGR86が登場した。レース直前に完成した2台だが、レースウイークを迎えこれまで順調に走行を続けている。

■走り出しから速さで圧倒するTOM'S SPIRIT GR86
　2022年のスーパー耐久のなかでも、注目の車両と言えるのがGR86だ。第1戦鈴鹿では、ST-Qクラスにカーボンニュートラル燃料を使ったORC ROOKIE GR86 CNF Concept、兄弟車のスバルBRZを使ったTeam SDA Engineering BRZ CNF Conceptの2台が登場したが、このときはST-4クラスの開催はなく、今回の第2戦がST-4にとっての開幕となる。このレースに合わせて登場したのが、86号車TOM'S SPIRIT GR86、そして名門浅野レーシングサービスが走らせる18号車Weds Sport GR86だ。

　2台のうち、早い段階から参戦が公表されていたのがTOM'S SPIRIT GR86。ST-4で多くのタイトルを獲得してきたTOM'S SPIRITが仕立てたマシンだが、世界的な物流の遅れもあり当初予定より完成は遅れ、5月20日にシェイクダウンされた。参戦する3人のドライバーのうち、山下健太と河野駿佑はオートポリスにいたことから、松井孝允がシェイクダウンを担当した。

「走ることについてはしっかり終えられましたが、市販車のところから変更して良い部分、もっと良くなる部分など、『もっといいクルマづくり』を進める上で、新たに見つけることができたシェイクダウンでした」というのは松井だ。

「走りについてはそれほど心配していないです。今後も戦いながらいろいろなことを改善していくプロジェクトだと思っています」

　気になるのは、松井もドライブしていた先代の86との比較だ。これについては「骨格の部分の剛性アップがすごく効いていますね。先代ではごまかしたり、足を固めていたりしていたのですが、GR86になって足回りをちゃんとうまく使えるようになっています」という。

　また河野は6月1日に初めてステアリングを握ったが、「制御系など、細かいトラブルはありましたが、足回りなどメカニカルな部分はまったくトラブルがありませんし、順調ですね。もちろんエンジンが大きいのはありますが、86や他のGR86とタイムを比較しても、ベース車両の良さ、TOM'S SPIRITのチーム力の高さに尽きるのではないかと思っています」と好感触を得ている。実際、2回の専有走行でもST-4のライバルに対し2秒以上の差をつけており、今回の本命とも言えるだろう。

■思い入れのあるカラーリングとともに挑むWeds Sport GR86
　一方、浅野レーシングサービスが製作したのがWeds Sport GR86。こちらは完成したのは5月30日。「いろいろな作り込みも必要でしたからね」というのは、Aドライバーとしてもチームを率いる浅野武夫代表。

「6月1日から走りはじめましたが、細かいトラブルはありつつも、直して確認走行を行いました。あとは足回りのセットアップなどをやってみようと思っています。また制御系のトラブルなども出てきているので、それを改善してきています」

　TOM'S SPIRIT GR86とは異なり、イングス製のエアロパーツを装着していることから、見た目の印象もかなり異なる。車両としての感触を聞くと「まだ抑えて走っていますが、（86で参加した）前回の公式テスト並みのタイムが出ている」という。

　もちろん、今回はいきなり24時間という長丁場。「トラブルが起きない……というのはあり得ないと思うので、対処しながら完走を目指したいと思います」とはしつつも、「パーツがすべてあるわけではないので、レース中何かあったら厳しいかもしれません」とのこと。

　また今回目を引くのは、往年のグループA時代のAE92カローラ・レビンを彷彿とさせるカラーリングだ。これについて聞くと「昨年、来季GR86を使おうと決めたときに、スポンサーのウェッズさんと相談して『GT500はあのカラーで良いけれど、スーパー耐久はあのカラーリングにしたい』となったんです」という。

　浅野代表によれば、ウェッズの稲妻範彦代表取締役社長はカローラ・レビンを走らせていたグループA時代の頃にチームを手伝ったこともあったそうで、あのカラーリングへの思い入れもあったのだという。

「また長いレースになるとカラーリングが分かりづらいと見逃してしまうこともあるんですよね。サインガードにいる人たちにとっても、分かりやすい方がいい。みんなに分かってもらえることが大事ですし、アピールできてこそのスポンサーカラーですからね」と浅野代表。

　2台のGR86、そしていよいよ開幕するST-4の戦いがどんなものになるのか、今回の富士SUPER TEC 24時間の注目のポイントと言えるだろう。