現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 胸が打たれるアウトバーンの走り アウディeトロンGTで欧州大陸を巡る 電動グランドツアラーの可能性(2)

ここから本文です

胸が打たれるアウトバーンの走り アウディeトロンGTで欧州大陸を巡る 電動グランドツアラーの可能性(2)

掲載 2
胸が打たれるアウトバーンの走り アウディeトロンGTで欧州大陸を巡る 電動グランドツアラーの可能性(2)

フィスカー・カルマの精神的な後継モデル

ドイツを南へ下り、南西部のバーデン・バーデンへ。ここには、50kWの急速充電器がある。辿り着くと、非常に珍しいフィスカー・カルマが繋がれていた。

【画像】無敵マシンのような信頼感 アウディeトロンGT 基礎を共有するタイカン 最新Q8 eトロンとフィスカーも 全132枚

2011年に発売されたカルマの価格は、当時10万ドル。レンジエクステンダー用の2.0L 4気筒エンジンを搭載し、システム総合408psを発揮するプラグイン・ハイブリッドだ。0-100km/h加速は5.9秒、最高速度は201km/hが主張された。

超高効率なグランドツアラーとして、有望な雛形といって良かったが、駆動用バッテリーのサプライヤーが2012年に倒産。フィスカーも経営破綻へ至り、最終的に2500台の生産数へ届くことはなかった。

10年の時を経てリリースされたアウディeトロンGTは、カルマの精神的な後継モデルといえるかもしれない。最高速度244km/h、0-100km/h加速4.1秒という能力は、それに相応しい。

eトロンGTのボディの前後には充分な荷室があり、合計すると490Lになる。BMW M5ほど広くはないが、大人2名の旅の荷物は問題なく飲み込んでくれる。製造品質やソフトウエアの完成度も優秀だ。

パノラミック・ガラスルーフを選ぶと車重が増え、航続距離は5km程度短くなる。とはいえ、開放的な車内が手に入ることを考えれば、選ぶ価値はある。

2011年には、日産リーフも発売された。eトロンGTの能力を知ると、それから約10年しか経過していない事実へ驚く。新しいロータス・エメヤやポールスター5が、電動4ドアサルーンの競争をさらに1歩進めることだろう。

ドイツの黒い森を縫う一般道もホーム

駆動用バッテリーを満たし、黒い森、シュヴァルツヴァルトを縫う一般道へ。ダイナミック・モードを選び、サスペンションを引き締める。アクセルレスポンスが向上し、ステアリングが重くなる。2速ATの組まれたリアアクスルが、本領を発揮する。

メーター用モニターのグラフィックが、レッドに変わる。車内には、加速時に人工サウンドが響き始める。

eトロンGTにとって、ドイツのB500号線は間違いなくホーム。緩やかに伸びる高速コーナーが連なり、軽くない車重を感じにくい。アスファルトは平滑で、エアスプリングが硬くなっても乗り心地への影響は小さい。

道幅は広く、視界も広い。eトロンGTは、キビキビと正確にラインを辿る。旋回時の、安定し落ち着いた身のこなしは、ミドシップ・スポーツカーを彷彿とさせる。

アクセルペダルの加減で、コーナリング・スタンスも僅かに調整できる。脱出加速の瞬発力は、ポルシェ911 ターボのようでもある。

アウトバーンでのマナーも素晴らしいが、ここでの振る舞いも引けを取らない。だが、ドライバーを感動させるほどではなかった。それは、ドライビング体験が一元的なものだからだろう。

連続するカーブの処理能力は華麗といえ、思わず気持ちが高ぶる。しかし、魅惑的なエンジンを搭載したモデルとは異なり、単調さが拭えない。残念だが事実だ。

タイトコーナーが連続する区間との相性も◎

周囲が暗くなる中、アルプス山脈の麓のホテルへ到着。ピルスナー・ビールと引き換えに、充電は諦めた。翌朝は、60km離れた急速充電器まで丁寧に走らせる。今回のロングドライブで、唯一エネルギー効率を強く意識した時間となった。

BMW 320dツーリングに追い越されながら、淡々とアウトバーンを流す。電費効率は、4.7km/kWhほど。正直あまり良くはない。

制限速度のない区間を本気で飛ばしたら、電費は1.6km/kWh程度まで落ち込むだろう。航続距離は、145km前後まで悪化する計算になる。それでも、飛ばしたい気持ちを抑えることは簡単ではない。

駆動用バッテリーを満たし、イタリア北部、ボルツァーノの街へ抜けるペンネス峠へ。引き締まったシャシーに、高精度なステアリングと鋭いパワートレインが組み合わさり、eトロンGTはタイトコーナーが連続する区間との相性も悪くない。

目的地までは無充電で辿り着ける距離だが、それは手加減した場合。自由奔放に右足を動かせば、その可能性は低くなる。

かくして、その先のヴェローナまでの1465kmに要した充電時間は、合計115分。充電にかかった金額は199ユーロ(約2万9000円)で、消費した電気は268kWhとなった。

BMW M5なら、ざっくり160Lのハイオクを燃やしたことだろう。給油に支払う金額は、約300ユーロ(約4万3000円)になる。ただし、数分でガソリンタンクは満たされるはずだが。

EVの高級グランドツアラーへ広がる可能性

今回のロングドライブでは、バッテリーが空になる不安へ襲われることはなかった。もっとも、行く先の充電器の場所を都度確認していたからではあるが。

eトロンGTの能力を存分に堪能できたかと聞かれると、充分にはできなかった、というのが本音。現在の航続距離では、慎重にならざるを得ない。

充電計画を、予め組み立てておくことも欠かせない。充電には数10分かかるだけでなく、先の利用者がいた場合は、終わるまで数10分待つ可能性もある。加えて、充電速度は常に変化するため、必ずしも最短時間でフル充電になるわけではない。

それでも、筆者はバッテリーEVの未来へ楽観的ではある。eトロンGTは、心を震わせるほどの魂を宿していないかもしれないが、アウトバーンを静かに駆け抜ける快適性は見事なものだ。

瞬間的に220km/hまで加速できる余裕の動力性能を備え、高めの速度域を維持するのも容易い。連続する高速コーナーを流暢に淡々と処理する能力には、胸が打たれた。

バッテリーEVへ熱い魂を吹き込むことは、簡単ではないかもしれない。だとしても、航続距離の課題は今後解決されるだろう。内燃エンジンを積まない高級グランドツアラーに、大きな可能性が広がっていることを、この旅で確認することができたと思う。

アウディ eトロンGT(英国仕様)のスペック

価格:11万2000ポンド(約2027万円/試乗車)
全長:4989mm
全幅:1964mm
全高:1413mm
最高速度:244km/h
0-100km/h加速:4.1秒
航続距離:490km
CO2排出量:−
車両重量:2347kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
バッテリー:83.7kWh
最高出力:475ps(530ps/オーバーブースト時)
最大トルク:65.1kg-m
ギアボックス:1速リダクション(フロント)/2速リダクション(リア)(四輪駆動)

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

全長2.5mで新車100万円級! トヨタの「斬新2シーターモデル」がスゴイ! めちゃお手頃サイズなのに「必要にして十分」の“おふたりさま向けマシン”とは
全長2.5mで新車100万円級! トヨタの「斬新2シーターモデル」がスゴイ! めちゃお手頃サイズなのに「必要にして十分」の“おふたりさま向けマシン”とは
くるまのニュース
アルピナの未来、26年「BMW傘下」でどう変わる? 高性能EV&Mモデルとの差別化を考える
アルピナの未来、26年「BMW傘下」でどう変わる? 高性能EV&Mモデルとの差別化を考える
Merkmal
高すぎるよぉ…! 価格が暴落したら買いたいスーパーカー3選
高すぎるよぉ…! 価格が暴落したら買いたいスーパーカー3選
ベストカーWeb
男性が乗って女性にモテるクルマTOP5は? ChatGPTに聞いて出た「ホントかよ!」な答えとは!!
男性が乗って女性にモテるクルマTOP5は? ChatGPTに聞いて出た「ホントかよ!」な答えとは!!
WEB CARTOP
悲喜交々のST-4。「複雑な気分」のENDLESS GR86と「逆に清々しい気持ち」で5連覇を逃した冨林勇佑
悲喜交々のST-4。「複雑な気分」のENDLESS GR86と「逆に清々しい気持ち」で5連覇を逃した冨林勇佑
AUTOSPORT web
光岡、話題の55周年記念車『M55』を市販化、100台限定で808万5000円
光岡、話題の55周年記念車『M55』を市販化、100台限定で808万5000円
レスポンス
「とりあえず増税ね」で50年!? 「世界一高い」自動車諸税&ガソリン税“見直し”正念場 “年収の壁”の向こうの璧
「とりあえず増税ね」で50年!? 「世界一高い」自動車諸税&ガソリン税“見直し”正念場 “年収の壁”の向こうの璧
乗りものニュース
あれぇぇ!? [ノートオーラNISMO]と[シビックRS]を比較してみると意外な結果
あれぇぇ!? [ノートオーラNISMO]と[シビックRS]を比較してみると意外な結果
ベストカーWeb
レゴ、F1全チームをテーマにした製品を2025年1月1日から販売開始。往年の名車ウイリアムズFW14Bなど“オトナ向け”製品も3月に発売
レゴ、F1全チームをテーマにした製品を2025年1月1日から販売開始。往年の名車ウイリアムズFW14Bなど“オトナ向け”製品も3月に発売
motorsport.com 日本版
ホンダが「凄い施設」を初公開! 夢の「全固体電池」実現に一歩前進!? パイロットラインを栃木で披露
ホンダが「凄い施設」を初公開! 夢の「全固体電池」実現に一歩前進!? パイロットラインを栃木で披露
くるまのニュース
ラリージャパン2024がついに走行開始。シェイクダウン1走目の最速はヌービル/WRC日本
ラリージャパン2024がついに走行開始。シェイクダウン1走目の最速はヌービル/WRC日本
AUTOSPORT web
ダイハツが新型「軽SUV」発表! 打倒「ジムニー!?」な“5ドア”モデル登場! タフすぎる「ゴツ顔×カクカクボディ」採用した“新型タフト”138万円から発売!
ダイハツが新型「軽SUV」発表! 打倒「ジムニー!?」な“5ドア”モデル登場! タフすぎる「ゴツ顔×カクカクボディ」採用した“新型タフト”138万円から発売!
くるまのニュース
MotoGPマシンデビューの小椋藍選手 初走行の印象は……【MotoGPバルセロナ公式テスト】
MotoGPマシンデビューの小椋藍選手 初走行の印象は……【MotoGPバルセロナ公式テスト】
バイクのニュース
ゼンリン、パナソニックのカーナビ「Strada」向け最新地図データ発売へ…12月2日
ゼンリン、パナソニックのカーナビ「Strada」向け最新地図データ発売へ…12月2日
レスポンス
下取り額爆上がり? アルヴェルのドアの速さまで変えられるトヨタの[KINTO FACTORY(キントファクトリー)]がすごい!
下取り額爆上がり? アルヴェルのドアの速さまで変えられるトヨタの[KINTO FACTORY(キントファクトリー)]がすごい!
ベストカーWeb
チャンピオン争いで明暗を分けた要因と変化がもたらす2025シーズンへの期待/MotoGPの御意見番に聞くソリダリティGP
チャンピオン争いで明暗を分けた要因と変化がもたらす2025シーズンへの期待/MotoGPの御意見番に聞くソリダリティGP
AUTOSPORT web
メルセデスが好発進、ハミルトンがトップタイム。RB勢は下位に沈み角田裕毅19番手|ラスベガスGP FP1
メルセデスが好発進、ハミルトンがトップタイム。RB勢は下位に沈み角田裕毅19番手|ラスベガスGP FP1
motorsport.com 日本版
ヤマハとホンダがコラボ展示! バイクSFアニメ『Tokyo Override』劇中車の『YZF-R1』&『CB1300』が渋谷に登場
ヤマハとホンダがコラボ展示! バイクSFアニメ『Tokyo Override』劇中車の『YZF-R1』&『CB1300』が渋谷に登場
レスポンス

みんなのコメント

2件
  • blackbottle
    胸”を”打たれた、ね。自分が感動したんでしょ。
  • pep********
    充電している時間を優雅に過ごせるなら
    欲しいが115分も待てない。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2695.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1880.03258.0万円

中古車を検索
GTの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2695.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1880.03258.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村