2023年のF1もここまで5戦を終えた。全てのレースでレッドブルが優勝し、うち4回が1-2フィニッシュ……圧倒的な強さを誇っている。
レッドブル以外に表彰台を手にしたのは、アストンマーチンが4回と、メルセデスとフェラーリがそれぞれ1回ずつである。
【ギャラリー】恐ろしいほど強かった……日本のファンが選ぶ「最強F1マシン」
昨年はシーズン前半、レッドブルと互角の戦いを繰り広げていたフェラーリ。今季も確かに予選のパフォーマンスは優れ、アゼルバイジャンGPではポールポジションを獲得するなどしたものの、決勝のレースペースでは大いに苦労。コンストラクターズランキングでは4番手に沈んでいる。
現在のフェラーリのドライバーラインアップは、フェラーリ育成出身のシャルル・ルクレールと、レッドブル系列出身のカルロス・サインツJr.というふたりのコンビ。彼らのキャラクターは、大きく異なる。
ルクレールは、抜群の速さを持っているが、ムラがある。限界ギリギリで走るが故に、素晴らしい成績を残したのと同じくらい挫折も味わっている。一方でサインツJr.は、ペースの面ではチームメイトの後塵を拝するものの、実に安定した走りを見せる。
フェラーリのドライバーコーチであるジョック・クレアは、ルクレールについて次のように語る。
「ある面では、彼が自分よりも速いマシンと対峙した時の、彼の精神的な部分を反映しているのかもしれない。それはある意味、『自分で変化を起こさなければいけない』というようなモノだろうが、最終的には物理学がそれを解決することになる」
「我々は彼に、『落ち着けよ、シャルル』と言うつもりはない。なぜなら彼の予選での速さは、1年を通じて傑出していた。それにより、多くのレースで非常に有利な立場に立つことができた」
「今週末(マイアミGP)は、マシンに本当に苦労したわけではない。だから彼は、今回もポールポジションを獲得するチャンスだと思い、そして自分ができるよりも速く走ってしまったのだと思う」
この状況は、今から30年前のことを彷彿とさせる。
■アレジとベルガーのコンビは、ルクレールとサインツJr.のコンビに似ている?
1990年、フェラーリはアラン・プロストとナイジェル・マンセルという、超ビッグネームをふたり揃えていた。マシンにも戦闘力があり、アイルトン・セナ擁するマクラーレン・ホンダと、タイトル争いを繰り広げた。
しかしタイトルは獲得できず、チームはテコ入れを行なうことになるのだが、それは裏目に出ることになり、1992年には表彰台獲得わずか2回という氷河期を迎えることになってしまった。
そこでチームに招かれたのが、プジョーの耐久チームを率いるなど、数々の成功を収めたジャン・トッドだった。
トッドがフェラーリに加わった時、ドライバーラインアップは既に整っていた。若くて速いジャン・アレジと、ベテランのゲルハルト・ベルガーである。
当時のアレジは、信じられないような速さを発揮することも多かったが、逆にムラもあり、クラッシュすることも少なくなかった。一方でベルガーは、速さではアレジには及ばずとも、高い安定感を発揮した。
このふたりのコンビは、1993年から1995年までの3年間続いたが、それはまさに今のルクレールとサインツJr.を思わせるコンビだった。
ルクレールとアレジのスタイルが似ていると言うと、少し乱暴なようにも聞こえる。しかし全盛期のアレジは、華やかでアグレッシブな走りが身上だった。その狂気とも言える走りには、多くの人が天性的な可能性を感じたものだ。
1995年にはフェラーリのマシンの競争力がはるかに高まり、何度も勝利に近づいた。しかし、なかなか結果には繋がらず……カナダで1勝を挙げたのみ。しかも彼の勝利は、後にも先にもこの1回のみだった。
ルクレールも優れたドライバーだが、あえて言えばマックス・フェルスタッペンやルイス・ハミルトンほど理論的なドライバーではない。適切な条件が整えば、マシンから脅威的なパフォーマンスを引き出すことができる。
マイアミでは、2年連続でポールポジションを獲得できるチャンスがあると見極めたのだろう。しかし限界を越え、ウォールにクラッシュしてしまった。
アレジとルクレールは、チャンスが見えた時にオーバードライブしてしまう……そんな傾向を共有しているように見える。なおパフォーマンスが低下した際、ルクレールは”怒り”を内に秘める傾向にあるが、アレジはなんとかそれを補おうと、より爆発的な反応を示していた……そこはふたりの大きな違いと言えるかもしれない。
ベルガーとサインツJr.は、タイプこそ似ているように見えるが、”狂気の天才”と組むまでに辿ってきた道のりは大きく違う。
アレジと組んだ時のベルガーは、フェラーリでナイジェル・マンセル、マクラーレンでアイルトン・セナと、チャンピオン級のドライバーたちと組み、そのサポートをするセカンドドライバーとしての役割を果たしてきた。しかしそのセカンドとしての役割を終え、フェラーリに復帰した時にはアレジと同等の扱いでシートを手にしたのだ。
サインツJr.は、それまでにチャンピオン経験者と組んだ経歴はないが、セバスチャン・ベッテルの後任としてフェラーリ入り。そしてナンバー1ドライバーとナンバー2ドライバーが明確に決まっていない状態……つまりサインツJr.は、ルクレールを同じ扱いでフェラーリのマシンを走らせているのだ。
■ルクレールが安定するためには、良いマシンが必要?
ドライビングスタイルについては、サインツJr.とベルガーには類似点がある。彼らはいずれも、チームメイトと比べて全力でアタックすることは少ない。その反面、ふたりはマシンの性能を最大限に引き出すため、知的なアプローチを追求する。ベルガーの奔放な性格からすると、まことに不思議な話ではあるが、そういう側面もあった。
好みとするマシンもふたりは似ているようだが、チームメイトとの”好みの差”は、ベルガーの方が大きかった。アレジはフロントがシャープに動くマシンを好んだが、セッティングの細かい部分はチームメイトに頼る節があった。ルクレールは、アレジよりはチームと密に仕事をし、セッティングを出していくが、それでもサインツJr.よりは圧倒的に感覚に頼る部分が多かった。
そして当時と今の大きな類似点がある。それは、フェラーリのマシンは、主要ライバルと戦えるほど十分なパフォーマンスを持っていないということだ。
1993年や1994年のフェラーリは、ウイリアムズやマクラーレン、そしてベネトンに太刀打ちできるほどのパフォーマンスを有していなかった。今は、レッドブルに対して、大きく劣っている。
ペースが上がれば、おそらくルクレールは高い能力を発揮するだろう。そのためには、マシンが良くならなければいけない。そのためのテコ入れが実施されたタイミングである……ということも、今と30年前の共通点と言える。
当時は前述の通り、ジャン・トッドがチーム代表に就任し、その後チームにミハエル・シューマッハーらが加入したこともあって上昇気流に乗っていった。そして2023年は、同じく不振からの脱却を図るべく、新たなチーム代表としてフレデリック・バスールにチームに加入したのだ。
トッドは、アレジとベルガーのコンビを諦め、シューマッハーと共にチャンピオンを目指すという選択を下した。一方でバスールは、ルクレールとサインツJr.では役不足だと判断した場合に、どんな選択を行なうことになるのだろうか?
かつてのシューマッハーの役割を担えるのは、現段階ではおそらくマックス・フェルスタッペンだけということになるだろう。しかしフェルスタッペンは、レッドブルが手塩にかけて育ててきた才能。レッドブルとしては、そう簡単に手放すことはないだろう。
そういう意味でフェラーリは、独自にチャンピオンを育て上げる必要があるだろう。その筆頭候補は、当然ルクレールである。
ただルクレールは現在、難しいクルマにフラストレーションを覚え、自身の才能を失いつつあるように見える。いくら無理をして、マシンをねじ伏せようとしても、それを補うことはできない。
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みんなのコメント
上が阿呆やから現場が混乱するのソックリやんけ!