フォルクスワーゲングループジャパン(VGJ)は2月14日、Dセグメントセダン「パサート」およびワゴン「パサートヴァリアント」に、2.0Lディーゼルエンジンを搭載した「TDI」を追加し同日より販売を開始。同日に虎ノ門ヒルズ(東京都港区)で発売記念式およびトークセッションを開いた。
フォルクスワーゲンのディーゼル車は以前、1977年から98年まで日本で販売されていたが、今回のパサートTDI日本導入によって、20年ぶりに日本でフォルクスワーゲンのディーゼル車が復活することになる。
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また、パサートTDIの日本導入は2015年の東京モーターショーで発表される予定だったが、その直前にEA189型エンジンの排ガス不正問題が発覚したため急遽中止。その間に競合他社は続々とディーゼル車の日本導入を拡大し、日本における外国メーカー乗用車登録台数の2割超をディーゼルで占めるほど販売台数増加に結びつけていたため、VGJにとってはまさに2年越しの念願といえるだろう。
搭載されるEA288型・2.0ℓ直4コモンレールディーゼルターボエンジンは、可変式ガイドベーンの採用などにより190ps・400Nmもの高出力・大トルクを備えながら、排ガス後処理システムに低圧EGR、酸化触媒、SCR、DPFを標準装備し、ポスト新長期規制をクリアした。
6速DSG(デュアルクラッチトランスミッション)と組み合わせることで、燃費もJC08モードで20.6km/Lを達成。59Lの燃料タンクによって、単純計算で1200km以上の航続距離を備えていることになる。
ボディタイプはセダンとワゴン「ヴァリアント」の双方が用意され、いずれにも中間グレードの「エレガンスライン」と上級グレード「ハイライン」が設定される。価格は下記の通り。
パサートTDIエレガンスライン…4,229,000円
パサートTDIハイライン…4,899,000円
パサートヴァリアントTDIエレガンスライン…4,429,000円
パサートTDIハイライン…5,099,000円
発売記念式にはこれまでにパサートを2台乗り継ぎ、すでにパサートヴァリアントTDIへの代替を決めた、東京都中野区在住の島津豊さん夫婦を招待。控えめなスタイルとロングツーリング性能の高さ、ベニヤ板も運べる積載性といったパサート本来の万能性に加え、TDIではさらに航続距離が伸び維持費も安くなることが期待できる、といった購買動機を話してくれた。
その後開かれたトークセッションでは、国際モータージャーナリストの清水和夫さんと、フォルクスワーゲンAGのDr.エッケハルト・ポット 先進ディーゼルエンジン開発部長が基調講演。
清水さんは、CO2による地球温暖化を含めた公害問題と、ディーゼルエンジンを取り巻く規制、そして技術発展の歴史と現状を振り返りながら、「1892年にディーゼルエンジンを発明したルドルフ・ディーゼルは、ピーナッツ油で動くようにと考えて自己着火エンジンを開発したことを忘れてはならない」と述べたほか、GMがタイタンのスーパーコンピューターを用いてディーゼルエンジンの燃焼モデリングを強化したことなどに触れ、ディーゼルエンジンが持つ使用燃料を含めた汎用性と技術ポテンシャルの高さを強調した。
ポット部長は「ディーゼルエンジンのパワーはガソリンエンジンと同等だが、トルクはディーゼルの方が高くファントゥドライブ。しかも同じパワーならディーゼルの方が、特に中距離で20%燃費が良い。ドイツではパサート2Lエンジン車におけるTDIのシェアは80%超にのぼっている」と長所を挙げたうえで、フォルクスワーゲンにおけるディーゼルエンジンの進化と基本構造を解説した。
今後は、酸化触媒をNOx吸蔵触媒に置き換えSCRと組み合わせることで冷間時に効果を発揮しにくいSCRの弱点を補うほか、AdBlue噴射モジュールを排気マニホールドの後にも備える床下SCR触媒(ツイン噴射)を用いることで、NOx排出量を最大40%削減。
さらに、フォルクスワーゲンにおけるバッテリーEV(BEV)の販売シェアを現在の2025年までに25%までに高めながら、内燃機関を搭載する自動車(ICE)においては再生可能燃料CO2ニュートラルな燃料の使用量を拡大していくという今後の展望を明らかにしている。
最後に、モータージャーナリストの石井昌道さんをモデレーターとしたパネルディスカッションを実施。「月間走行距離が50kmに満たない自分の妻の場合はEVの方が効率が良い」(清水さん)、「使い方に合わせてパワートレインを選ぶべき。フィルムからデジタルになったカメラのようには、自動車はICEからBEVへ移行しない」(石井さん)、「BEVは現状ではバッテリーの技術コストが高く、エネルギー密度も低い。EVとICEの両方がなければCO2削減は成立しない」(ポット部長)、「他の分野がどんどん電気でなければダメになっている中、自動車は電気でなくとも動く。しかもディーゼルエンジンは“豚の胃袋”、どんな燃料でも動く。ディーゼル燃料は様々な製造プロセスを取れるので、ディーゼルの方がその受け皿としては良い」(清水さん)といった意見が出され、電動化と内燃機関、そして燃料の進化・多様化は今後も共存しながら進んでいくことを窺わせた。
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