2024年F1第16戦イタリアGPで、フェラーリに敗れたマクラーレン。しかし、今のマクラーレンMCL38は、ライバルを上回る強さを持っている。マクラーレンとMCL38の強みについて、F1i.comの技術分野担当ニコラス・カルペンティエルが分析する。
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ノリスのスタート失敗の記録とチームの見解。ポールからは必ず後退、1周目に稼いだポジションはゼロ
イタリアGPでの1-2フィニッシュはほぼ確実と思われたマクラーレンが、まさかの敗戦を喫した。とはいえMCL38は現在、最強のマシンであることは、もはや疑いのない事実である。
■2023年型より大幅に進化したMCL38
MCL38の強みのひとつは、これといった目立つ弱点がなく、あらゆる特性のコースで速く走れることだ。下の表に見られるように、イタリアGPでのマクラーレンは、去年型のMCL60よりも大幅に速かった。
「去年と比較すると、ストレートで約20km/h速くなっている」とランド・ノリスは予選後に明かした。
「ものすごい進化だよ。去年のマシンは、とにかく高速区間が遅かった。でも今年はそうじゃない」
■革命ではなく、小さな改善の積み重ねで進歩を果たす
ノリスは去年、当時の最強マシン、レッドブルのRB19について、そもそも素性に優れていたのに加え、エンジニアたちが細部に集中して、マイナーな欠陥を解決して優位性を保ってきた最強マシンだった、と説明した。一方、今季のマクラーレンMCL38は、動作ウインドウが非常に広い。その点では、RB19と同じ位置づけができるかもしれない。
「僕たちは小さな一歩にこだわっている」とノリスは言う。
「たとえばザントフォールトに向けてウイングを投入し、モンツァでは別の仕様のウイングを使った。でもこれらのウイングのおかげで革命的に速くなったわけじゃない。走らせた印象も、それなりだった。でも少しとはいえ、戦闘力は確実に向上している。その積み重ねが、最終的には大きな違いを生み出しているんだろうね」
「たとえばいくつかのコーナーでオーバーステアが制限できると、タイヤの温度が低くなり、タイヤの機能が向上する。その結果、0.05秒、場合によっては0.1秒のラップタイム向上も期待できるんだ」
■強みは「コンディションが変化しても安定していること」
ノリスとオスカー・ピアストリが自信を持ってマシンを操っているのと対照的に、あれほどマシンコントロールに長けたマックス・フェルスタッペンでも、今季のRB20では自信をもってステアリングを握ることができないと感じている。
「モンツァの予選では、上位4チームのドライバー全員にポールポジションを獲得できる可能性があった」とマクラーレンのアンドレア・ステラ代表は振り返った。それでもマクラーレンのドライバーがフロントロウを独占できたのは、「路面コンディションの変化にもかかわらず、彼らは変わらず自信を持って運転できていたからだ」と彼は分析する。
ノリスのポールポジションタイムは1分19秒327、対するフェルスタッペンは、Q2でのユーズドタイヤでは1分19秒662のタイムを出していたものの、Q3では新品タイヤで1分20秒022にとどまった。
「金曜日から土曜日にかけて、路面は大きく変化した」とステラは言う。
「主にラバーが付着したことによる変化だったが、MCL38のマシン挙動は変わらず安定していた。フェルスタッペンは(Q3では新品タイヤで1分20秒台だったが)、Q2では中古タイヤで1分19秒6を記録していた。ルイス・ハミルトンと同様に、フェルスタッペンも挙動変化に苦しんだようだね」
ではMCL38は完璧なマシンと言っていいだろうか? 確かにモンツァでは、ライバルチームのマシンよりもリヤタイヤを長く持たせることができた。一方でフロントタイヤの摩耗は、やや大きい傾向がある。
とはいえこのささやかな弱点も、繰り返されるアップデートによって着実に改善されつつある。マクラーレンMCL38は、レッドブルやフェラーリ、そしてメルセデスと違って、アップデートを外さずに来ている唯一のF1マシンなのである。
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