新車試乗レポート [2022.10.03 UP]
【メルセデス・EQ EQB 350 4MATIC】電気自動車の実力を実車でテスト!
文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス
【メルセデス・EQ EQB 250】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】
欧州や中国では、クルマを取り巻く環境や政府の補助金政策なども追い風となり、EV(電気自動車)のセールスが急進。対する日本も、普及はまだまだこれからという状況ながら、補助金の充実や新しいEVの登場&上陸など、EV関連のニュースが次々とメディアをにぎわせている。そうした状況もあり、「そろそろかな」とEVが気になり始めている人も案外多いのでは?
とはいえエンジン車とは異なり、EVの所有はハードルが高いのも事実。航続距離や充電効率、使い勝手などは車種によって大きく異なるため、どんなモデルが自分にとってベターな選択なのか、見分けるのがまだまだ難しい。
本連載は、EVや自動運転車といったクルマの先進技術に造詣が深い自動車ジャーナリスト・石井昌道氏の監修・解説の下、各社の注目モデルを毎回、同様のルートでテスト。実際の使用状況を想定した走行パターンでチェックすることで各モデルの得手不得手を検証し、皆さんの“EV選びの悩み”を解決することを目的とする。
今回は、メルセデス・ベンツの電気自動車「EQB」シリーズの中から「EQB 350 4マチック」にフォーカスする。2WD仕様の「EQB 250」に対して4WDレイアウトとなるこのモデルは、果たしてどれほどの性能向上を果たしているのだろうか?
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メルセデス・EQ EQB 350 4マチックのプロフィール
メルセデス・EQ EQB 350 4マチック
メルセデス・ベンツが展開するEVのラインナップ、メルセデスEQシリーズの第3弾となったのが、コンパクトSUVの「GLB」をベースとする「EQB」だ。
そんなEQBから今回取り上げるのは、4WD仕様の「EQB 350 4マチック」。EQBはほかに、2WD仕様の「EQB 250」もラインナップする。
EQB 350 4マチックのエクステリアは、メルセデス・EQシリーズの“プログレッシブラグジュアリー”なるデザイン哲学の下、フロントのブラックパネルグリルや、水平に走るリアのLEDライトなどを採用。EQB250とも共有でグレード間の違いはない。
EQB 350 4マチックのサイズは、全長4685mm、全幅1835mm、全高1705mm。日本の街中でも扱いやすい大きさのボディには、2830mmという長いホイールベースの恩恵により得られた3列シートを配したキャビンを内包する。サードシートは安全性の観点から対応身長が165cmとなるが、コンパクトミニバンの代用としても十分使える。ちなみにラゲッジスペースは、サードシート格納時で465L、セカンドシートを倒した場合には1620Lまで拡大できるなど、4WD化によるネガもない。
そんなEQB 350 4マチックは、容量66.5kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載。キャビンのスペースが犠牲にならないよう、フロア部に上手くレイアウトしている。駆動方式は4WDで、モーターはフロントに“EM0021”型と呼ばれる非同期モーターを、リアに“EM0022”型の永久磁石同期モーターを搭載する。
それぞれ最高出力/最大トルクは、フロントが194ps/37.7kgf、リアが98ps/15.3kgf、トータルでは最高出力292ps、最大トルク53.0kgfを発生する。車重は2160kgとEQB 250比で60kg重くなっているが、0-100km/h加速は同秒速い6.2秒をマークする。ちなみに1充電当たりの航続距離は468kmだ。
優れたEV性能と実用性に富むユーティリティを兼備したEQBは、エンジン車からの乗り換え客を多く獲得しそうな出来栄えだ。インポーターであるメルセデス・ベンツ日本は、2022年9月29日にミッドサイズセダンの「EQE」、ラージセダンの「EQS」を発表するなど、EVの日本市場への展開を積極的に推進中。さらに、メルセデスブランドとしては世界で初めてEV専用のショールーム「メルセデスEQ横浜」を展開予定と、攻勢をかけ始めた。そんな日本市場におけるメルセデス・ベンツの屋台骨を支えるモデルとなるのは、このEQBとなりそうである。
■グレード構成&価格
・「EQB350 4マチック」(870万円)
・「EQB250」(788万円)
■電費データ
<EQB350 4マチック>
◎交流電力量消費率
・WLTCモード:163Wh/km
>>>市街地モード:156Wh/km
>>>郊外モード:155Wh/km
>>>高速道路モード:172Wh/km
◎一充電走行距離
・WLTCモード:468km
<EQB250>
◎交流電力量消費率
・WLTCモード:147Wh/km
>>>市街地モード:136Wh/km
>>>郊外モード:140Wh/km
>>>高速道路モード:158Wh/km
◎一充電走行距離
・WLTCモード:520km
メルセデス・EQ EQB 350 4マチック
【高速道路】状況に応じて駆動力を切り替え電費悪化を抑える
今回はEQB 250とEQB 350を同時にテストした。EQB 250はFWDで、EQA 250よりも高効率なモーターを搭載。EQB 350はフロントにEQA 250と同じ非同期の誘導モーターを搭載し(出力はわずかに違う)、リアに高効率なPMモーターを搭載する4マチック(4WD)。最高出力/最大トルクはフロントモーターが143kW/370Nm、リアモーターが72kW/150Nmでシステム総合では215kW/520Nmとなる。EQB 250の140kW/385Nmに比べるとパフォーマンスは高く、0−100km/h加速はEQB 250が8.9秒のところ6.2秒まで短縮される。
それだけ差があれば電費はさぞかし悪化するだろうと思われがちだが、高速電費は制限速度100km/h区間のその1が6.3km/kWhその4が6.1km/kWh、70km/h区間のその2が7.0km/kWh、その3が5.8km/kWhだった。ちなみにEQB250はその1が6.3km/kWh、その4が6.6km/kWh、その2が7km/kWh、その3が6.3km/kWh。
比べると往路のその1とその2はまったく同じ。その3とその4は少し悪化しているものの、わずかな差に収まっている。4マチックだが、負荷が小さなときはRWDで走行し、アクセルを踏み込んでいくとフロントに駆動配分していくため、高速巡航でもほとんどがRWD。意外とロスは少ないのだ。
往路の高速テストコース
往路の高速テストコース。東名高速道路 東京ICからスタート。海老名SAまでを「高速その1」、海老名SAから厚木ICから小田原厚木道路を通り小田原西ICまでを「高速その2」とした。復路の高速テストコースは小田原厚木道路の小田原西ICから東名厚木ICを経由し横浜青葉ICまで走行。途中海老名SAで充電を行った
【ワインディング】車両重量の重さはデータに表れなかった
約13kmの距離で高低差が約1kmもあるターンパイクの登り区間での電費は1.7km/kWhとEQB 250とまったく同一だった。
車両重量は60kgほど重くなるが、今回のテストでは影響が見られなかった。下り区間での回生は3.11kWhで、EQB 250の3.87kWhを少し下回った。一般的には4WDのほうが回生を多く取れるものだが、このテストでは50km/hほどでなるべく一定速にして大人しく下ってくるので、4WDの旨みはあまりないのかもしれない。もっと強い減速Gを頻繁に入れるとまた結果はかわってくるだろう。
回生も負荷が小さいため、おもにリアモーターで行っていたが、PMモーターなので効率はいいはず。ここから推測するに、電費をあげる運転をしたいなら、回生は緩く長くにするのが望ましいだろう。
自動車専用道路である箱根ターンパイク(アネスト岩田ターンパイク)を小田原本線料金所から大観山展望台まで往復した
【一般道】新型モーターでハイパフォーマンスとエコを両立
一般道での電費は4km/kWhでEQB 250の4.8km/kWhを18%ほど下回った。
WLTC電費はEQB 250が約6.8km/kWhなのに対して約6.13km/kWhと差は10%ほど。巡航が多い高速道路よりも、負荷変動の多い一般道のほうが差がつくことが多いはずだから、まあ順当なところだろう。
エネルギーモニターを見ていると一般道でも基本はRWDだが、少し急いだ加速や登り坂などで適宜フロントに駆動配分しているのがわかる。電費全体としてはEQB 250にはかなわないが、EQA 250よりは良好。パフォーマンスは圧倒的に高いが、電費効率は決して悪くはないのだ。
東名横浜青葉ICから環八の丸子橋まで約22kmの距離を走行した
【充電】90kWの急速充電器を生かせる受け入れ能力
海老名SAでの急速充電テスト ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません
スタート時のバッテリー残量は89%、走行可能距離は342kmだったが、155km走行して復路・海老名サービスエリアに到着したときには44%、168kmになっていた。
こちらは高出力な90kWの急速充電器を30分使用して、35.1kWhを充電。93%、352kmまで回復した。平均出力は70kWほど。もう少し入ってくれてもいいかなという気はする。ちなみに受け入れ能力は100kWとなっている。それでも40kWを使ったEQB250は18kWhしか充電されなかったのに比べるとほぼ倍で、高速巡航ならば210kmほどは走れるのだから心強い。せめて主要なサービスエリアでは90kWが配備されるようになれば、いまのBEVの性能でもだいぶ実用的に感じられるはずだ。
後席の足元についてはEQB 250同様バッテリー搭載の関係で床が高く、頭上スペースが狭く感じられた
メルセデス・EQ EQB 350 4マチックはどんなEVだった?
テストを監修した自動車ジャーナリストの石井昌道氏
EQB 350は速いだけではなく、強い加速時の後ろから押される感覚、コーナリング時のフロントタイヤの負担の少なさによるハンドリングの良さなどが光っていた。
モーターはトルクが強いためFWDでアクセルを踏み込んでしまうと、トルクステアが出がちでそれを抑えるために制御が効くので、物足りなく感じることがあるのだ。ドライビングを楽しむ派にとって、BEVはRWDか4WDであるのが好ましい。実用電費もEQB 250と大差はなし。価格差も82万円と小さなものなので、満足度は高いだろう。
EQB350 4マチック(AMGラインパッケージ装着車)
■全長×全幅×全高:4685×1835×1705mm
■ホイールベース:2830mm
■車両重量:2160kg
■バッテリー総電力量:66.5kWh
■フロントモーター最高出力:194ps(143kW)/5800~7600rpm
■フロントモーター最大トルク:37.7kgf(370Nm)/0~3600rpm
■リアモーター最高出力:98ps(72kW)/4500~1万4100rpm
■リアモーター最大トルク:15.3kgf(150Nm)/0~4500rpm
■システム最高出力:292ps(215kW)
■システム最大トルク:53.0kgf(520Nm)
■サスペンション前/後:ストラット/マルチリンク
■ブレーキ前/後:Vディスク/ディスク
■タイヤ前/後:235/45R20/235/45R20
取材車オプション
■AMGラインパッケージ、メタリックペイント
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みんなのコメント
これは売れそうな予感です。、