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【すべてがハイブリッドに】ボルボXC90へ試乗 2.0Lガソリン+マイルドHV

掲載 更新
【すべてがハイブリッドに】ボルボXC90へ試乗 2.0Lガソリン+マイルドHV

電動化技術の採用を加速するボルボ

text:Tom Morgan(トム・モーガン)

【画像】ボルボ製SUV XC90、60、40 全107枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


ボルボによる電動化技術の採用は、他ブランドを先行している。もはや、ハイブリッドなしのXC90をディーラーから新車で購入することは、不可能となった。

7シーターを備えるボルボのフラグシップSUV、XC90。純EV版の登場はまだ先かもしれないが、プラグイン・ハイブリッドはT8ツインエンジンとして以前から提供されている。今回、エントリーグレードのXC90にも、ハイブリッドが採用されることになった。

電圧48Vによるスターター・ジェネレーターと小さなバッテリーを、大きなボディに搭載。2.0Lの4気筒エンジンを加速時にはアシストし、減速時にはエネルギーの回収を行う。

ボルボによれば、従来の内燃エンジンのみのXC90より、二酸化炭素の排出量は削減しているという。実世界での燃費も向上している。

今回試乗するのは、XC90 B5の中でもガソリンを燃料とする方。4気筒ガソリン・ターボエンジンを搭載し、四輪駆動と8速ATの組み合わせのみが用意される。同じB5には、ディーゼルターボ版のB5もラインナップされる。こちらも2.0Lの4気筒で、車両価格はやや高い。

2020年モデルとして穏やかなフェイスリフトを受けているが、ガソリンエンジン版とディーゼルエンジン版と、見た目でわかる違いはない。パフォーマンスの面でも、燃料の違い以上の明確な差はないようだ。

マイルド・ハイブリッドでも免罪符は得られず

ボルボXC90 B5が0-100km/h加速に要する時間は、ガソリンエンジン版の方が0.1秒だけ遅い。最高速度もディーゼル版よりわずかに遅い、215km/hとなる。

運転してみると、マイルド・ハイブリッドが動作する実感を感じる手がかりは、ほとんどない。エネルギーの回生中に表示される、メーターパネルのアイコンが、唯一のヒント。

しかも減速時のエネルギー回生はかなり控えめ。純EVに見られるような、しっかりした減速感もなかった。

ボディが大きく、車重がかさむSUVのXC90。マイルド・ハイブリッドを採用したとしても、免罪符が得られたわけではない。

直線加速のレスポンスは充分に活発だが、一回り小さいXC60と比べれば、明らかにガソリンエンジンは頑張っている様子。大きな負荷が掛かると、エンジンからはしっかりノイズが響いてくる。そのぶん、燃費も印象的な数字とはいえない。

今回の試乗では、高速道路を穏やかにクルージングしても、10.5km/Lを超える場面はほぼなかった。ディーゼルエンジン版のB5なら、13.5km/L前後の燃費が得られている。残念ながら、どちらがコストパフォーマンスで優れているかは、明らかといえるだろう。

それ以外のガソリン版B5は、プレミアムなXC90の雰囲気に良くマッチしている。エンジンはとてもスムーズに始動し、低速域でも存在が気になることはない。信号待ちしている際の、アイドリングの停止と再始動も、とても繊細な仕草で行われる。

優しいスカンジナビアン・デザインの車内

試乗したモーメンタム・グレードの場合、エアサスペンションは選べない。通常のダンパーとコイルの組み合わせとなるが、ほとんどの路面で乗り心地は上質だった。車内へ明確に振動が伝わるのは、特に舗装の荒れた郊外の一般道程度だ。

XC90は、ハイペースでコーナーを抜けるタイプのクルマではない。実際に試してみると、ステアリングの感触にやや乏しく、頻繁ではないが、トランスミッションの反応も鈍い印象があった。

ちなみにモーメンタム・グレードには、シフトパドルが付かない。センターコンソールのシフトレバーでマニュアル操作も可能ではあるが、強く動機づけられる機会は少ないだろう。

そのかわり、優しさのあるスカンジナビアン・デザインを楽しむ方が良い。車内は明るく、エントリーグレードであっても装備は充実している。

メーターパネルはモニター式となり、ダッシュボードの中央には、インフォテインメントシステム用の9.0インチ縦型タッチモニターが配される。だが筆者は、モニターに多くの機能を集約しすぎていると感じた。

ライバルのシステムと比べれば、エアコンの操作などは上手に統合されている。しかし、温度調整だけでも、進行方向から視線をそらす必要は残る。

ボルボはアダプティブ・クルーズコントロールを、パイロット・アシストと呼ぶ。半自律運転と呼ぶには少し大げさに思えるが、車線維持の制御は、ライバルのシステムと比較して明らかに優れている。

マイルドHVを選ぶならディーゼル版

ボルボXC90に限らず、これまで大柄なSUVボディと控えめなガソリンエンジンの組み合わせが、素晴らしいコンビネーションとなることはなかった。そこへ穏やかなマイルド・ハイブリッドが追加されても、効果的と呼べるほどの結果は得られていない。

装備も充実し、快適なファミリー・トランスポーターというボルボXC90の特徴は変わらない。しかし、B5のガソリンエンジン版の場合、長期的な経済面での恩恵は得にくいだろう。

同じXC90 B5でもディーゼルエンジン版なら、車両価格はガソリン版と同等で、燃費は向上し、CO2の排出量も削減できる。プラグイン・ハイブリッド版のボルボXC90を選べないのなら、同じマイルド・ハイブリッドでも、ディーゼル版を選んでおきたいところだ。

ボルボXC90 B5 モーメンタム・プロ(英国仕様)のスペック

価格:5万5560ポンド(738万円)
全長:4953mm
全幅:1923mm
全高:1776mm
最高速度:215km/h
0-100km/h加速:7.7秒
燃費:11.8km/L
CO2排出量:191g/km
乾燥重量:2049kg
パワートレイン:直列4気筒1969ccターボチャージャー+ISG
使用燃料:ガソリン
最高出力:251ps/5400-5700rpm
最大トルク:35.6kg-m/1800-4800rpm
ギアボックス:8速オートマティック

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