じつに惜しい、というよりも、むしろもったいないレースだった。
全28周で争われたMotoGPドイツGPのMoto2クラス決勝レースで、27周目まで小椋藍(IDEMITSU honda Team Asia)は5番手を走行していた。スタート位置は、3列目真ん中の8番グリッド。レースで優勝したレミー・ガードナー(Red Bull KTM Ajo)と、彼のチームメイトでポールポジションからスタートしたラウル・フェルナンデスの2名が最初から抜け出した格好になった。一方、小椋はスタート時の位置を維持して、順調に周回を重ねた。
■〈アジアから“世界”へ〉小椋藍とIDEMITSU Honda Team Asiaの挑戦:成長続く小椋、転倒リタイアでも「“今季ベスト”のレースだった」と手応え
序盤周回でフェルナンデスが転倒してガードナーの独走状態になり、そのふたりから少し離れた単独走行の選手が2番手に浮上。さらにその後ろの集団後方にいた小椋も、ひとつ順位が繰り上がって7番手になった。
ドイツGPの舞台ザクセンリンクは、全長が3.671キロメートルとシーズン中でも最も短いうえに高低差が激しく、さらに左コーナー7に対して右コーナーが3、と極端なレイアウト構成のためにオーバーテイクできるポイントが限られている。小椋はタイミングを見計らいながら確実に前の選手を処理し、レース中盤の17周目に6番手へ、そして最終盤が近づく24周目に5番手へ浮上した。
さらにもうひとり抜けば、シーズン自己ベストの4位でゴールすることも見えてくる。しかし、前の選手との0.6~0.7秒という差はなかなか詰まらない。手が届くようで届かない、じつに微妙な間合いだ。前がミスをしそうな気配もなく、最終ラップになっても依然としてこの距離は縮まらなかった。小椋は5番手をキープしてチェッカーフラッグを受けるべく、無理のない走りでゴールを目指していた。小さいコーナーが連続しながら下ってゆく前半セクションを経て、左、左、左と続く。と、その左旋回の8コーナーで転倒した。
小椋自身、意外な転倒だった、と振り返る。
「後ろから追いあげられて『ヤバいヤバい』と焦って転んだわけでもなく、逆に自分ではリスクのないように、と走りを変えたら、それが結果的によくなくて、予想もしない転倒になってしまいました」
釈然としない転倒で、しかも勝負に出たタイミングでもなかっただけに、納得できない思いはレース後も強く残ったようだ。
「そうですね……。前回みたいに、リスクを負って勝負に出てミスっちゃって転倒、というわけでもないので、まさか、というか……。よくわからない、なんていっちゃダメなんですけど、よくわからない転倒でした」
レース全体の流れとしては、上位陣と互角のラップタイムを刻めるまでに持って行けなかったことが大きな課題だった。
「今回はアヨの2台(R・ガードナー/R・フェルナンデス)が特に抜け出していたので、あのふたりに近ければすごく良かったと思いますけど、離れていたし、(3位のマルコ)ベッツェッキ選手にもついていけませんでした。最終的にベッツェッキ選手の前でレースを終えようと思うと、序盤のうちにフェルナンデス選手たちと走れていれば、まだ可能性もあったかもしれない。でも、日曜の決勝レースになって、いきなりできるようなものでもないじゃないですか。金曜の朝からすべて繋がっていることなので、それを実現するには、FP(フリープラクティス)1からトップに近いところで走れていないとムリですよね。日曜のレースでいきなりビッグステップを踏めるわけでもないので、(ウィークの)最初からがんばっていかないとダメだな、ということです」
前戦のカタルーニャGPを終えた際に、小椋は今回のザクセンリンク戦について、「あの小さいコースを大きなバイクで走ったらどんな感じなのか、ちょっと予想がつかない」と話していた。
実際に、Moto2初走行になった金曜午前のFP1では、トップと1.453秒差の20番手。午後のFP2でも21番手、と初日の走り出しは見る限りでは、やや厳しそうだったのは事実だ。しかし、翌日はラップタイムを詰めてゆき、土曜午前のFP3で8番手。グリッド順を競う午後の予選Q2でも8番手を記録した。セッションの進捗、という意味では、まずまずうまく積みあげてくることができたと言えそうだ。
「上げてこられるのはいいんですけど、そりゃFP1、2、3、予選と走ってくればタイムが良くなるのは当たり前なんで、もっと早いうちから上げられるようにして、高い位置でスタートできるようにしたいですね」
第9戦オランダGPは、第8戦から2週連続の開催となる。今回のドイツGPで味わった悔しさを新鮮な状態に保ったまま次のレースにぶつけることができる、という点では、好機と考えることもできるだろう。
「そうですね。結果を出してチェッカーを受けることも課題ですし、レース内容を上げていくことも重要だし。アッセンでは、それをできればいいんじゃないかと思います」
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