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「どのサーキットでも勝てるクルマに」ニッサンZ GT500、コンパクトになった空力面への期待と課題

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「どのサーキットでも勝てるクルマに」ニッサンZ GT500、コンパクトになった空力面への期待と課題

 これまでスーパーGTで14シーズンにわたって活躍したR35 GT-Rに代わって、12月5日に富士スピードウェイで初披露された2022年スーパーGT参戦参戦車両のニッサンZ GT500。本格的な走行と細かな開発はこれからで「来年4月の開幕戦に向け、開発をさらに加速してまいります(ニスモ片桐隆夫社長)」というが、お披露目された外観とR35ニッサンGT-RニスモGT500との比較からも、フロントボンネット、コクピット部のコンパクトさがうかがえた。

 富士スピードウェイでのメディア向けの発表会では、まだ市販車の『Z』の国内発売日が決まっていないことからか、またはスーパーGT2022年シーズンに向けてのライバルメーカーを意識してか、撮影は接写NG、ドライバーやチーム関係者への取材はNGという、いつものテスト以上に制限があるなかで行われた。

【フォトギャラリー】いよいよ見参。2022年からスーパーGT参戦のニッサンZ GT500

 それでも、オンラインでの発表後、富士スピードウェイで行われた合同取材では、日産自動車のアシュワニ・グプタCOO、そしてニスモの片桐隆夫CEOのコメントの端々から、今回のニッサンZ GT500に懸ける期待の高さ、そして開発の方向性がうかがうことができた。

「開発期間としては2年前、ニッサンの将来の商品計画にZが挙がったときからグプタCOOにレースカーの制作をお願いしていた」と会見で話したニスモ片桐CEO。

 オートスポーツwebがこれまでシーズン中から聞いていた情報によると、シェイクダウンは夏過ぎに国内のサーキットで行われ、その時点では白と黒にカモフラージュされた迷彩で走行を重ねていたという。

 オンラインの会見で「すでにシェイクダウンテストは終えていますが、本格的な走行はまだこれからです。ステアリングを握る楽しみはありますが、開発を担うという意味では責任感を感じていますし、ニッサンドライバーとしてテストや開発などに携わっていきたいと思っています」と話した松田次生。今回発表されたマットブラックの仕様は最近になってからとのことで、この富士での発表会ではドライバーたちも自らのスマホで記念撮影する姿が見られた。

 合同取材の場では今季のニッサンGT-RニスモGT500と何パーセントくらい違うのかという質問に「何パーセントかは、今の段階では勘弁していただきたい(苦笑)。形、ボディの形が違うので、GT-RとZ、それぞれの特徴に違うレーシングカーになると思います」と話すに留めたニスモ片桐CEO。

 現在のスーパーGTのGT500規定ではシャシーの主要諸元、ホイールベース、モノコックも含めてすべて共通となっており、GT500仕様のマシンの内部としては、パワートレインや構造物の配置、外観の自由開発エリアを除いては、ほぼ同じ仕様と言える。

 共通パーツが多い一方、クルマの基本的なパフォーマンスとして差が出るのは外観/エアロとエンジン性能となる。その点、これまであまりはっきりと明言はされていなかったが、14年前のデザインが元になっているR35 GT-Rは前面投影面積の点でGRスープラ、NSX-GTに比べてドラッグが大きく、その一方、ダウンフォースが大きい特性が見られていた。

 実際、サクセスウエイトや選択したタイヤのマッチングの影響があるとは言え、この2年間のなかでMOTUL AUTECH GT-Rが鈴鹿で3度の勝利を挙げ、今年の第5戦SUGOでカルソニック IMPUL GT-Rが勝利したように、中高速コーナーが多いサーキットでGT-Rが強さを見せたのはダウンフォースの大きさと無縁ではない。

「どのサーキットに行っても勝てるクルマにしたい」と、会見でニスモ片桐CEOが話した言葉は、まさに、ニッサンZ GT500のコンセプトのひとつに違いなく、そのための空力改善、具体的にはドラッグ低減はニッサンZを参戦車両に選択した理由のひとつであるとともに(公にはグローバルなブランドマーケティング戦略のためだが)、開発の重要ポイントであるに違いない。

 発表されたニッサンZ GT500はフロントノーズの長いZの特徴を活かしており、見た目にもフロントグリルのボンネット先端位置がGT-Rよりもかなり低い。正面から見ても両サイドのフロントフェンダー部の横幅が大きく見え、コクピット部、フロントウインドウが小さく見えることからも、L/D(エル・バイ・ディー/空気効率)はかなり高められているのではないだろうか。

 ちなみに、空力的にもうひとつ各メーカーで形状が異なるサイドシル部、ラテラルダクトは今回の発表会でのニッサンZはシンプルな形状となっていたが、このエリアはこれまで同様、今後のテストで序々に複雑な形状に変更されていく可能性もあるだろう。

 また、ニッサン陣営のGT500での今季の戦いを戦いを振り返ると空力とともに課題となっているのがエンジンパフォーマンスだ。第2戦富士の決勝でブローしてしまったり、第6戦オートポリスや第7戦もてぎで制御系や点火系にトラブルが出てしまったのも、裏を返せばエンジン性能をギリギリまで引きだそうと攻めた結果とも言える。

 ホンダがF1から、トヨタがWECやWRCという世界選手権のトップカテゴリーの知見を転用しているのに比較すれば、ニスモ単体での開発体制にはチーム関係者の苦労も察するところがある。その点、日産のグプタCOOが「フォーミュラEとスーパーGTはニッサンのモータースポーツ活動の2本の柱」と話すように、資金面や人材面、ノウハウ面でニスモをこれまで以上にバックアップする体制になれば、来季ニッサンZの参戦初年度チャンピオンがより現実味を帯びてくる。

 今回の富士では松田次生、ロニー・クインタレッリ、平手晃平の3名がステアリングを握っていたようで、3人が新型Z GT500の開発を担当している模様。気になる来季、2022年のドライバーラインアップについてはニスモ片桐CEOが「ドライバーやチームの体制につきましても、最適となる体制を構築しまして、後日発表させていただきます」と話すに留めた。また、GT300クラスをはじめ世界各地のGT3レースに参戦するニッサンGT-RニスモGT3についても「GT-RはGT-Rがある以上、レースは続けていく。GT3では現在も販売していて、今でもレースを戦ってもらっている。GT-Rがある以上は、部品供給など引き続き行っていきたい」と明言するとともに、新型Zのカスタマーレーシングカーの開発についても「お客様のニーズがあれば。可能性は否定しません」とポジティブなコメントを残した。

 こらからのニッサン/ニスモのモータースポーツ活動の鍵を握ることになるニッサンZ。まずは来季のスーパーGTでこれまでのGT-Rが得意としてたサーキットの強さをそのままに、苦労していたサーキットでの空力改善とエンジン面での課題をクリアしてニッサンとZが再び輝く姿を見せることができるだろうか。

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