6月4日、スーパーGTをプロモートするGTアソシエイションの坂東正明代表は、毎戦決勝日に行われるGTA定例記者会見のなかで、2023年から導入していたハルターマン・カーレス社製のカーボンニュートラルフューエル(CNF)について、GT300クラスでの使用を今シーズンは見送り、2024年に向け改良を加え再度導入を目指したいと語った。
スーパーGTでは、2022年末に2030年の二酸化炭素排出量50%削減を目指した『スーパーGTグリーンプロジェクト』を立ち上げ、そのなかの取り組みとして、2023年からドイツのハルターマン・カーレス社製のカーボンニュートラルフューエル『GTA R100』を全車に導入することになった。
スーパーGTが第3戦鈴鹿でのGT300クラスへのカーボンニュートラルフューエル導入の見送りを発表
ただ、2021年からベンチテスト等でテストを行ってきたなかで、GT500クラスでは参戦する3メーカーの対応もあり4月の第1戦岡山からの導入が実現したものの、世界各国のメーカーの車種、多様なエンジン形式があるGT300クラスでは、車種によって揮発性、オイル希釈、ブローバイなどの問題が発生しており、特にターボ車に多く課題が出ていた。
GT300車両への対応については、開幕前の岡山公式テストでは全車に使用されたものの、その際に課題が出たことから、富士公式テストではCNF使用が義務づけではなくなっていた。さらに第1戦岡山、第2戦岡山ではGT300でのCNF使用が見送られ、5月8日には鈴鹿でGTエントラント協会によるテストを実施し、さらに調整を行ったが、最終的に第3戦鈴鹿での使用も見送られた。
特に難しい課題だったのが、メーカーがバックアップするGT500車両に対し、GT300クラスでは基本的に各チームが車両を製作、もしくは購入するスタイルであるということだ。CNF導入によりもし仮にエンジントラブルが発生した場合には、チームにとっても金銭面も含めた負担になってしまう。
この件について坂東代表は、「2021年からずっとテストをやってきて、2022年末にCNF導入を発表したが、みんなでこの課題に対してやっていこうと、導入にあたって2022年にはベンチと実車でのテストを行った。納入のときなどトラブルもあったが、現行ではGT500に対しては3メーカーと協力して取り組み、使用時に聞かれた匂いや目の痛みなども改良している」と語った。
ただ、現状のGT300については揮発性や希釈の問題などを挙げ、「ヨーロッパのGT3メーカーにも燃料を送り、ベンチテストでは確認をとり大丈夫ではないかとされていたが、実車に入れたときに課題が出てきた。しかしそのなかでも、キャッチタンクを大きくしたりするなど前向きに進めてきた」という。
「しかし、どうしても450kmレースの場合はオイル交換が必要になったりと、カスタマーレーシングカーなので、実車に入れた段階ではこの燃料の使用に対し、GT3メーカーからもう少し改良できないかという声もあった。チームとしても前向きにやろうとしても『どうすれば良いのか』という声も出てしまっている」
これらの声を受け、坂東代表はこの定例記者会見のなかで、GT500クラスについては現行どおりCNFの使用を進めつつも、GT300クラスについては現段階では今シーズン中の導入を見送り、来季に向けてメーカー、GT3マニュファクチャラーなどと協力しながらさらなる改良を進め、2024年度の全車導入を目指したいとした。
坂東代表によれば、市販の無鉛ハイオクでも気温によって成分に変化があり、夏用、冬用と種類があるというが、このCNFについても「バラエティに富んだエンジンに対し、一定で使えるようにしたい」とシーズンを通じてクオリティを保てるようにしたいとしている。GT500で現行使用されているCNFに対し、GT300で成分が異なるものが使用される可能性も「全体で一緒がベストだが、そうでない場合もありうる」とした。
この『GTA R100』は世界に先駆けて使用している一歩進んだ環境への配慮を目指した合成燃料であり、日本国内では官公庁、さらに世界中のシリーズからも注目されている。
「ヨーロッパのレースで使用されているものに対し、今ここで使用しているものはそれらをはるかに越えるレベルの合成燃料なので、トラブルがあるのは承知の上だったが、みんなで協力した方向性でやっているのは間違いないと思っている。来季には全車に入れられるようにしたい」と坂東代表はスーパーGTに携わるすべての人たちの協力を得て、2024年の導入を目指したいとした。
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