キャンバス刷新 ターボも登場
6年ぶりにして初のフルモデルチェンジ(FMC)をおこなったムーヴ・キャンバスだが、外観はマイナーチェンジかと思えるほど先代のデザインを踏襲していた。
【画像】ターボとNA【刷新されたムーブ・キャンバスの走り】 全72枚
パッケージングと車体構造はタントの低全高型といえ、1655mm(FF)の全高にスライドドアを採用。車名からすればムーヴのスライドドア仕様とすべきだろうが、容量と見晴らしを重視したキャビンまわりの設計はタント寄りのキャラクターと実用性を求めたモデルを示している。
ダイハツ新世代ハードウェアのDNGAを展開したパワートレインやプラットフォームを採用。
安全&運転支援機能もグレードアップ。設計面でもダイハツの最新モデルとなった。
また、FMCを機に待望のターボ車も導入された。高速道路を使用した中長距離用途まで考えているユーザーには大きな福音である。
にもかかわらず、先代のデザインを色濃く引き継ぐのはデザイン面のキャラが大きなセールスポイントになるため。
評判のいいデザインにはあまり手を加えずハードウェアをアップデートさせたわけだ。
もっとも、従来型がダイハツが想定した以上に幅広い年齢層に支持されたため、主に年配ユーザーを対象にキュート控え目に渋みを加えた大人味の「セオリー」系を設定。
従来キャラを引き継いだ「ストライプス」系との2系統構成となった。
走りに余裕 ターボで広がる用途
最高出力はNAが52ps、ターボが64ps。
ターボはNAの約1.7倍の最大トルクを発生するにもかかわわらず最高出力が64psなのは業界自主規制による。
一般市街地走行の印象は最高出力相当。パワースペック以上にNA車が力強い。
錯覚というと語弊があるが、NA車の力強さはパワートレイン制御の妙技。
低中負荷域でエンジン回転数を抑えた結果の力強さであり、その方法はスロットルの大開きである。
感覚的にはペダルストロークの7割方で最大トルクの9割以上を使ってしまい、そこから先の加速はダウンシフト頼み。登坂や高速の加速でやたら高回転を使用する。
要するに高負荷域ではスペックどおりなのだ。
これはキャンバス特有ではなく、軽乗用全般にいえることで、タウンユースでは扱いやすさの面でメリットでもある。
基本的なスロットルや変速の制御はターボ車にも共通しているが、トルクに余裕がある、つまりエンジン回転を抑えて巡航できる速度域が広く、加速時のダウンシフトも少なくできる。
100km/h巡航時のエンジン回転数と維持するための回転変化はNA車とは段違いだ。
60km/h以下ではターボの必要性をあまり感じないが、高速道路走行まで視野に入れるならターボは必須。
ターボ車の追加はキャンバスの走行性能面の適応用途を大きく拡大した。
和みの乗り味あってのキャンバス
軽乗用のフットワークの基本は和み系。要するに乗り心地重視のソフトサスである。
スーパーハイト系でもロールを締め上げるようなチューンはなし。
座面高共々頭部が高ければ体感ロールは大きくなり、ちょっと首振り人形の気分だ。
キャンバスも例外ではなく、比較的大きなロールを使うが、ロール速度そのものは抑制が利いており、揺れ返しも少ない。
中立付近の据わりも和み系では良好。軸脚はタウンユースに置いているが、高速走行も多少配慮といった感じだ。
とはいえ、一般的には高速直進の据わりは不足気味。
切り返した時の挙動収束が甘いし、横風などの外乱の影響も受けやすい。
コーナリング中のほうが落ち着いているくらい。上級クラスに比べると直進維持に気をつかう。
これはNA車もターボ車も変わらない。
だからといって、高速操安のためのハードサスにしたのではキャンバスらしくもない。和みの乗り味あってのモデルなのだ。
そこで役立つのがLKA(LKC)である。
60km/h以上で機能し、車線認識によりはみ出し防止操舵支援機能を備える。
全車速追従型のACCとセットにすれば高速道路の運転ストレスは大幅減。
ターボ車はACCの速度維持、前走車追従能力も高く、ターボ/ACC/LKAの3点盛りなら高速長距離もさして苦にならない。
4名乗車でもそれぞれ居心地良し
パッケージングからすれば多用途性重視のキャビン設計と思えるかもしれないが、後席収納は従来型と同じくバックレスト前倒のシングルフォールディング。
左右独立後席スライド機能を備えているので客室/荷室のバランスを変更できるものの、ダイブダウンなど最大積載を稼ぐ工夫は少ない。
大物積みならばスーパーハイト系のタントを選べばよく、キャンバスの守備範囲ではない。
最大積載はともかく、キャンバスが実用性重視の設計なのは間違いない。
その要点が後席座面下に設置された「置きラクボックス」。
引き出しのようなもので、後席乗員の身まわり品の収納のほかに格納式衝立を用いればショッピングバッグのような袋物の積載にも役立つ。
荷室床下収納やドアポケット、インパネの置き棚。小間物の整理には事欠かない。
4名乗車でもそれぞれの乗員が居心地よく使える設計である。
居住性はハイト系の常として男性4名でも十分。
シングルフォールディングでの収納性のためか後席の形状とクッションに多少の不満を感じるが、4-50°のリクライニング機構も採用され、居心地は悪くない。
アップライトな着座姿勢と高いアイポイントで見晴らしもよく、天井やピラーの圧迫感もない。
外観のイメージどおりに和気藹々としたドライブが楽しめるキャビンである。
「使えるクルマ」 ずばり買い?
軽乗用は上級クラスでは一般的なクルマ趣味あるいは価値感と異なる。
厳しい車体サイズの制限と実用的スペース効率の追求から四頭身的プロポーションとなり、そこに楽しい日常を織り込んでいく。
存在感の強い軽乗用の多くのデザインがアニメ的デフォルメとなるのも納得できる。
キャンバスの評価は嗜好的にアニメ的デフォルメを認めるかどうかが分岐点である。
ターボ車の追加や運転支援の充実もあって走りの汎用性が向上。
キャビン実用性もスモール2BOXを上まわり、登録車ならコンパクトSUVと同等以上。乗用車最小クラスでも「使えるクルマ」なのだ。
もっとも価格も相応で、Gターボはストライプス/セオリーともに同価格で179万3000円。
ACCと両側パワースライドドアを標準装着するなど充実した装備を備えるが、内燃機車ならヤリスやフィットに悠々手が届く。
高速長距離適性もスモール2BOX車が勝り、伝統的車格主義で量れば納得できないだろう。
それでもキャンバスに見て、乗っていると「楽しい生活」への期待値は高まる。
まったく興味のない人にすればオタク趣味と思えるかもしれないが、車格主義からの開放感が心地よい。
傍目を気にした背伸びより自己満のオキニ。そんな価値感に共鳴できるならアリ。
ダイハツ・ムーヴ・キャンバスのスペック
ダイハツ・ムーヴ・キャンバス・セオリーGターボ
価格:179万3000円
全長:3395mm
全幅:1475mm
全高:1655mm
ホイールベース:2460mm
車両重量:900kg
パワートレイン:直列3気筒660ccターボ
最高出力:64ps/6400rpm
最大トルク:10.2kg-m/3600rpm
ギアボックス:CVT
ダイハツ・ムーヴ・キャンバス・ストライプスG
価格:167万2000円
全長:3395mm
全幅:1475mm
全高:1655mm
ホイールベース:2460mm
車両重量:880kg
パワートレイン:直列3気筒660cc
最高出力:52ps/6900rpm
最大トルク:6.1kg-m/3600rpm
ギアボックス:CVT
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みんなのコメント
yahooニュースでも同じコメント書いてみたら
気が弱いからかけないだろうけれど