長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価する。今回はバーレーンGPでの戦いぶりを振り返る。
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F1技術解説:バーレーンGP(1)車体特性が逆転し、苦しんだフェラーリと強さを増したレッドブル
2023年開幕戦で20人のドライバーたちは、ウインターブレイクによる影響を一切感じされないシャープな走りを見せた。ルーキー以外のドライバーにとっても約3カ月ぶりのレースだったことを考えると、全体的なレベルはかなり高かったと言えるだろう。
■評価 10/10:独走で優勝したフェルスタッペンと、衰えぬ才能を見せつけたアロンソ
マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選1番手/決勝1位
フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン):予選5番手/決勝3位
オフの間もシムレースで腕を磨くマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、プレシーズンテストから絶好調であり、その流れを開幕戦まで維持し、最高の結果を手にした。レッドブルは、予選でのマシンバランスを妥協しても戦えると踏んで、セットアップを決勝にフォーカスした。それでもフェルスタッペンはポールを獲得。金曜にはマシンのハンドリングに不満を訴えていたが、予選と決勝で優れたパフォーマンスを見せることができ、独走でポール・トゥ・フィニッシュを飾った。
週末のもうひとりのスターは、フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)だった。約10年にわたり中団で戦わざるを得なかったアロンソが、ついに競争力の高いマシンを手に入れ、ドライバーとして速さを失っていないこと、今も素晴らしいレーステクニックを持っていることを証明した。
予選は5番手、決勝スタート直後のターン4でふたつポジションを落とした、チームメイトとのアクシデントもあったが、その後、アロンソは見事にフェラーリやメルセデスに打ち勝ち、3位表彰台をつかんだ。ルイス・ハミルトンとのバトルでは、アロンソがどれほど勝負に対して妥協せず、容赦なく相手を仕留めるドライバーであるかを全世界に対して思い出させたことだろう。
■評価 9/10:マシンに苦しみながら見事な走りを見せたルクレールとハミルトン
シャルル・ルクレール(フェラーリ):予選3番手/決勝リタイア
ルイス・ハミルトン(メルセデス):予選7番手/決勝5位
シャルル・ルクレール(フェラーリ)は、マシンの力不足により、ポールポジションを狙うことができず、決勝ではレッドブルに1-2を許す結果になったが、間違いなくチームメイトより優れたパフォーマンスを見せていた。決勝に新品ソフトタイヤ1セットを残しておくという戦略を採らなければ、フロントロウを獲得していただろう。
新品ソフトでスタートしたことにより、1周目にセルジオ・ペレスの前に出て、ファーストスティントの間は2番手を維持した。しかし後に履いたハードタイヤのデグラデーションが予想以上に悪く、コース上でペレスに抜かれることは避けられず。その上、トラブル(ECUの問題と思われる)が起きて開幕戦からリタイアせざるを得なかった。
ベテランのルイス・ハミルトン(メルセデス)は、週末を通してベストな仕事をしたといえる。メルセデスW14にはライバルたちほどの速さはなかったが、バランスは良かった。予選でジョージ・ラッセルに僅差で敗れたハミルトンだが、決勝ではチームメイトを寄せ付けなかった。1ラップ目をうまく決め、ふたつポジションを上げて5番手となり、ファーストスティントではタイヤを守りながら走ったものの、フェラーリのカルロス・サインツに大きく遅れることはなかった。後方でラッセルとランス・ストロールが戦っている時、ハミルトンはスペイン人ふたりを相手に奮闘。しかし、マシンの速さで勝っているアロンソに対しては対抗する術がなく、メルセデスにストレートラインスピードが不足しているために、サインツを抜くことができずに終わった。
■評価 8/10:レッドブルに1-2をもたらしたペレス
セルジオ・ペレス(レッドブル):予選2番手/決勝2位
ランス・ストロール(アストンマーティン):予選8番手/決勝6位
バルテリ・ボッタス(アルファロメオ):予選12番手/決勝8位
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ):予選15番手/決勝10位
セルジオ・ペレス(レッドブル)は、2番グリッドから2位を獲得、ポジティブな週末を過ごした。しかしチームメイトのフェルスタッペンには全くおよばなかった。ペレスは決勝スタート直後にルクレールに抜かれた後、フェルスタッペンから大きく遅れてしまったが、ルクレールがリタイアする前に前に出て、レッドブルに1-2というベストなリザルトをもたらした。
ランス・ストロール(アストンマーティン)は、プレシーズンテスト直前に複数箇所を骨折し、痛みに耐えながら走行するなかで、予選8番手、決勝6位という、賞賛に値する結果を出した。テストでは一度も走れなかったが、金曜からすぐにマシンに馴染んだ。ミスは多くなかったものの、予選Q1では2セット目のタイヤを使わざるを得ず、Q3で不利になり、8番手どまりに。決勝オープニングラップではターン4入口でチームメイトのリヤに軽くヒット、しかし幸いどちらのマシンにもダメージはなかった。ラッセルと長時間にわたりバトルを繰り広げたが、最終的にクリーンな動きで前に出た。
バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)は、終盤ピエール・ガスリーからチャレンジされながらも、トップ4チームに続くベストの位置8位でフィニッシュした。アルファロメオC43は、予選では予想していたほどの強さがなく、12番手にとどまった。しかしボッタスは決勝1周目にクリーンでアグレッシブな走りですぐさま8番手に浮上。アルファロメオにはストロールと戦えるだけの強さはなかったため、ボッタスはマクラーレンのランド・ノリスとアルピーヌのエステバン・オコンの前の位置を保つことを目標とし、それを比較的容易に達成した。ピットストップ戦略により、短い間だったがラッセルとアストンマーティン2台の前を走行したものの、彼らに対抗できる速さはなく9番手を走行、ルクレールのリタイアで8位を手にした。
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)は再び素晴らしいパフォーマンスを発揮し、開幕戦からチームにシーズン初入賞をもたらした。最終スティントでは、背後の角田裕毅から激しいプレッシャーを受けたが、10番手を守り切った。予選ではQ2に進出。縁石でフロントウイングにダメージを負ったためアタックラップを断念せざるを得ず、15番手にとどまった。しかし決勝の1周目にすぐさま12番手に上がり、最後まで激しい戦いを繰り広げながら、ポイントをつかんだ。アルボンは今回もミスなく走り切り、新チーム代表ジェームズ・ボウルズに予期せぬ開幕戦入賞という結果をプレゼントした。
■評価 7/10:新チームメイトより速さを見せ、角田にとってポジティブなシーズンスタートに
カルロス・サインツ(フェラーリ):予選4番手/決勝4位
ジョージ・ラッセル(メルセデス):予選6番手/決勝7位
角田裕毅(アルファタウリ):予選14番手/決勝11位
ローガン・サージェント(ウイリアムズ):予選16番手/決勝12位
ランド・ノリス(マクラーレン):予選11番手/決勝17位
ピエール・ガスリー(アルピーヌ):予選20番手/決勝9位
カルロス・サインツ(フェラーリ)は週末を通して、チームメイトにはかなわなかった。FP1で派手なスピンを喫してタイヤ1セットを無駄にし、プログラムに遅れが発生。サインツは、リヤがナーバスなマシンで、ターン5からターン8入口の部分で苦労し続けた。ルクレールのリタイアで、表彰台の望みが出てきたものの、子ども時代からのヒーローであるアロンソに抜かれてしまった。
ジョージ・ラッセル(メルセデス)は、予選ではハミルトンより0.044秒速いタイムを出して6番グリッドを獲得。しかし決勝1周目にチームメイトの後ろに落ちた後、再び前に出ようとしてプッシュし、早い段階で最初のタイヤセットを使い切ってしまった。その後はアストンマーティン2台と戦ったが、W14のパフォーマンス不足から、アロンソとストロールの両方に敗れ、7位どまり。レース後、ラッセルは強い失望を示していた。
角田裕毅(アルファタウリ)は、最終スティントでアルボンに挑み、最後の1点を目指したが、オーバーテイクすることができず、約1秒差の11位でフィニッシュした。新しいチームメイトを迎えた最初のレースで、角田は週末を通してニック・デ・フリースより速く、非常にポジティブな形でシーズンのスタートを切った。
ローガン・サージェント(ウイリアムズ)は、一貫してルーキーのなかでベストのパフォーマンスを見せた。予選Q1ではアルボンに近いタイムを記録し、Q2進出に迫った。決勝のファーストスティントでチームメイトについていった後、1回目のピットストップの時期にポジションダウン。そのためサージェントはポイント争いをすることはできなかったが、グランプリデビュー戦を、経験豊かなドライバーたちより前の12位でフィニッシュしたのは、ルーキーにとって素晴らしい結果だったといえる。
ランド・ノリス(マクラーレン)にとって、週末全体が長い悪夢のようだった。MCL60はペース不足で、予選では11番手が精いっぱいだった。決勝1周目をうまく走り、トップ10圏内に入ったが、ICEのニューマチックシステムに問題が発生し、頻繁にピットストップを繰り返さなければならなかった。レースを完走したことでノリスとチームが得たのは、ニューマシンでの走行経験のみだった。
ピエール・ガスリー(アルピーヌ)にとって予選は最悪の展開となり、グリッド最後尾に沈む結果に。極端なマシンセットアップを選んだことで、燃料を少なくした状態では非常に走りづらくなったのだ。だがガスリーは期待外れの予選から決勝で見事に挽回し、20番グリッドから9位を獲得した。予選Q1で敗退したことで、決勝ではソフトの新品タイヤを残しており、終盤のバーチャル・セーフティカー後にそれを投入し、大きなメリットを得た。あと2周あれば、ボッタスを抜いて8位に上がっていただろう。
■評価 6/10:復帰ヒュルケンベルグ、予選で輝くも、入賞ならず
周冠宇(アルファロメオ):予選13番手/決勝16位
ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース):予選10番手/決勝15位
周冠宇(アルファロメオ)は予選では良い走りを見せてボッタスに近い速さを見せていたものの、決勝スタートでポジションを失い、入賞争いをすることができなかった。そのため、残り2周の段階でタイヤ交換を行い、ガスリーからファステストラップを奪う作戦を実行、見事目的を達成し、アルピーヌが追加の1点を獲得するのを阻止した。
レギュラーシートから3年遠ざかっていたニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)だが、予選では全くブランクを感じさせず、VF-23でトップ10に入るという、予選のセンセーションのひとつを巻き起こした。だが、レースの勘はまだ戻っていないのか、決勝1周目に、オコンの右リヤに軽く接触、自身のフロントウイングの左エンドプレートにダメージを負ってしまった。彼は接触したこと自体に気付かず、ファーストスティントを通してペースが欠けていることに戸惑いを示した。ノーズコーン交換後、彼は本来の速さを発揮し始めたが、ポイント争いができる位置に戻るには遅すぎた。
■評価 5/10:期待された結果を残せなかったデ・フリース
ケビン・マグヌッセン(ハース):予選17番手/決勝13位
エステバン・オコン(アルピーヌ):予選9番手/決勝リタイア
ニック・デ・フリース(アルファタウリ):予選19番手/決勝14位
オスカー・ピアストリ(マクラーレン):予選18番手/決勝リタイア
ケビン・マグヌッセン(ハース)はチームメイトとは逆に、予選はひどい出来だったが、決勝で挽回してみせた。だが、ヒュルケンベルグ同様にトップ10の争いは近づくことさえできず、ハースにとっては残念なレース結果に終わった。
エステバン・オコン(アルピーヌ)にとって、3度ペナルティを受けた後にリタイアという、忘れてしまいたいレースだった。予選では9番手という励みになる結果を出したものの、スターティンググリッドでわずかに停止位置がずれていたために、1回目のペナルティを受けた。5秒ペナルティを消化する際に、0.4秒早くメカニックがマシンに触ってしまい、2度目のペナルティが科された。その後、ピットレーンでのスピード違反を犯してさらにペナルティを受け、チームはリタイアを決めた。
期待のルーキーふたりにとって、開幕戦は思いどおりのものにはならなかった。ニック・デ・フリース(アルファタウリ)は週末を通して角田よりはるかに遅く、予選ではQ1で敗退。決勝ではバーチャル・セーフティカー導入時にステイアウトしてトップ10に近い位置に浮上したが、新しいタイヤを履いたマシンに次々に抜かれ、14位という結果になった。
オスカー・ピアストリ(マクラーレン)は、予選で18番手、決勝ではトラブルでリタイアという結果だったが、その記録が示すよりは良い仕事をしていた。プラクティスではノリスに近いペースを見せたものの、予選Q1では最後のアタックラップで小さなミスをしたことで0.3秒を失い、Q2に進めなかった。非常にドライブしづらいマシンで冷静に戦ったが、開幕戦の週末には彼が実力を示す機会は全くなかった。
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みんなのコメント
もう終わりじゃん
アロンソにさえ着いて行けないマシン