11月16日、トヨタ自動車はENEOSスーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONEのST-Qクラスに参戦する車両の改善点を発表した。第3戦オートポリス以来ひさびさに登場した水素エンジンを積むORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは、車両自体の大幅なアップデートはないが、新たに走行中に発生するボイルオフガス活用に向けて、新たに技術開発に挑戦する仲間を募ることになった。
水素を燃料として走るORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは、2021年の登場以来2年間は気体水素を使って参戦。2023年からは大きな技術的な困難をともなう液体水素での参戦を開始し、2024年は異形タンクの採用により航続距離を伸ばしたほか、2023年に課題だった液体水素ポンプの耐久性を大幅に向上させるなど、モータースポーツというフィールドを活用して日進月歩の進化を遂げてきた。
11月16~17日のスーパー耐久第7戦富士は9クラス65台がエントリー。ST-X、ST-Qに注目の名も
そんなORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptは、第7戦富士に第3戦オートポリス以来の登場となった。第2戦富士24時間、第3戦オートポリスともに水素以外のトラブルで完走ができていなかったが、今回は事前にテストも実施。完走を目指して戦うことになる。
さらに、TOYOTA GAZOO Racingは水素の活用について新たな取り組みをスタートさせた。今回、富士スピードウェイのピット内で走行中に発生するボイルオフガス活用を想定したコンセプトモデルを展示し、ともに技術開発に挑戦する仲間を募ることになった。
ボイルオフガスとは、タンクに貯蔵されている液体水素燃料が外部からの自然入熱などで気化してしまう水素のこと。液体水素は気体水素に比べて密度が高く、同じ容量のタンクにたくさんの水素が入る一方で、ボイルオフの課題がある。これまで走行中に燃料タンク内で発生したボイルオフガスは、活用されることなく大気中に放出されていた。
今回、ボイルオフガスの活用に関する新たなコンセプトモデルを展示し、仲間を募ることになった。現在はコンセプト段階だが、実現すればボイルオフガスをエネルギーとして回収し活用することで、液体水素システム全体のエネルギー効率の向上が期待できる。
想定されたコンセプトとしては、まずボイルオフガスを燃料として再利用すること。タンク内の液体水素から発生したボイルオフガスを自己増圧器(外部からのエネルギーに頼らず圧力を高める装置)に送ることで、再利用できる燃料を作り出す技術開発に取り組む。ボイルオフガスも圧力を加えることで水素燃料として再利用が可能だが、通常であれば増圧には電力などのエネルギーを必要とする。
展示された自己増圧器では、ボイルオフガス自体が持つ圧力を操作することで、新たにエネルギーを使うことなく約2~4倍に増圧し、再利用燃料を作り出す。
また、ボイルオフガスの再利用を行う際の増圧工程では、一定の割合で余ったボイルオフガスが排出される。これを今回開発した小型の燃料電池パッケージ(FCスタック)に送り、水素を化学反応させて発電する。
生み出された電力は、液体水素ポンプ用のモーターなどの動力としての活用を想定。実現すれば本来オルタネーターでの発電量に相当する電力をボイルオフガスから補うことが可能になり、エネルギー効率の向上が期待できる。また、この発電工程で使いきれなかったボイルオフガスは、これまでと同様に触媒を通じて水蒸気に変換し、車外に安全に放出される。
スーパー耐久に挑むORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptの挑戦を通じては、走行中のCO2回収などカーボンニュートラルに向けたありとあらゆる取り組みが続けられている。今回のボイルオフガス活用も、エネルギーをわずかでも無駄にしない取り組みとなりそうだ。
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