沸騰するテンションで進む2023年プレーオフ。そのファーストステージ“ロウンド・オブ・16”最終戦となったNASCARカップシリーズ第29戦『バス・プロ・ショップス・ナイトレース』は、ポストシーズン突入から3戦連続のポールポジションを獲得したクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)や、2021年王者カイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)らを退けたデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が、ブリストル・モーター・スピードウェイでの500周勝負を制圧。
これでトヨタ陣営のうちプレーオフ権を持つ全5台が“ラウンド・オブ・12”への進出を決める一方、2014年の初代“エリミネーション”覇者で今季限りの勇退を表明しているケビン・ハーヴィック(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)や、Next-Gen導入初年度にタイトルを獲得したディフェンディングチャンピオンのジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)らは、ここでタイトルへの挑戦権を失う結果となった。
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レギュラーシーズンでは“ダートオーバル”への変貌が恒例となったブリストルだが、プレーオフの舞台となる9月15~17日の週末は本来の舗装路によるハーフマイルに。そのレースウイーク金曜には、来季2024年カレンダーの2戦ともにダート戦の開催を見送ることがアナウンスされた。
「ブリストル・モーター・スピードウェイが2024年春に『世界最速のハーフマイル』として、コンクリートの路面のハイバンクで“フードシティ500”の復活開催を発表できたことを、心からうれしく思う」と語ったのは、同地ブリストルの代表を務めるジェリー・コールドウェル。
「1990年代初頭の最初の頃のイベントを彷彿とさせるロゴも復活し、トラックの当時の外観やヴィンテージトレードマークの雰囲気も復活させる。素晴らしいこの週末のレースと、来季2024年の開催を楽しみにしている」
こうして金曜晩から始まった最初のFPでは、まずラーソンを先頭にクリス・ブッシャー(RFKレーシング/フォード・マスタング)やダレル“バッバ”ウォレスJr.(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)らプレーオフドライバー3名が速さを見せる。
しかし予選に入ると、やはりレギュラーシーズン終盤戦からスピードを維持するトヨタ・カムリ陣営が『世界最速のハーフマイル』でも勢いを見せ、ベルが3週連続のポールウイナーに。その隣にもハムリンが並び、JGR軍団が最前列をロックアウトする展開に持ち込んだ。
「そこにほとんど差なんてない。ブリストルでの0.109秒から0.117秒って何だ?ってレベルだよ(笑)」と、チームメイトを破ったことについて応じたベル。
「クレイジーなほどタイトだし、このチームを本当に誇りに思う。明日の500周は非常に長い時間だし、この2戦で何か学んだことがあるとすれば、予選はレースにとって何の意味もないということ」だと続けたベル。
「僕らはふたたび大きなピットストールを経験し、素晴らしいスタート地点に立った。あぁ、正直言って興奮してるよ(笑)。僕はこのトラックが大好きで、本当にお気に入りのひとつだからね」
その言葉どおり決勝序盤から順調に周回を重ねたポールウイナーは、途中A.J.アルメンディンガー(カウリグ・レーシング/シボレー・カマロ)の失速を避けきれず16号車に追突し、衝撃で宙を舞ったオースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)らのアクシデントにも動じず、ステージ1、ステージ2と順当に制覇し、都合187周のリードラップを刻んでいく。
■好調JGR陣営「僕らを止めるものは何もない」とハムリン
ステージ2では雨雲襲来による降雨中断も経たなか、この日102周をリードした陣営内のタイ・ギブス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)と並んで、決勝500周中366周目のピットロードでリードを奪ったハムリンが、先頭の位置からファイナルステージに突入していく。
するとバックストレッチでエリック・ジョーンズ(レガシー・モーター・クラブ/シボレー・カマロ)とのスリーワイドに持ち込んだコリー・ラジョイ(スパイアー・モータースポーツ/シボレー・カマロ)がコントロールを失い、エプロンからバンクへ進入。隊列のさなかに放り込まれたラジョイの7号車は次々と犠牲者を生み出し、ジャスティン・ハーレイ(カウリグ・レーシング/シボレー・カマロ)やロガーノらが道連れとなった。
「ああ、前方でスモークが見えたよ」と34位のリタイヤに終わり4点差で次ステージ進出を逃したロガーノ。
「7番が回っているのが見えた。スポッターは『彼が上がってくる』と言っていた。『彼が近づいてくる』とね。それで僕はめいっぱいブレーキを掛けボトムに動こうとした」と状況を説明したチャンピオン。
「僕の後ろにいたのは(ライアン・)ニューマンだったと思うが、誰かが彼の後ろで彼にヒットしたんだろう。それが一種の連鎖反応だった。その瞬間『ハイレーンに動かなきゃ』と思った。そこでもう逃げ道はなくなった」
「明らかに、それは本当に残念なことだ。一瞬の判断のあと自分を否定することになる。あんなことが起こったとは信じたくないし、修復可能だと思いたかったが、クルマの損傷が大き過ぎた」と、22号車マスタングの左リヤホイールがあらぬ方向を向くほどの損傷を負ったロガーノ。
これで最後の135周をリードし、合計142周のリードラップを記録したハムリンが、2.462秒差でラーソンと僚友ベルを従え“ラウンド・オブ・12”進出を確定させた。
「チーム全員にはどれだけ感謝してもし切れない」と、フィニッシュ後の大観衆によるブーイングのなか、今季3勝目、同ブリストル3勝目、そしてキャリア通算51勝を飾ったハムリン。
「ここまで本当に全力を尽くしてきたし、僕らチームのこれまでの実績は本当に素晴らしい。JGR陣営の走りにはとても満足しているし、続けるのが待ち切れない。今年は僕らの年だ。すべてをまとめたような気がするし、カムリはあらゆる種類のレーストラックでスピードを発揮している。現時点では僕らを止めるものは何もないね!」
併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第27戦、今季プレーオフ緒戦となった『フードシティ300』は、ジャスティン・オルゲイアー(JRモータースポーツ/シボレー・カマロ)が300周中257周目のリスタートから逆転勝利。同じくNASCARクラフツマン・トラック・シリーズ第20戦『UNOH 200・プレゼンテッド・バイ・オハイオ・ロジスティクス』は、前戦勝者クリスチャン・エッケス(マキャナリー・ヒルゲマン・レーシング/シボレー・シルバラードRST)を引き摺り下ろしたレギュラーシーズンチャンピオンのコーリー・ハイム(トライコン・ガレージ/トヨタ・タンドラTRD-Pro)が今季3勝目、ブリストルでは初となるキャリア通算5勝目をマークする結果に。
服部茂章率いるハットリ・レーシング・エンタープライズ(HRE)は引き続き2台体制を敷き、16号車タイラー・アンクラム(トヨタ・タンドラTRD-Pro)が23位、61号車ジェイク・ドリューは20位に終わっている。
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