RANGE ROVER SV Autobiography × Autobiography
レンジローバー SVオートバイオグラフィー × オートバイオグラフィー
アーバンSUVの新潮流はイタリア風か英国流か? マセラティ レヴァンテとジャガー Fペイスの素顔に迫る【Playback GENROQ 2017】
控えめな最高峰。
巨大な体躯ながら気品漂うエクステリアに最高級の素材を使った室内。まさにラグジュアリーSUVの最高峰に君臨するのがレンジローバーだ。中でも特別仕様車を手がけるSVOが開発したフラッグシップモデルと、中間グレード「オートバイオグラフィー」を連れ出し、その世界観に浸った。
「ゆったりとした品の良い乗り味は共通。違いはコーナリング性能と快適性にあり」
「ああ、やっぱりランドローバーはプレミアムSUVの造り方を心得ているなぁ」と感心することしきりだった。それほど2台のレンジローバー「オートバイオグラフィー」と「SVオートバイオグラフィー」には、高級SUVが持つべき独自性と世界観がしっかりと表現されていて心底圧倒された。“砂漠のロールス・ロイス”と呼ばれるのもむべなるかなと再認識した次第だ。
本題に入る前に先に断っておくべきことがある。2台のモデル名はオートバイオグラフィーとSVオートバイオグラフィーとわずかな差しかないが、ホイールベースはSVオートバイオグラフィーのほうが200mmも長いうえに、価格は“ただ”のオートバイオグラフィーが1861万円であるのに対し、ホイールベースが長いSVオートバイオグラフィーは2934万円と値が張る。なお、以降はオートバイオグラフィーをSWB(ショートホイールベース)、SVオートバイオグラフィーをLWB(ロングホイールベース)と略させていただく。
「美しいとしか言いようのない色彩のコントラストを生み出す華麗なLWD」
LWBのドアを開けて目に飛び込んでくるのは、一分の隙もないほど緻密で質感の高いラグジュアリーな世界である。シートに貼られたレザーは指先で触れるまでもなく最上級のクオリティであることは明らかで、そこに品の良いステッチが丁寧に施されている。ダークチェリーとアイボリーが組み合わされたシートカラーも上品で美しいとしか言いようのない色彩のコントラストを生み出していて華麗。こんな色の組み合わせを自動車のインテリアで見た記憶はほとんどなく実に新鮮だが、だからといって奇をてらったようなところは一切なく、むしろ伝統的なカラーコンビネーションと言いたくなるような落ち着きと自然な雰囲気を醸し出しているから不思議だ。
そう、このインテリアは徹底的に豪華で上質だが、全体に漂うイメージは控えめで実に品が良い。“豪華”というとすぐに華美で派手な世界に走ってしまうどこかの国のメーカーとは大違いで、本当に趣味のいい贅沢を知っている人たちにこそ愛される世界と言っていい。だから誠に申し訳ないが短期間で財を成した“新興富裕層”のなかにはこの品の良さが物足りなく感じられる向きがいるかもしれない。彼らよりも代々富を受け継いできたイギリス貴族のような人々にこそ、この控えめで上品なテイストは歓迎されるはず。言い換えれば、それはベントレーやロールス・ロイスに肩を並べるほど贅を尽くした世界なのである。
「リヤシートで寛ぐゲストのため、サスペンションの動きはどこまでもゆったりしている」
そうした世界観はLWBの走りにも見事に貫かれている。リヤシートでゆっくりと寛ぐゲストにせわしない印象を与えないため、サスペンションの動きはどこまでもゆったりとしている。おかげでロール方向にもピッチング方向にもボディはたっぷりと動くが、その様子は驚くほど落ち着きに満ちたもので、これほど乗り心地で贅沢さを強く表現したクルマもそうそうないと思えるほど。
それだけにハーシュネスは皆無といっていいが、ハンドリングにはそのしわ寄せが微妙に表れている。無造作にコーナーに進入しようとするとフロント荷重の不足からアンダーステアが顔をのぞかせることが少なくなく、それに気づかないままハイペースでターンインすると静かにスタビリティコントロールが介入して本来あるべき走行ラインに引き戻してくれるのである。
そうした傾向はコーナー進入時に軽くブレーキングすることで簡単に解消できるのだが、LWBのコーナリングマナーをこのような形で表現するのはまったくフェアではない。なぜなら私は先にSWBでフルサイズのプレミアムSUVとは到底思えない異次元のコーナリングパフォーマンスを体験していて、どこかでこれを基準としながらLWBについて語っているからだ。
「優れたコーナリング性能も両立したのがSWB、さらなる快適性を追い求めたのがLWB」
では、SWBのハンドリングはどのようなものだったのか?
基本となるのは、LWB同様のゆったりとした乗り心地である。昨今のプレミアムSUVはどれもスポーツ性能ばかり追求していて走りに“ゆったり感”が欠けているきらいがある。しかし、レンジローバーは違う。SWBでもハーシュネスを丁寧に排除した、上質な乗り心地を実現しているのである。このためピッチング方向の動きは決して小さくないが、これとは対照的にロール方向の動きをしっかり規制することでコーナリング時の不安感を解消し、優れた旋回性能を実現しているのだ。
言い換えれば、LWBもSWBも基本となるのはゆったりとして快適な乗り心地であり、そのなかで優れたコーナリング性能も両立したのがSWB、さらなる快適性を追い求めたのがLWBと表現できるだろう。
もうひとつ特筆しておきたいのが、2台に搭載された5.0リッターV8スーパーチャージド・エンジンの控えめでありながら力強い働き振りのことである。最高出力と最大トルクはSWB:510ps/625Nm、LWB:550ps/680Nmと微妙な違いはあるものの、ワインディングロードではタイヤの限界まで容易に追い込めるほどの迫力あるパワーを発揮する。一方、このエンジンはゆっくりと流しているときでも無音とはならず、むしろ自分が粛々と仕事をしていることを問わず語りに伝えてくるが、その印象はあくまでも繊細かつ上質で、ラグジュアリー感を損ねることがない。私はこのほどよい表現方法を、クルマを運転する充足感でドライバーを満たす手法として高く評価したいと思う。
「レンジローバーだけは、オフロード性能も守り抜く超然とした存在であって欲しい」
今回の試乗でオフロード性能は確かめられなかったものの、これまでの経験からいえば、まったく心配は無用のはず。そもそもオンロード向けプレミアムSUVとは一線を画すソフトな乗り心地は、オフロードでの優れたロードホールディングの副産物として得られたものであり、それ自体が優れたオフロード性能の証ともいうべきものなのだ。
私には、オンロード走行に特化した最近のプレミアムSUVに疑問を投げかけるつもりは毛頭ない。ただし、すべてのSUVが同じ方向を向く必要もないだろう。とりわけ、このカテゴリーのパイオニアであるレンジローバーだけは、オフロード性能も守り抜く超然とした存在であって欲しい。私のそんな期待は、今回のテストドライブによってこれ以上ないほど満たされたと言っていい。
REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)
【SPECIFICATIONS】
レンジローバー SVオートバイオグラフィー
ボディサイズ:全長5205 全幅1985 全高1865mm
ホイールベース:3120mm
車両重量:2620kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCスーパーチャージド
総排気量:4999cc
圧縮比:9.5
最高出力:405kW(550ps)/6500rpm
最大トルク:680Nm(69.4kgm)/3500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前マクファーソンストラット 後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前275/40R22 後275/40R22
最高速度:250km/h
0-100km/h加速:5.4秒
燃料消費率:6.7km/L(JC08モード)
車両本体価格:2934万円
レンジローバー オートバイオグラフィー
ボディサイズ:全長5005 全幅1985 全高1865mm
ホイールベース:2920mm
車両重量:2550kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCスーパーチャージド
総排気量:4999cc
圧縮比:9.5
最高出力:375kW(510ps)/6500rpm
最大トルク:625Nm(63.8kgm)/2500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション:前マクファーソンストラット 後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前275/40R22 後275/40R22
最高速度:250km/h
0-100km/h加速:5.4秒
燃料消費率:7.4km/L(JC08モード)
車両本体価格:1861万円
※GENROQ 2017年 1月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。
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