アルゼンチンが誇る南米大陸最高峰のFFツーリングカー選手権、TC2000の第5戦が6月21~23日にサンフアン・ビリクム・サーキットで開催され、ルノー陣営のアクシオン・エナジー・スポーツが躍動。予選は“伏兵”ファクンド・アルドリゲッティ(ルノー・フルーエンスGT)が初ポールポジションを獲得すると、土曜レース1、日曜レース2ともに20歳の新鋭ティアゴ・ペーニャ(ルノー・フルーエンスGT)が連勝を飾り、シリーズ“3冠”王者の父リオネル・ペーニャを差し置いての大活躍を演じている。
初開催となった2019年以来のビリクム訪問となったTC2000だが、その際にはTOYOTA GAZOO Racing YPFインフィニアのエースとして戦った“5冠”王者マティアス・ロッシ(トヨタ・カローラTC2000)が予選、決勝のすべてを制圧していた。
スター選手の饗宴。TC2000王者とSCBタイトル候補が快勝。バリチェロもテスト参加/TCR南米第3戦
「そうだね、2019年にビリクムで開催されたTC2000最初のイベントで勝つチャンスが得られた。あの週末は始めから競争力があり、ポールを獲得し、レースでも優勝できたんだ」と、今季よりひさびさのシリーズ復帰を果たしているロッシ。
「現在、このカテゴリーは非常にテクニカルかつタイトであり、そこで得意なサーキットに戻ってきた。今季チャンピオンシップのスタートは理想的ではなかった(開幕戦はトラブル)し、ここで巻き返す必要があるね。残り日程はどんどん少なくなり(選手権首位)ペーニャには“違い”があるから、今週末こそ鍵になる。チームとして良い結果が必要だ」
そうライバルに名指しされたチャンピオンは、同地アルド・カントーニ・スタジアムで開催されたプレゼンテーションにて、ルノー陣営がこの地でまだ未勝利であることを明かし「このトラックで初勝利を目指す」と宣言した。
「ビリクムで勝つのは、まさに夢だ。僕もレースを経験してきたブラジルのヴェロチッタのように、ドライバーとしてどこから見ても一級品で、追い抜きも多い美しい場所なんだ。このコースでは『初勝利のタスク』があるし、それを目指していきたいね」
そんなふたりは走行開始から火花を散らし、FP1はロッシが、続くFP2はペーニャが最速を記録。このまま予選でもふたりの勝負が繰り広げられるものと予想された。しかし、そこへ割って入ったのが“元トヨタ陣営”アルドリゲッティのルノーで、ペーニャの1号車、ロッシの117号車を従える1分43秒419の最速タイムを刻み、伏兵がこのカテゴリーでの初ポールを手にした。
■アルゼンチン・フォーミュラ・ナシオナル王者の若手がレースを支配
そのまま土曜現地17時15分から開始される20分+1ラップのレース1に向けては、チャンピオンシップ順位に応じたシリーズ特有の“ハンディキャップ・タイムペナルティ”制度が適用され、ルノー陣営のサテライト的な立ち位置としてディレクTV OCASAレーシングから参戦する85号車、ティアゴ・ペーニャがグリッド最前列スタートの機会を得る。
父のレース活動の影響により北米大陸はダラス出身となるティアゴは、今季TC2000昇格でルーキーを対象とした中南米ルーキーカップ登録ながら、2022年のアルゼンチン『フォーミュラ・ナシオナル』チャンピオンとして早くも頭角を表すと、第3戦の連勝で自身初勝利を記録済み。その勢いを持ち込んだティアゴは、ポール発進の優位性を発揮してレース1を支配していく。
対照的にTGRの絶対的エースであるロッシのカローラには、6周目にミッショントラブルが発生しリタイアを余儀なくされたことで、ルーキーにはさらに楽な展開に。予選最速のアルドリゲッティと99号車マティアス・カプロロ(ルノー・フルーエンスGT)らを従えたティアゴが首位チェッカーを受け、ルノー陣営がビリクム初制覇を“ワン・ツー・スリー”で飾る結果となった。
これでレース2に向けても視界良好の先頭グリッドを得たティアゴは、日曜午前11時25分開始の35分+1周でも絶対的な優位性を維持することに。最終ラップではホンダ陣営のYPFホンダRVレーシングに所属するベルナルド・ラヴァー(ホンダ・シビックTC2000)の10号車に背後から奇襲を受け、一旦はシビックにオーバーテイクを許したものの、温存していた“プッシュ・トゥ・パス”を冷静に活用したティアゴは、ランキング2位のベテランを差し返すことに成功。そのまま週末を連勝で飾り、ポイントスタンディングでも3位に急浮上する完璧なシナリオを完成させた。
その活躍を背後から見守り、自身も14番手スタートから息子と並ぶ3位表彰台まで駆け上がったペーニャがチャンピオンシップの首位に留まるTC2000シリーズ。続く第6戦はまだ開催地未定ながら、7月19~21日の週末に開催される。
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