米メーカーから消えるセダン
text:Takahiro Kudo(工藤貴宏)
【画像】米国で買える米セダン【どんなモデルがある?】 全103枚
editor:Taro Ueno(上野太朗)
「儲からないからアメリカではセダンはもうやめる」
アメリカの大手自動車メーカーであるフォードがそう表明したのは2018年4月のことだ。あれから3年が経ち、どうなっているか。
公式ウェブサイトで車種ラインナップを見ると一目瞭然だが、それは有言実行に移されていた。
驚くことに、フォードがアメリカ市場において現在展開するセダンは「フュージョン」たった1台のみ。
「トーラス」も「フォーカス・セダン」もない。そしてそのフュージョンすら2021年モデルへ更新されていない。
つまりこのままドロップし、北米のフォードからセダンが消滅する可能性が高い。いくら北米でセダン離れが進んでいるとはいっても、こんな状況になってしまうとは。
実は、その流れはフォードだけに限らない。
GMのメインブランドといえるシボレーもたった1車種「マリブ」を残すだけ。GMの上級ブランドである「ビュイック」やフォードのプレミアムブランドである「リンカーン」に関してはセダンが消滅してしまった。
クライスラー系はクライスラーに「300」、ダッジに「チャージャー」があるものの、どちらも10年以上前のモデルを引っ張っている。
新しいセダンといえば、GMのプレミアムブランドであるキャデラックが「CT4」や「CT5」を導入しているくらいだ。
アメリカのメーカーからセダンが消えている。それは間違いない。
「レンタカー地獄」にはまった米セダン
なぜ、アメリカンブランドのセダンが壊滅状態となったのか。
ひとことでいえば、フォードが説明するようにセダンが儲からないジャンルとなったからだろう。
たしかに北米は、世界で最もといえる水準でセダン離れが顕著だ。しかしながら、「儲からない」は単に「売れていない」という単純な話だけではない。
プレミアムブランドを除く、アメリカンブランドの多くのセダンに共通する特徴といえばレンタカーとして導入されるケースが多いことである。
レンタカーは大量に納入されるので販売台数を稼げる一方で、まとめて納入することで値引きがおこなわれ、メーカーの利益を削ることになる。
それだけではない、レンタカーで使われた個体は「走行距離は多めだけど年式は古くない車両」として中古車市場に入り、それが「新車を買うよりも割安でお買い得」としてセダンを新車で買う人を減らしてしまう。
また、その結果として中古車相場、すなわち下取り価格を下げてしまうので新車は値引きを拡大しないと売れなくなり、それもまたメーカーの利益を下げてしまうのだ。レンタカーへの採用は悪循環の入り口なのである。
意外? 米で健闘日本のセダン
一方で、そんなアメリカの自動車市場でも日系ブランドのセダンはアメリカンブランドとは異なる状況となっているのが興味深い。
2020年の新車販売ランキングをみると、
トヨタ・カムリ:6位
ホンダ・シビック:8位
トヨタ・カローラ:11位
ホンダ・アコード:17位
日産アルティマ:22位
と、上位25位に1台も入らないアメリカンセダンと異なり健闘しているのだ。
アメリカンブランドのセダンは売れず、ラインナップも壊滅的。
一方、日系ブランドのセダンはそれなりの実績を残している。その違いはどこにあるのか?
「実用性とコスパ」ニーズに合致 日本のセダン
正直なところ日系ブランドのセダンが売れる理由は日本にいると分かりにくい。
そこで現地に住み自動車事情に詳しい何人かの人に尋ねてみたところ、「『実用的でコスパが高い。セダンを買うなら日本車を買っておけば間違いない。安心できる』という感覚が消費者にある」という共通する返事が返ってきた。
アメリカンブランドと日系ブランドでは、セダンに対する消費者のイメージが大きく違うというのだ。
ただ、日系のなかでもトヨタやホンダに比べると日産車はランキングの順位が低いのが興味深いところ。
実は、日産のセダンは日系ブランドの中では例外的にレンタカー供給が多いのだ。
その結果何が起きるかといえば、アメリカ車のセダンと同じようにリセールバリューが下がる。
だから新車が売れない。売ろうとすると販売奨励金を出して値引きせざるを得ないので、利益率が下がる。そのループなのである。
これはまさに、日産が本来ならドル箱であるはずの北米市場で抱えている悩みそのものだ。
数ばかりを求めた結果として値引きの拡大などでブランドイメージ低下を招き、大きな利益をあげられないのである。
開き直りとしたたかさ 今後はSUVで儲ける
ところで、アメリカンブランドがセダンを縮小しているのには、もう1つの側面があるといわれている。
それは「メーカーがSUVを売りたがっている」ということだ。
たとえばフォードの2018年の表明は、アメリカにおいてセダンだけでなくコンパクトカーのハッチバックも販売を縮小するとしていた。
それから3年が経過した今、すでに同社のアメリカにおけるラインナップに、ハッチバックは存在しない。
フィエスタもフォーカスも消えてしまったのだ。
では人々はそのかわりに何を買うのか?
同クラスのクロスオーバーSUVということになるだろう。
一般的にハッチバックに比べると、クラスは同じでもSUVのほうが販売価格は高く、そのぶんメーカーの利益率も高いといえる。
当然メーカーとしてはセダンやハッチバックよりもSUVを売りたくなる。
だから北米ブランドは、セダンやハッチバックをやめる一方でSUVの選択肢を増やし、消費者がより利益の出るクルマを購入するように導いている……と取れなくもない。
もちろん、SUVの流行という世の中の流れを受けての誘導ではあるのだが。
「セダンではどうせ日本車に勝てない。だったら利益率の高いSUVを買わせる」
フォードをはじめとする北米ブランドがセダンやハッチバックをやめてSUVのラインナップを強化する背景にはそんな開き直りとしたたかな戦略があるようだ。
SUVを選んでいるのは消費者自身である。しかし、もしかすると、消費者は気が付かない、意識しないうちに自動車メーカーによってSUVへ導かれている可能性も否定はできない。
ただし、これはあくまで日本ではなくアメリカ市場の話なのでそこは誤解なきよう。
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