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ロペス代役起用の裏にあった“リザーブ”宮田莉朋への配慮。経緯とテストデーでの走行予定を中嶋一貴副会長が説明

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ロペス代役起用の裏にあった“リザーブ”宮田莉朋への配慮。経緯とテストデーでの走行予定を中嶋一貴副会長が説明

 6月8日、WEC世界耐久選手権第4戦/第92回ル・マン24時間レースは、市内での公開車検2日目を迎えた。この日はポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ、フェラーリAFコルセ、そしてトヨタGAZOO Racingというハイパーカークラスの中核チームが、ル・マン市内のリパブリック広場に姿を現したが、なかでも注目を浴びていたのが、前日に急遽エントリー変更が発表されたトヨタだった。

 7号車GR010ハイブリッドのマイク・コンウェイがサイクリング中の事故により骨折。ル・マンへの出場が叶わなくなり、代わって昨年まで同車をドライブ、今季はアコーディスASPチームのレクサスRC F GT3でWEC・LMGT3クラスに出場しているホセ・マリア・ロペスが急遽代役を務めることが、前日の7日にアナウンスされていた。

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■「『莉朋か、ホセか』という議論はありました」

 8日の昼前に車検場に姿を見せた、中嶋一貴TGR-E(トヨタGAZOO Racing・ヨーロッパ)副会長に話を聞くと、この2日間はドライバー変更に関する業務で多忙を極めていたという。

「木曜日(7日)の午後くらいにマイクが自転車で怪我をしてしまった、という話が来まして。まずはマイクがちゃんと治療できるようにということが優先でしたが、テストデーにも、レースウイークにも間に合わないことは明白でしたので、そこから代役をどうするか、という議論が始まりました」と一貴副会長は説明する。

 今季から、トヨタのリザーブドライバーは宮田莉朋が務めている。ル・マンには、ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズへの参戦チームであるクール・レーシングからLMP2クラスに参戦することにはなっているものの、このようにハイパーカーで代役が必要な状況では、宮田の起用も考慮されたものと推測できる。

 これについて一貴副会長は、「もちろん、莉朋もリザーブドライバーということで、『莉朋がいいのか、ホセがいいのか』という議論はありました」と明かした。「そのなかで、最終的にはチーム代表である(小林)可夢偉と、チームオーナーであるモリゾウさん(豊田章男トヨタ自動車会長)の間でコミュニケーションをとっていただいて」決定したのだという。

 宮田はこれまで、GR010ハイブリッドのテストに2回参加しているが、サルト・サーキットの走行経験はない。加えて、参加したテストでは天候があまり良くなかったという。

「何よりも大事なのは、莉朋にとって機会になるのか、リスクになるのかというところです」と一貴副会長は、宮田の将来を大事にしたうえでの決断だったことを示唆した。

「テストでの天候もあり、チームとして充分な準備をさせてあげられなかった。そういった状況を鑑みて、経験値があるホセで行くべきではないか、ということです。もちろん、莉朋にはまだまだチャンスがありますし、今回LMP2で戦えることは本人にとってもいい機会ですので、しっかりと経験を積んだうえでもっと成長してほしい。その部分はモリゾウさんからも直接、莉朋への言葉を頂いたうえで、ホセで行くということが決まりました」

 また、前日のエントリーリスト公開で明らかになったように、6月9日のル・マンのテストデーでは、宮田は7号車と8号車、トヨタの2台のドライバーとしても登録されている。7日の取材時に宮田本人は、乗車スケジュールについては「分からない」とコメントしていたが、一貴副会長は宮田が実際にドライブするランプランがあることを認めている。

「マイクの代役としてはホセが乗ることになりましたけど、莉朋がリザーブであることに変わりはありません。まだこれから(レースウイークまでに)何か起こるか分からないという部分と、莉朋自身の経験という意味も含めて、明日は8号車で午前中にトータル5周ほどをしてもらう予定になっています」

「そこはしっかりとやってもらいたいと思いつつ、そのあとは何もなく、LMP2に集中できることを願っています。クール・レーシングは体制的にもかなり競争力がありますし、もうシンプルに、チームと一緒になって優勝を目指してやってもらいたい。それが一番、彼にとってはいい経験になるのかなと思います」

■ジャック・ホークワース代役起用の裏側

 ハイパーカーにおける代役はオーナーとチーム代表が主導して決定した一方で、ロペスが抜けることになったLMGT3のアコーディスASPのシートをどうするかについては、一貴副会長が中心に奔走することとなったようだ。

 複数のドライバー候補が名前に上がるなかで、最終的にはIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のGTDプロクラスをRC F GT3で制したジャック・ホークスワースが、ASPにおけるロペスの代役に決定した。

「全体のなかで一番乗せたいドライバーであり、かつトヨタファミリーでもあるので、ジャックで行きたいという気持ちがありましたが、彼の予定も若干トリッキーなところもあって……。今週はGT4で、服部(茂章)さんのところでレースに出る予定でしたから、服部さん、TRD-USA含めて、いろいろな方にご迷惑をかけ、お願いをしてしまいながらも、グローバルのTGRとして連携してジャックが乗れることになったので、感謝したいです」

 このなかでは、昨年IMSAタイトルをホークスワースとともに獲得し、その後WECルーキーテストでGR010ハイブリッドをドライブ、最近では全日本スーパーフォーミュラ選手権のオートポリス戦に急遽出場したベン・バーニコートも候補には浮上したようだが、バーニコートは今回のル・マンではAFコルセからLMP2クラスに出場するとあり、代役登用は叶わなかったものと推測される。

 なお、9日のル・マンの車検順はトヨタとアコーディスASPが連続するスケジュールとなっていた。メディアミックスゾーンに姿を見せた可夢偉チーム代表は自身の取材対応が終わると、ASPでロペスと組んで出場する予定だった木村武史のもとへと出向き、「ホセをお借りする形になってしまい、すみません」と丁寧に頭を下げていたのが印象的だった。

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