日本仕様の特別デザインが施されたヘルメットを着用し、WEC世界耐久選手権の第7戦富士を制したケビン・エストーレは、自身が搭乗する6号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)の強さと安定性が、シーズン終盤の第7戦でタイトルを争うトヨタにリスクを取らせ、それが最終的に日本のメーカーにとって“ホーム”での敗北に繋がったと考えている。
エストーレとチームを組むローレンス・ファントール、アンドレ・ロッテラーのトリオは日本での週末にシーズン2勝目を挙げ、ドライバーズランキングのリードを残り1レースでひっくり返すのが困難な35ポイントにまで拡げた。
トヨタ小林可夢偉が語る“ふたつの敗因”。衝撃の接触は「BoPによるパワーと重さの差が出た」/WEC富士
彼らの勝利は、今季2024年のチャンピオンシップ争いにおいて最大のライバルである7号車トヨタGR010ハイブリッド(TOYOTA GAZOO Racing)に小林可夢偉が乗り込んだレース終盤に、日本メーカーのクルマとマット・キャンベル駆る5号車ポルシェ963が接触し両車がリタイアに追い込まれるなど、アクション満載でサバイバルの様相を呈した戦いのなかで達成された。
6号車のトリオにとってマークすべきもうひとつのライバルだった50号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)は、とくにレース後半でペースに苦しみ9位に終わった。また、予選で惜しくもポールポジションを逃しながらフロントロウに並んだ8号車トヨタGR010ハイブリッド(TOYOTA GAZOO Racing)は、平川亮がブルーフラッグを遵守しなかったためレース終盤にドライブスルーペナルティを受け、3番手から10番手に後退。そのまま10位でフィニッシュしている。
「他人の不幸をあてるすることはできない」とエストーレは語った。
「今週末、フェラーリは後手に回っていたと思う。おそらく、彼らは本来出せるはずのスピードを出せていなかった」
「トヨタはいろいろなことを試したと思う。残り2時間半の時点で彼らは非常にアグレッシブで、周りとまったく異なる戦略をとった。(ニック・)デ・フリースはダブルスティントでコースに留まり、非常に短いスティントで燃料も少なく、有利に立ち回った」
「しかし、セーフティカー(SC)が入ったことで彼らはトラックポジションを大きく失い、挽回するのが難しくなったと思う。さらに、集団の中にいるとリスクが増す」
「いいことだ。僕たちは彼らを(リングの)コーナーに追い込んだんだ。我々はつねに(ライバルの)前に立ち、彼らが僕たちを打ち負かすために何かを試みるように仕向けた」
「今日、彼らはトライし、それが彼らを打ち負かした。これがレースのカギだったと思う」
「僕たちは彼らをその位置に導くために良い仕事をしたと思う。彼らはアンラッキーだったんだ」
「これは我々が今年、チームとして非常にうまくやってきたことだ。結局、文字どおり完璧な一日だった」
スタートを担当したファントールからステアリングを受け継いだロッテラーは、レースの最初のバーチャルセーフティカー(VSC)期間中にピットインしてチャンスをものにしたニクラス・ニールセンの50号車フェラーリに一時的にリードを奪われたが、最終的には自分のスティントで499Pの一台を抜きアドバンテージを拡げた。
ロッテラーは、「このチームと僕たちの素晴らしいところは、与えられた状況でベストを尽くせることだ」と語った。
「我々のエンジニアと全員が、あらゆるシナリオを想定し、適切な選択をするための準備を整えている。我々はシーズンを通してこれを見てきた。後方から戦わなければならなかったときでさえもだ。これが僕たちの強さを示している」
「そして、良いクルマがあれば勝つこともできるんだ」
■ポルシェ6号車のトリオがワールドチャンピンに「王手」
6号車をドライブするエストーレ、ファントール、ロッテラーの3人が自力でドライバーズチャンピオンを獲得するには、11月にバーレーンで行われるシーズン最終戦で8位以上でフィニッシュするだけでよい。
彼らの今季のもっとも悪いリザルトが2週間前にアメリカ・テキサス州のサーキット・オブ・ジ・アメリカズで行われた第6戦『ローンスター・ル・マン』での6位だったことを考えると、超えるべきハードルは低いように思われる。
しかしエストーレは「これは数学だ。自信を持つことはできない」と述べる。
「なぜなら、我々がひどいレースをして、他のチームが今日の僕たちのように完璧なレースをすれば、彼らが勝つ可能性があるからだ」
「一年を通してやってきたことをやり続ければ、勝機は充分にある。何もリスクを負う必要はないと確信できる。反対に他のチームが本当に多くのリスクを負わなければならないなか、我々は自分たちの仕事をするだけだ」
「僕たちは間違いなく非常に良い位置にいるが、数字上、他のチームにもチャンスがある限り、我々は地に足をつけていなければならないと思う」
「昨年のバーレーンは僕たちにとって厳しいものだった。今年はもっといい位置にいられると思う」
「今年一年やってきたように僕たちは非常に堅実な仕事をし、他の人たちがやるようなクレイジーなリスクは冒さず、確実にポイントを獲得できるよう良いマシンを手に入れるようにするつもりだ」
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みんなのコメント
BoP以前のミスが多すぎる。
仮にBoPで追い詰められていたとしてもその状況で出来る最高の結果をミス無く出せるようにすればトヨタはおのずとランキングトップになれるはず。