カタールで3月2日に開催される2024年シーズンのWEC(世界耐久選手権)。開幕戦を前にした事前テスト“プロローグ”では、王者トヨタの2台が苦戦を強いられた。テスト全体ではハイパーカークラスで13番手と15番手。7号車のドライバーでチーム代表も兼任する小林可夢偉も、来たるレースウィークに向けて楽観的な状況ではないと認めている。
小林によると、トヨタ勢はタイヤのグレイニング(ささくれ摩耗)に苦しめられているという。ルサイル・インターナショナル・サーキットは昨年に再舗装されており、路面がスムーズになっている。
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「フラストレーションの溜まる数日間になりました。僕たちは少し苦戦しています」と小林は言う。
「僕たちは間違いなくタイヤに厳しいです。タイヤがマネジメントできないんです」
「ちょっと迷子になっているように思います。走るたびに違う走りをしていますし、アマチュアのようなドライビングになってしまっているのでチームに申し訳ないです」
「ハードタイヤでさえグレイニングが出ています。一度無理なドライブをするとタイヤが終わってしまうくらい、音をあげるのが早いです」
昨年はドライバーズタイトルとマニュファクチャラーズタイトルを獲得したトヨタだが、小林はカタールに向けては控えめな姿勢で、「僕たちは夢を見ているわけではありません」と語った。
また、トヨタが苦しんでいるグレイニングについて、チームでテクニカルディレクターを務めるデビッド・フローリーは、先週発表されたWECの性能調整(BoP)によってトヨタGR010がハイパーカークラス最重量となったことが問題の根底にあるのではないかと語った。
「我々が考えているのは、このコースにおいて重量が与える影響が過小評価されているのではないかということだ」
「それによって、タイヤの作動領域に対処するのが容易ではなくなっている。コースの表面も、最近行なわれたF1のレースに合わせて再舗装されている」
フローリーは、カタールにおける重量増の影響は「直線的ではない」として、ハイパーカークラスに参戦する9メーカーのマシンには重量面で大きな格差があると指摘する。つまり、トヨタのマシンは最低重量が1080kgから1089kgに増やされたが、これによりある種の転換点に達した可能性がある。
ルサイルの再舗装されたスムーズな路面については各チームが「低エネルギー」と表現しているが、タイヤがアスファルトの上を滑ることでグレイニングが起き、重量の重いトヨタはさらにそれが顕著になっているものと思われる。
ただフローリーは開幕戦に向けてBoPの変更を要求することはなかった。
「今はBoPについて議論している時ではなく、今あるものでベストを尽くす時だ」
2024年からシリーズに導入される性能調整の新システムについて、現時点でWECのオーガナイザーやFIA、ACO(フランス西部自動車クラブ)からの公式な説明がないが、フローリーによると、プロローグから開幕戦までに行なわれた変更は、FIAとACOからメーカー側に説明された「プロセスに沿うものではない」という。
ちなみに、1089kgで戦うトヨタ以外のメーカーのマシン最低重量は、フェラーリ499Pが1075kg、ポルシェ963が1048kg、プジョー9X8が1030kg、キャデラック V-Series.Rが1032kgとなっている。
プロローグで速さを見せたのは最軽量の部類に入るポルシェで、全4セッションでトップに。最速タイムはフレデリック・マコヴィッキィが記録した1分40秒404だ。一方でトヨタ勢は、7号車のベストタイムがニック・デ・フリーズの記録した1分41秒789で、8号車のベストタイムがブレンドン・ハートレーの記録した1分42秒097にとどまっている。
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