10月21日から23日にかけて、スペイン北東部のサロウを中心にWRC世界ラリー選手権第12戦ラリー・スペインが開催され、日本人WRCドライバーの勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)は総合7位入賞。同イベント5度目の出場で初完走を果たした。そんな勝田がラリー後のオンライン取材会に登場し、ラリージャパン前最後のラウンドとなった今戦を振りかえった。
勝田は今季3戦目のピュア・ターマック(舗装路)ラリーを、次戦のジャパンに向けて「ターマックのフィーリングを得るという意味で非常に重要」な一戦と位置づけて臨み、序盤は苦戦しタイムを失いながらもラリー後半にはペースを改善。終盤には優勝を争うクルーたちと大差ないレベルまで自身のパフォーマンスに押し上げるに至った。
勝田貴元、序盤の遅れで7位も“良い流れ”を得て日本へ「実りある週末になった」/WRCスペイン
このラリー序盤でのタイムロスについて、勝田はインカットによる影響とタイヤのアクシデントを要因に挙げた。通常、ターマックラリーではコーナーのカット部で道路上にグラベルが撒かれるかたちで徐々に路面が汚れていくため、出走順が遅いほどグリップが得られにくくなり不利となる。
勝田は今回、初日を5番手から出走したが、このインカットによるステージの汚れに対して「スピードを落としすぎてしまった」ことで上位とのタイム差が拡がってしまった。原因については「グラベルクルーとのすり合わせがうまくできていなかった」という。グラベルクルーとは、選手の走行前にステージを走りコース状況を伝えるクルーのことだ。
その後、勝田はグラベルクルーを務めるユホ・ハンニネンとすぐに連絡をとり問題を解決。SS3以降のペースアップにつなげた。しかし、午後のSS7で勝田/アーロン・ジョンストン組はタイヤのアクシデントに見舞われる。
同SSでハイブリッドのトラブルも抱えていた勝田は、ハイブリッドブーストが使えない状態で出走。そんななかステージ終盤のハイスピード・セクションでタイヤにダメージを負い、30秒以上のタイムを失うこととなった。
「インカットがある左コーナーで左フロントタイヤがパンクしてしまい、その次の右コーナーで完全にビートが落ち、(ステージの)残りをホイールで走行するかたちになりました」と当時の状況を説明した勝田。
「最後の3、4kmだったので距離はそんなに長くなかったのですが、ハイスピード・セクションだったということもあり、そこで結構タイム差がついてしまいました」
■合計4台のラリー1カーが同じコーナーでパンク
勝田車のタイヤがパンクした左コーナーではチームメイトのエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)が同じようにタイヤを壊し、スペイン出身のベテランドライバー、ダニ・ソルド(ヒョンデi20 Nラリー1)も同じポイントで左フロントをパンクさせてしまった。
さらに、SS7と同じステージで行われた午前のSS3では、やはり同じコーナーでピエール-ルイ・ルーベ(フォード・プーマ・ラリー1)がタイヤにダメージを負ってタイムを失った。
同一箇所で相次いだタイヤトラブルの原因について、勝田は次のように語った。
「(パンクした)タイヤの切れ目を確認すると岩というよりは、どちらかといえば金属系の……刃物とまでは言わないですが、スパッときれいに切れていたので、おそらくイン側に金属系のなにか突起物があったのかなと思っています」
「そこはレッキ(事前のコース下見)で視認できていなかったので、実際にそこに何があったのかはわからないのですが、タイヤの切れ方を見る限り一気に穴が開いて空気が抜けたような感じでした」
ラリーはサーキットで行われるレースとは異なり、競技区間が合計数百キロに及ぶ。そのため、より詳細なペースノートを作ろうにも限度があり大きな石や岩などはともかく、今回のように小さな突起物を見つけるのは至難の業だ。勝田だけでなく他の3選手がまったく同じ場所でパンクしてしまったことからも、彼のペースノートに明らかな不備があったとは言い難い。それを踏まえたうえで、勝田は今後に向けた対策のひとつを挙げている。
「非常に残念でしたけど、これもひとつの経験です。インカットがたくさんあるところでは、なかなかそういった小さな物を見つけるのは難しい部分もありますが、より注意して見る必要があります」
「また、午前中にある選手がパンクしていたら、その原因を探り自分たちが同じところでパンクしないようにするというのも非常に大事なことだと思うので、そういったところをもう少し気をつけるべきだと感じました」
なお、幸いなことに(?)勝田にとって最初のWRC母国イベントとなる今季最終戦『フォーラムエイト・ラリージャパン2022』は、全体的にインカットできるコーナーが少ないものとみられている。
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