今をときめくSUV、誕生の瞬間
text:Takuo Yoshida(吉田拓生)
photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)スポーツカーの起源を言い当てることは難しいが、今をときめくクロスオーバーSUVの起源ならば話は簡単だ。
【画像】取材した初代レンジローバー/最新のレンジローバー 共通点は?【比べる】 全74枚
現在では「クラシック」という称号付きで呼ばれる初代レンジローバー(1970年デビュー)こそがその元祖であることは誰の目にも明らかだからである。
元祖クロスオーバーSUVこと初代レンジローバーのベースとなったのはタフで泥っぽいランドローバー・シリーズであり、終戦直後の1948年に誕生した初代ランドローバーのヒントとなったのは、軍用のウィリス・ジープであることもはっきりしている。
高名な自動車エンジニアであるチャールズ・スペンサー・キングをはじめとする開発陣が考えたレンジローバーのコンセプトは以下のようなものだった。
イギリスのカントリーサイドに住む貴族が、自分の領地(小高い丘や泥っぽい林道含む)を駆け回った後、モーターウェイを飛ばしてロンドンのホテル前に横づけできる。
従来のランドローバーでは、カントリーサイドの用事は完璧にこなせても、高速道路を飛ばして走るとか都会的な風景に馴染むといったことはできなかったのである。
このために初代レンジローバーはスタイリングとインテリアのデザインを洗練させ、対候性や快適性を高め、そしてフルタイム4輪駆動の機構やサスペンションシステムに最新のものが盛り込まれたのである。
デザインより機能 生まれた芸術品
初代レンジローバーにはデザイナーがいない、というのはよく語られる逸話である。
高級感を出そうとかカッコをつけようというマーケティング的な目論みなしに、エンジニアが徹底的に機能性を追求していった結果として、直線基調のシンプルだが品格のあるスタイリングが生まれたといわれているからである。
「砂漠のロールス・ロイス」などと呼ばれ高級車にカテゴライズされるレンジローバーだが、初代のスタイリングには確かに色気のようなものは見当たらない。
ヘッドランプは1960年代の常識だった丸目2灯だし、低いウェストラインとガラス面積が大きなキャビンは広い視界を確保するため必然的にそういうかたちになっているだけ。
アイコンにもなっている上下2分割のテールゲートもルーフ側に重量物をぶら下げるほどの強度を持たせたくないための副産物だった。
しかも誕生当初は、ボディ構造を極力シンプルにしたいというエンジニアの思想から、2ドアモデルしか用意されなかったほどなのである。
だがこうしたミニマリズムを追求した設計思想が、逆にデザイン面においても高く評価される結果にもなっている。
初代レンジローバーは、フランスのルーブル美術館に自動車として初めて展示されるなど、高い走破性やプレミアム感のみならず、芸術的な評価も得ているのである。
バンデンプラはなぜ究極なのか
現行で4代目となるレンジローバーだが、フルモデルチェンジの間隔は初代だけが異常なほど長い。1970年のデビューから1996年の最終型まで実に26年間も作り続けられているのである。
その理由は、デザインをはじめとする何かを大きく変える必要がないほど完璧に仕上げられていたからなのだと思う。
とはいえ70年代半ばのオイルショックや80年代半ばまで続いた英国自動車産業の不振の影響も無視できない。
このため数あるクラシック・レンジローバーの中でも、中古車市場で人気が高いのは、初期の2ドアモデルか比較的後期のモデルということになる。
今回スポットを当てるバンデンプラは1992年に登場した最上級モデルで、クロスオーバーSUVとして初のエアサスとロングホイールベースのボディを与えられた、まさに究極のクラシック・レンジローバーである。
現在のプレミアム・クロスオーバーSUVはエアサスによって車高やドライバビリティを可変させることが当たり前になっている。
またベントレーやロールス・ロイスといった古豪までもがクロスオーバーSUVの世界に参入を果たす時代でもある。
そういった流行の、まさに原流域にあるモデルこそ、伝統とハイテクをほどよくミックスしたレンジローバー・バンデンプラというわけなのである。
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