第108回インディアナポリス500マイルレースを2日後に控えた金曜のカーブデイ。パドックの専らの話題は、決勝レースを控える26日(日)の天気だった。最大の関心事は、降水確率の上がった日曜に果たして決勝レースができるのかどうか。降水確率の高かったこのカーブデイでさえ、日差しが覗いて暑い日になっている。場内は早朝から多くのファンが駆けつけて、インディ500らしい活気に溢れてきた。
決勝までは、これからまだ2日間の猶予がある。日曜の天気が好転しないとも限らない。
琢磨の予選2日目は10番手に。空力を“2ステップ”変更も「コンサバティブに行き過ぎた」と悔やむ/インディ500
カーブデイのプラクティス開始前、ブリックヤード上ではインディ500優勝経験者にブルーのジャケットを授与して、ボルグワーナートロフィーとともに記念撮影が行われた。ロジャー・ペンスキーがひとりひとりと握手をし、レジェンドドライバーたちは順に整列を始める。
A.J.フォイト、リック・メアーズ、ジョニー・ラザフォードなどのレジェンドたちが次々と並び、さらにエリオ・カストロネベス、ジョゼフ・ニューガーデンなど現役のドライバーたちも姿を現す。インディ500で2勝を上げた佐藤琢磨は、エマーソン・フィッティパルディとマリオ・アンドレッティに挟まれて座るという栄誉だった。唯一の日本人ウイナーとして誇らしい瞬間であった。
琢磨はフォトセッションの後、マシンに乗る身支度をして、ピットに現れた。日曜の天気がどうであろうと、チームとドライバーにとってはこのカーブデイが最後の走行時間だ。貴重なプラクティスとなる。
インディ500ウィーク初日のプラクティスから今日のカーブデイまで、悪天候が続いたこともあって、走行時間が限られたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの琢磨は「過去15年のなかで、一番走行時間が少なかった」と言っていたが、決勝に向けてはこのカーブデイを通してマシンをなんとか仕上げるしかない。
11時から2時間のプラクティスが予定されていたが、琢磨は開始からパック(集団)に混ざることなく、最初はチェック走行をして余裕を持ってセッションを開始した。パックに入ってからも急いでペースを上げる様子もなく、淡々と走り続ける。途中ピットに戻る時には、フロントタイヤをロックさせて、あわや他のマシンに追突しそうになる場面もあった。
その後琢磨も75号車のチェックをしてトラックに戻り、ペースを上げはじめると222mph台をマーク。以降は20番手前後のタイムで周回を続け、セッション終盤にはピットストップの練習も始まり、イン&アウトを繰り返す。
最後はニュータイヤとトウでスピードも上がり、224.630mphをマーク。総合14番手にポジションを上げて最後のプラクティスを終えた。
ファイナルプラクティスは決勝を見据えた走行のはずだが、ラップモニターを見上げると予選で苦戦したチップ・ガナッシ・レーシングのスコット・ディクソンがトップとなり、それにエリオ・カストロネベス(メイヤー・シャンク・レーシング)が続く。
予選を32番手ギリギリで通過したマーカス・エリクソン(アンドレッティ・グローバル)が6番手にいるかと思えば、予選でフロントロウを独占したチーム・ペンスキーの3台は、スコット・マクラフランが20番手、ウィル・パワーが21番手、ジョゼフ・ニューガーデンが32番手と低迷した様子だ。
予選と決勝を想定した走行で、まったくポジションが入れ替わるのがインディ500らしい所だが、33台それぞれの思惑を抱えたままに、すべてのプラクティスは終了した。
決勝を迎えるのみとなった琢磨は「今日はブレーキのトラブルが出てしまい、決勝に向けて対策をしなくてはいけないですね。クルマの仕上がりは、最初雨で全然走れなくて10%くらいだったのが、今日を走り終えた段階では60点か、良くて70点。(優勝した)2017年や2020年と比べると全然満足できていない。あともう1日欲しかったです」とセッションを振り返る。
走行開始から決勝まで2週間の時間がありながら、すべてをうまく積み上げるのが難しいインディ500で、0から始まったクルマをここまで仕上げて4列目10番手のグリッドからのグリッドからレースをする琢磨。
彼の理想のレース展開はどのようなものか。
「後ろに沈んでしまうとなかなか抜いて上がってくるのは難しくなるでしょう。1周目からいきなり無理はしないですが、チャンスがあればなるべく早く前に出たいですね。雨の予報もあってレースが途中でイエローが出たりする可能性もありますから…。」
度重なる雨により、100%の手応えには仕上がらなかったクルマ。昨年に比べれば不安な要素も多いが、琢磨は26日に15回目のインディ500に臨む。ブルージャケットを着たレジェンドドライバーとして。
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