6月9日、フランスのサルト・サーキットでWEC世界耐久選手権第4戦ル・マン24時間レースを前にした『テストデー』のセッションが行われた。今回は8名の日本人がエントリーしているが、この日がサルト・サーキット初走行になったドライバーがふたりいる。ひとりはハイパーカーとLMP2でテストデーにWエントリーした宮田莉朋、もうひとりはLMGT3クラスで95号車マクラーレン720S GT3 Evoを駆る佐藤万璃音だ。
佐藤はシングルシーターでFIA F2までステップアップしたのち、2023年からスポーツカーへとキャリアを転向。強豪ユナイテッド・オートスポーツからELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズのLMP2クラスに出場すると、シリーズ2位という好成績を収めた。
テストデー午後はポルシェ963の“ワン・ツー・フォー”。3番手に8号車トヨタが食い込む/ル・マン24時間
今季はユナイテッドからELMS・LMP2クラスへの参戦を継続するとともに、新たにWECのLMGT3クラスにもマクラーレンのGT3車両を駆って出場、世界を転戦している。WECレギュラーのニコ・ピノに加え、今回のル・マンではブロンズドライバーに日本の濱口弘を迎え、佐藤自身初めての24時間耐久レースに出場することになるが、計6時間に及ぶテストデーのセッションでは、どんな収穫があったのだろうか。セッション直後の佐藤に話を聞いた。
■マクラーレンの強み
佐藤はコースの第一印象について「まだ明るい時間しかドライブしていないのでなんとも言えないですが、わりと自分は好きな部類のコースだと思います」と話す。当然シミュレーターなどで準備を重ねてきているが、実走すると印象が異なる面もあったようだ。
「意外とストレートは短く感じますね。忙しいというわけではないですが、思っていたより暇じゃない。シミュレーターやっている方が、1周が長く感じます」
ポルシェコーナーを中心とした第3セクターはテクニカルな区間として知られるが、これまでフォーミュラやLMP2など、相対的にスピードレンジの高いクルマでレースをしてきた経験も役立っている様子。
「GT3のスピードレンジだと『壁がすごい勢いで迫ってくる』という感じではありませんが、反対にクルマのロールが大きかったり、他のカテゴリーに比べるとダウンフォースが欠けていたりもするので、チャレンジングな部分はあります。ただ、マクラーレンはそのあたりが得意なクルマで、強さがあると思うので、結構安心して走れています」
また、24時間レースは初めてながら、昨年のELMSアラゴンではナイトセッションを経験している佐藤。チームメイトからは「ル・マンよりも(アラゴンの方が)全然暗い」と言われたこともあり、サルト・サーキットの夜の走行に対しては、大きな心配はしていないようだ。このあたりは12日、13日の夜のプラクティスで、確認していくことになりそうだ。
プロドライバーとして、クルマのセットアップなども引っ張る立場にある佐藤だが、テストデーは比較的順調に作業が進んだ様子。
「朝は僕から走り出したのですが、3周目のラップがわりと長いこと(タイミングモニターの)上の方に残っていたので、一番コースが汚いときに走り出したわりには、悪くなかったのかなと思います。セットアップも、いまのところ走り出しから大きく変わっているわけでもないので、チームがここまでシミュレーションなどの仕事をしてくれたおかげで、最初からドライビングに集中できていると思います」
今回は3人中ふたりが日本人ドライバーという編成になる。「ブロンズのドライバーと組んでレースをやるのは今年が初めて」という佐藤だが、濱口との仕事については「GTに関しては僕よりも経験がありますし、すごくレベルの高いブロンズドライバーなので、いまのところ順調に進んでいる」という。
午後のセッションでは、ユナイテッドの2台のマクラーレンは23台中5~6番手と、相対的に見ても好調なテストデーになったように見えた。しかし佐藤は「まだ周りがどれくらい(ポテンシャルを)持っているか分からないのでなんとも言えませんが、レースまで自分たちの仕事に集中してやるしかない」と慎重に構えている。
実際パドックではテストデーのタイムについて、「LMGTEからLMGT3になったとはいえ、遅すぎるのでは」という声が複数聞こえてきている。レースウイークのプラクティス、予選、決勝と、このタイムと勢力図がどう変動していくかも、ひとつの注目点となりそうだ。
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