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【MotoGP】グレシーニ移籍のマルケス、輝きを取り戻しドゥカティ陣営を”破壊”するのか?「僕はウイナーであり、キラーなんだ」

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【MotoGP】グレシーニ移籍のマルケス、輝きを取り戻しドゥカティ陣営を”破壊”するのか?「僕はウイナーであり、キラーなんだ」

 今季限りでレプソル・ホンダを離れ、ドゥカティのサテライトチームであるグレシーニに移籍するマルク・マルケス。今季のMotoGP最終戦バレンシアGPを前に、彼がその胸中を語った。

「僕は常にホンダを最大限リスペクトしている。今はホンダとトップに戻ることだけを考えているよ。もちろん、それが無理だ、そのための道具が無いという風に感じたなら、僕にとって最善のモノを探そうとするだろう。これは既に彼らにも言っていることだ」

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 2022年最終戦バレンシアGPで、ホンダが苦戦する中でその改善はできないのか? そして2024年以降のキャリアについて既に何か考えを持っているのかと尋ねられ、マルク・マルケスはAutosport/motorsport.comにそう答えていた。

 そして2023年10月、マルケスはホンダを離脱し、2024年からドゥカティ陣営のグレシーニへと移籍すること発表した。ホンダと長年輝かしい結果を残してきたマルケスが、11年間の関係を終わらせることを選んだのだ。

 この発表は非常に大きな衝撃を界隈に与えただろう。しかしマルケスがホンダを離れるかもしれない、という警告は2023年シーズンが始まったときから発せられていた。

 開幕戦ポルトガルGPではマルケスはポールポジションを獲得している。しかし2023年型マシンの力では、現在のMotoGPを支配するヨーロッパメーカーに対抗できるとは考えていなかった。実際、シーズンをほぼ終えた今、ホンダはコンストラクターズランキング最下位で、タイトルを獲得したドゥカティには4倍近い差を付けられている。

 途中怪我があったとはいえ、基本的には2020年の大怪我の影響から脱却したマルケスも、ここまでの19戦の中で表彰台は雨の日本GPにおける3位が1回のみで、ポイントも89ポイントに留まっている。さらに27回のクラッシュを喫するなど、マシンの厳しさはここにも表れている。

 MotoGPクラス昇格以来、常に勝利を争って来たマルケスが、ここまでの苦戦を強いられたことは無い。そのため契約を早期に終了させてまでホンダを離脱するという彼の判断を理解することは難しくないだろう。しかし、その決断自体はマルケスにとって全く簡単なものではなかったという。

「ホンダとの最後のレースを迎えることになるというのは、今になっても理解することも、実感することも難しいよ。だけど、少なくとも今はこれが最後なんだ」

 先日行なわれた第19戦カタールGPでマルケスはそう語った。

「バレンシアGPがとても難しく、そしてエモーショナルな週末になるだろうというのは確かだ。現時点ではあまり実感は無いし、コースで100%の力を発揮することだけに集中している。でも、凄く妙なバレンシアGPになるだろうし、(レース後の)火曜のテストではガレージでホンダ以外のバイクに乗るのに、とても変な感じがあるだろうね」

 マルケスが語るように、彼はポストシーズンテストでドゥカティ・デスモセディチGPを走らせる許可を、ホンダから得ていることが分かっている。かつてバレンティーノ・ロッシがホンダからヤマハへ移籍した際、テストを許さなかった時とは大きく異なっている。

 マルケスは契約を早期に終了させてホンダを去る選択を“Win-Win”だと表現している。最もホンダのマシンからパフォーマンスを引き出せるはずのライダーが、チームメンバーと離れ離れになってでも離脱を選んだことを“Win-Win”と呼ぶ事自体が、彼がホンダをどう考えているかを示すものだと言えるだろう。

「チャンピオンシップをリードしているマシンに乗り換え、再び競争力を感じられるようにするという目標を達成しようと思っている」

「競争力を感じるということは、勝つということではない。より快適に走り、いくつかのレースでトップのポジションを争うということを意味する」

「現実問題として、彼ら(ホンダ)が僕に支払っていた予算はすべてマシンに使われる。それも重要なことだ。僕にとって、ここにいてバイクに乗り、給料をもらってプレッシャーを感じないことが快適だった。でも今は、彼らが(僕に支払っていた)すべてをマシンに投資してくれることが、プロジェクトにとってベストだと信じている。ホンダはホンダだ。僕がいてもいなくても、ホンダはトップに返り咲くだろう。だから、彼らならできると信じている」

■僕はウイナーでありキラー

 レーサーは一般的にエゴイスティックなモノだが、ホンダの上位復帰に向けた見通しについて語るマルケスの声には誠実さがある。今回の移籍は純粋にもう一度バイクを楽しむためだと繰り返し述べている点にも誠実さが感じられる。

 特に彼は2020年のクラッシュの後、自分自身のパフォーマンスへの疑念が頭のどこかに残っており、それを払拭したがっているのだ。

 あのクラッシュがなければ、今頃ホンダは苦戦していなかったと思うかと聞かれたマルケスは、それが一因となったことを認めた一方で、その時点ですでにホンダが苦境に立たされていたことを強調した。

「もちろん、2020年のヘレスで僕のキャリアのすべてが変わったし、そしてホンダの結果もその帰結だった」

「だけど、今のホンダの状況に責任があるのだろうか。(ダニ)ペドロサや(ホルヘ)ロレンソ、2020年には僕の弟(アレックス・マルケス)、それからポル・エスパルガロ、そしてもうひとりのワールドチャンピオンであるジョアン・ミルのように、ガレージの反対側に多くの強力なチームメイトがいたんだ」

「2021年、2022年でさえ、僕は常にホンダ陣営でランキングベストだった。そして今年もだ。僕は自分でコメントを出して、勝利のために可能な限りベストな方法でマシンを開発することを心がけている。しかし彼らには他にも強力なライダーがいる。例えばロレンソはドゥカティから移籍してきた。そしてホンダで引退した」

「ポル・エスパルガロも同じだった。彼はKTMから移籍してきて、前年はランキング4位だった。ジョアン・ミルとアレックス・リンスも、昨年はレースで勝っていたのに、ここ(ホンダ)に来て苦戦している。だから最終的には、ヘレスのあの日のことは忘れて、少し前に進みたい」

 2018年、ペドロサがMotoGPで初の未勝利シーズンに終わり引退を決めた一方で、マルケスはチームメイトに76ポイント差でタイトルを獲得。2018年にドゥカティで3勝を挙げたロレンソは、ホンダではトップ10にすら入れず、2年契約を途中解除し2019年に引退した。この年もマルケスが151ポイントの差をつけてチャンピオンに輝いた。

 マルケスが第2戦スペインGPで転倒し右上腕骨を骨折してシーズン全休となった2020年、ホンダは1982年にNS500で500ccクラス3勝を挙げて以来初めて、未勝利でシーズンを終了。2021年には怪我の影響が残る中でもマルケスが3勝し、チームメイトのエスパルガロに42ポイント差をつけた。

 2022年、マルケスは8レース欠場しながらもホンダ陣営最上位のランキング13位。マルケスは常に全力を尽くし、良くも悪くも彼が速さを発揮できるようバイクの開発が進められてきたと言える。そしてその時代が、ついに終わりを迎えるのだ。

 すべてが順調にいけば、マルケスは最終戦バレンシアGP後の11月28日(火)に、2023年仕様のドゥカティに乗ってテストを行なうことになる。

 マルケスがテストでトップに立ち、来季は1年落ちのマシンで圧倒的な強さを見せてドゥカティ陣営を完全に崩壊させ、7度目のMotoGPタイトルを獲得するのではないかという予想もされている。

 実際のところ、マルケスはホンダ残留を選ぶことが完璧な隠れ蓑になることを知っている。もし結果が良くなくても、バイクのせいにできる。グリッド上で最高のマシンに乗ることで、言い訳はできなくなる。

 ドゥカティへの移籍がうまくいかないことを恐れているのかという質問に対して、彼は率直に次のように答えた。

「もちろん可能性はあるし、疑問もある」

「決断した今でも、疑問はある。うまくいかない可能性もある。でも最終的には、いつか引退するときには静かに引退するつもりだ。そして、自分が感じたことをやったんだ」

「もし僕がホンダに残って、『もし成功しなかったら全員が責めるから(移籍は)しない』と内気なままだったら……もしそれが成功しなかったとしても、僕は受け入れるよ。批判も受け入れるし、それらすべてを受け入れる。でも、少なくとも僕は静かに引退するつもりだ」

「コンフォートゾーンはホンダにとどまることだったし、95%のライダーはホンダにとどまっただろう。なぜかって? 給料も高いし、プレッシャーもないし、これからマシンを開発していくんだ」

「(残るのは)簡単だった。でも僕はそうじゃない」

「僕はウイナーであり、キラーなんだ。トップを争うために、ベストを尽くすよ」

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