2種類のCEV補助金が追加
text:Yoichiro Watanabe(渡辺陽一郎)
editor:Taro Ueno(上野太朗)
2021年3月26日に、第3次補正予算のCEV(クリーンエネルギー自動車)補助金が明らかになった。受け付けも開始する。
今回のCEV補助金で注目されるのは、補助金が3種類に増えたことだ。自分の購入方法に合った補助金を選べる。
最も一般的なコースは、従来と同じ「クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金」になる。補助金交付額は従来と同じで、電気自動車の上限は40万円(給電機能を備えて場合は42万円)になる見通しだ。
新たに加わったのは「経済産業省補助金」と「環境省補助金」。「経済産業省補助金」は個人ユーザーのみが対象で、最大60万円が交付される。
そのためにクリーンエネルギー自動車とあわせて、電気自動車から自宅に電力を供給するV2H機器、電気自動車から家電製品に電力供給をおこなうV2L機器を同時購入することが条件だ。モニタリング調査への参加、災害時の自治体への協力も求められる。
「環境省補助金」は個人や企業を幅広く対象にしており、最大80万円が交付される。ソーラーシステムなどにより、自宅や事務所の電力を100%再生可能エネルギーで調達して、モニタリング調査への参加も条件になる。
テスラ・モデル3は大幅値下げ
このようにクリーンエネルギー自動車の補助金が多様化していく中で、電気自動車のテスラが2020年2月に大幅な値下げをおこなった。
テスラ・モデル3スタンダードレンジプラスは、後輪駆動を採用して、1回の充電によりWLTCモードで448kmを走行できる。以前の価格は511万円だったが、82万円値下げされて現在は429万円になった。
テスラ・モデル3ロングレンジは、前後にモーターを搭載する4WDだ。リチウムイオン電池にも余裕があり、1回の充電でWLTCモードにより580kmを走行できる。以前の価格は655万2000円だったが、今は156万2000円値下げされて499万円だ。
モデル3スタンダードレンジプラスは429万円だから、クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金を利用する場合、40万円が交付されて実質389万円で購入できる。メルセデスベンツAクラスのA180セダンと同等の出費ですむ。
自宅にソーラーシステムなどを設置して100%再生可能エネルギーを利用する場合は、環境省補助金の80万円が交付されるから、モデル3スタンダードレンジプラスは実質349万円で手に入る。ミニクーパーD 3ドアなどと同程度の出費だ。
経済産業省と環境省の補助金には条件が多く、利用できるユーザーは限られるが、電気自動車をさらに割安に買えるようになった。
テスラの値下げは、補助金の改定と歩調をあわせており、タイムリーなものとなった。
リーフより価格・航続距離でメリット
テスラ・モデル3は、日産リーフと比べても割安だ。
モデル3スタンダードレンジプラスの価格は値下げによって429万円になったので、リーフでは40kWhのリチウムイオン電池を搭載するGの418万9000円に近い。
リーフGが1回の充電で走行できる距離は、WLTCモードで322kmだ。モデル3スタンダードレンジプラスは448kmだから、リーフよりも126km長く走れる。
モデル3スタンダードレンジプラスは加速性能も優れ、停車状態から100km/hに達するまでの所要時間は5.6秒だ。ポルシェの電気自動車、タイカンの5.4秒に迫る。
モデル3ロングレンジの価格は499万円だから、リーフなら62kWhのリチウムイオン電池を搭載するeプラスGの499万8400円と同程度だ。
リーフeプラスGが1回の充電で走行できる距離はWLTCモードで458km、モデル3ロングレンジは580kmだから122km上まわる。
しかもモデル3ロングレンジは、前述のとおり4WDになり、停車状態から100km/hに達するまでの所要時間も4.4秒に短縮される。
ポルシェ・パナメーラ4 E-ハイブリッドと同等だ。これらの付加価値を考慮すると、モデル3ロングレンジは、リーフeプラスGに比べて買い得感が強い。
またモデル3ロングレンジは、スタンダードレンジプラスと比べても割安だ。1回の充電で走行できる距離が132km伸びて、加速性能も高まり、4WDだから走行安定性も向上する。これらの付加価値が70万円の上乗せで得られるからだ。
テスラの販売店によると「モデル3の中でもロングレンジは、約156万円の値下げになったこともあり、問い合わせが特に多い。優れた加速性能の効果もあり、従来のテスラとは違う新しいユーザーを獲得できている」という。
テスラサービスセンター全国4か所だが……
テスラのホームページによると、新車を販売しているテスラ・ストアは全国に4店舗となる。
車検、点検、各種の修理をおこなうサービスセンターも4か所だ(今後設置を予定している店舗が2か所ある)。これだけ少ないと顧客が不便を感じるのではないか。
そこをテスラの販売店に尋ねると、以下のような返答であった。
「テスラではサービス拠点が少ないので、不便を感じるユーザーも多い。ただし車検については、懇意にしている一般の修理工場などで受けることが可能だ」
「消耗品なども、パーツを送って対応できる。テスラの専門スタッフがチェックする必要がある時は、予約したうえで、テスラが提携している修理工場に車両を持ち込んでいただく。そこにスタッフが出張して、メンテナンスをおこなう方法もある」
このように融通を利かせているが、手続きは繁雑になりそうだ。テスラの販売店でも「なるべくサービスセンターに持ち込んでいただいた方が、不便を感じることはない」という。ユーザーにとっての安心感も高まる。
また日本車では、購入した販売店に車両を持ち込むと併設される修理工場(分類は指定工場)で車検や点検を受けられるが、テスラは異なる。
テスラ・ストアは展示と試乗を担当するので、車両は基本的にサービスセンターへ預ける。
値下げされたモデル3「楽しい選択肢」
テスラのような電気自動車では、いわゆるリセールバリューが気になる。
リチウムイオン電池の劣化もあり、電気自動車は概して中古車価格が安く、購入して数年後に売却する時の価値も下がりやすい。
例えばリーフXの場合、先代型の5年落ちになる2016年式は、走行距離が2万km前後の車両で中古車価格は90~120万円だ。新車価格は320万円前後だったから値落ちが大きい。
現行リーフXの3年落ちとなる2018年式は、走行距離が1万km前後の車両で、中古車価格は180~200万円だ。新車価格は380万円に達するから、これも値落ちが大きい。
そこでテスラの中古車をチェックすると、現時点では流通台数が少ない。
テスラの生産台数は2015年が5万台、2017年は10万台だったが、2020年は50万台まで急増した。電気自動車では1種のブランドになったものの、生産台数は近年になって急増したから中古車の流通台数は限られるのだ。それでも2018年式のモデルSが600~700万円で販売されている。
以上のようにテスラは、サービスセンターが近くにあるユーザーでないと購入しにくいが、モデル3の価格は割安だ。
リーフとの比較からも分かるとおり、動力性能と1回の充電で走行できる距離を考えると、格安ともいえるだろう。新たな補助金もスタートして、ますます求めやすくなった。
新しい運転感覚やカーライフを楽しみたい、クルマで冒険をしてみたいユーザーにとって、値下げされたテスラモデル3は興味深い選択肢だと思う。面白い経験ができるかも知れない。
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みんなのコメント
テスラは、自社で自家用バッテリーのパワーウオールと太陽光パネルを抱える総合バッテリーメーカーになっており、そちらを使ってくれとなるのだろう。
車としては、充電はチャデモが使えるが、自宅でバッテリーとして使えないのでは、リーフや今年発売のアリアに比べて、システムで使う者に取っては割高。
車をICEのようにエネルギーを使うだけの移動装置としてみるか、家庭のエネルギー供給、蓄積システム+異動手段の一部として組み立てて、総合的にエネルギー消費を節約する装置として見るかでコスパは変わる。
でも信頼性は?
日産リーフは50万台販売して1台も燃えていない。
あまり報道されないけど、パナソニック製のテスラで1万台に1台燃えてる。
ちなみに韓国製で5000台に1台。
CALTのバッテリーが日本の技術で作ってるといえパンソニックより燃えないとは信じがたい。
中国ではEVが燃えてもほぼ無視されるからね。