もくじ
どんなクルマ?
ー 悩ましいほど盛り込まれた特長
ー 高級感のある個性的なスタイリング
DSの新小型SUV「DS3クロスバック」 2018年末発表、19年発売か 画像15枚
どんな感じ?
ー テクノロジーが生み出す上質な乗り心地
ー 上質なインテリアと広いラゲッジスペース
ー 価格にそぐわない妥協点
「買い」か?
ー 難しいDSブランドの立ち位置
スペック
ー S 7クロスバック・ブルーHDi 180 パフォーマンスラインのスペック
どんなクルマ?
悩ましいほど盛り込まれた特長
今の自動車メーカーは避けることができないだろう、人気のコンパクトSUVカテゴリーに、DSオートモビルズが打ち出したモデルがDS 7クロスバック。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領がシャンゼリゼ通りでの就任式会場に乗り付けたのが、DS 7クロスバックの特別仕様車だったから、世界的なニュースでデビューを飾ることとなった。
われわれはこのクルマを過去にテストしてはいるが、英国では初めてとなる。
プジョーとシトロエンを含むPSAグルームでの高級車ブランドとなるDS。日産キャシュカイやセアト・アテカ、ルノー・カジャーというより、ワンランク上のレンジローバー・イヴォーク、ジャガーEペイス、アウディQ3といったクルマと真っ向勝負することになる。
そんなDS 7クロスバックには非常に沢山の注目すべき特長が盛り込まれており、どこから紹介するか悩むほど。
半自律的運転プログラムにはじまり、ナイトビジョンのほか、フランス流の洒落た美しいエレメントがエクステリアにもインテリアにも散りばめられている。
DSとしては、アクティブ・サスペンションも初めて装着された。
高級感のある個性的なスタイリング
風合いの良い高級感と最新のテクノロジーが組み合わされたアイデア群は、このクルマの魅力を強めている。
よく観察していくと、DS 7クロスバックが個性的に見える印象は、全体的なプロポーションに依るところが大きく、例えば無表情なフロントエンドのデザインは、アウディQ3と似ているように思う。また、飛行機を思わせるようなディテールと、ジュエリーの様に輝くLEDヘッドライトなどは、残念ながら、同じプラットフォームで成り立つプジョー3008と近似する雰囲気がある。
感じ方は様々だと思うけれど。
前述のジュエリーの様な3次元的なデザインのLEDヘッドライトやクロームメッキのパーツに依存してはいるものの、エラが張ったスタイリングは、ハンサムに感じられる。パフォーマンスラインを選択すれば、クロームメッキはグロスブラックに変更も可能だ。
駆動方式はFFで、エンジンはPSAグループ既存のものとなる。225psを発生する1.6ℓガソリンターボか180psの2.0ℓブルーHDiディーゼルの2種とは、アイシン製の8速ATが組み合わされる。129psの1.5ℓディーゼルを選択すれば、6速ニュアルも選べる。
また2019年には、304psを発生するプラグイン・ハイブリッドに4輪駆動の組合せも、5万ポンド(760万円)前後になる見込みだが、選択できるようになる。
早速走らせてみたい。
どんな感じ?
テクノロジーが生み出す上質な乗り心地
DSブランドのクルマとしてまず触れておきたいところは、全体的に乗り心地がとても良いという点。
ボディロールは非常に良くコントロールされている。スタビリティの高さも兼ね備えているものの、妙に重たいステアリングが包み隠してはいるが、アジリティの面では若干犠牲になっているようだ。
アクティブ・サスペンションはエントリーレベルのエレガンス以外は標準装備。と言っても、1955年の初代DSが搭載していたハイドロニューマチック並の斬新さはない。
しかし、路面を読み取るカメラを搭載することで、全般的に良く機能している。カメラのレンズはバックミラーの後部に取り付けられ、加速度を含む様々なセンサーと連携し、ECUにデータを提供。読み取った地形に合わせて、5m毎にアダプティブ・ダンパーを最適な状態に予め調整する。
これはコンフォートモードでのみ機能するのだが、波を打ったような凹凸のある路面において、乗り心地を悪化させる傾向があるようだが、ほとんどの場面において、乗員を荒れた路面や走行音から見事に隔離してくれる。極めて価値のあるオプションだと感じた。
上質なインテリアと広いラゲッジスペース
DSのもうひとつの特長はインテリアの高級感。
トリムレベルによるが、幅の広いセンターコンソールや、ダッシュボードからドアへと深いカーブで結ばれた部分が、アルカンターラかナッパレザーで豪奢に覆われる。エントリーレベル以外は、12.3インチのタッチスクリーンモニターが標準装備され、ギアレバーの両サイドには、大きなトグルスイッチが並ぶ。
上質なステッチや、堀の深い造形など、インテリアの質感はとても魅力的ではあるが、少し凝りすぎた印象もある。そういう意味では、クリーンなデザインと幅の広い選択肢の方を持つプジョー3008の方が、完成度という面ではより高いのかもしれない。また、ライバルモデルではほとんど見当たらない、プラスティックパーツも散見される。
乗員を心地よく包むインテリアを考えると、ラゲッジスペースはその分削られているのでは、と思うかもしれないが、実際は逆。リアシートの後ろには555ℓもの荷室が広がり、シートをたたまずとも十分な容量を確保している。
価格にそぐわない妥協点
しかし全体的に見渡してみると、高級車と呼ばれるクルマでありながら、妥協点も多く目に入ってしまう。
フルデジタル化されたインスツルメント・クラスターはマット仕上げで見た目は素晴らしいが、可読性はあまり良くない。シートも贅沢なしたてではあるが、彫りは浅く平面的。ディーゼルエンジンもスムーズではあるものの、存在感が大きすぎる場面がある。
加えて、ダッシュボードからスイッチ類を取り除き、モニターに置き換えたことで、アピアランスは美しくなった。しかしその反面、操作の反応が良かったり悪かったり、インターフェイスが安定せず、使いにくい場面があるのは残念。
集中操作できるターミナルと呼ぶほどの機能もなく、このモデルが属するカテゴリーを考えると、疑問に感じてしまう。
「買い」か?
難しいDSブランドの立ち位置
ブランドとしては、イノベーションやオリジナリティを高く要求されているが、このカテゴリーで余り過激に振ってしまうと、ブランドの製品プランナーが無謀を犯したと勘違いされてしまうだろう。一方で、レンジローバー・イヴォークやボルボXC40など、同じカテゴリーでありながら別の手法を用いることで、優れたクルマが存在することも事実。
DSというブランドの立ち位置は微妙なところにある。
この現状を鑑みると、このフランス製のクルマはいささか価格が高すぎるように思えてしまう。もし、エレガンスではなく、AT仕様のパフォーマンスラインにアクティブ・サスペンションとアダプティブ・ヘッドライト、12.3インチのタッチスクリーンモニターを加え、インストゥルメントをモニター式に変更すると、DS 7クロスバックは最低でも3万5000ポンド(535万円)は下らない価格になる。
実用性を備えた贅沢な雰囲気のインテリアを備えているから、もしドライビングに満足感を得られたなら、高すぎると感じることもないかもしれない。
というわけで、この強豪ひしめくコンパクトSUVカテゴリーにおいて、DS 7クロスバックをお勧めするのは難しい、というのが率直なところだ。
DS 7クロスバック・ブルーHDi 180 パフォーマンスラインのスペック
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