開幕からフォード陣営の“古豪”モーターベース・パフォーマンス陣営が席巻する2023年のBTCCイギリス・ツーリングカー選手権は、5月20~21日の週末にスネッタートンでの第3戦が開催された。
イングランド東部に位置するこの高速トラックでもNAPAレーシングUKのフォード・フォーカスSTが速さを維持し、元王者アシュリー・サットンが予選ポールポジションからの連勝劇を飾り、前戦から続く4連勝という1997年以来の記録を樹立。
やはりフォード陣営強し。元王者サットンが連勝、BMWのターキントンも今季初優勝/BTCC第2戦
一方、選手権首位で臨んだ僚友ダン・カミッシュは、他車のオイルに乗り予選で赤旗起因となるクラッシュを喫すると、日曜を通じて挽回した最終ヒートの表彰台を再車検失格で失うなど、悲運が連鎖する週末となった。
例年「世界のどこよりも速く」来季カレンダーを公開するBTCCは、今季もわずか2戦を終えた段階で恒例の2024年スケジュールを発表。フランスで開催予定のオリンピックと、サッカー『Euro2024』との日程衝突も意識し、運営組織のTOCAはいつもよりさらに早めの策定を進め、今季同様の全10戦30レースで、4月下旬のドニントンパークから10月上旬のブランズハッチGPサーキットへ続くプランを構築した。
「我々の2024年スケジュールは、広く賞賛された今季と同じ流れになっている」と説明するTOCA代表のアラン・ゴウ。
「ご存知のとおり来季はパリ・オリンピックとEuro2024があり、シーズン中は主要なスポーツイベントで非常に忙しい年になるだろう。したがってもっとも理想的な放送日程を確保するには、できるだけ早くカレンダーを確定することが重要だった」
「いつものように、これだけ早くカレンダーを発表すれば、国内のレース主催者や開催地が、独自イベントや事前計画などのスケジュールを立てるのに役立つ。英国のモータースポーツの他の地域にとってもプラスのメリットがあるんだ。それにしても5月10日に来季日程を公表する……将来的にはこれ以上早く発表できるとはまったく想像できないし、この記録は今後も破られないだろうね!」
■2024年BTCCイギリス・ツーリングカー選手権カレンダー
RoundDateCircuitRd.14月27~28日ドニントンパーク(ナショナル)Rd.25月11~12日ブランズハッチ(インディ)Rd.35月25~26日スネッタートン(300)Rd.46月8~9日スラクストンRd.56月22~23日オールトンパーク(アイランド)Rd.67月27~28日クロフトRd.78月10~11日ノックヒルRd.88月24~25日ドニントンパーク(GP)Rd.99月21~22日シルバーストン(ナショナル)Rd.1010月5~6日ブランズハッチ(GP)
こうして始まった古参トラックでの週末は、FP1がサットン、FP2ではカミッシュと、幕開けからフォード陣営が当然のように最速の地位を固めていく。この段階で午後の予選に向けても「どちらのフォーカスSTがポールを獲得するか」と誰もが考えていた流れは、しかし2度の赤旗中断が大きく影響を及ぼすことに。
セッションはサットンが早々に暫定ポールタイムを記録し、ここから前輪駆動の陣営が次々と本格アタックに向かおうかという段階で、ニック・ハルステッド(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)のマシンからオイルが漏れ、その後方では複数のドライバーが混乱に陥る事態に。
ここで選手権4冠のコリン・ターキントン(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)や他の複数車両もスピンやコースオフ、バリアへの接触とアクシンデントが多発し、最初のセッション中断が宣言される。
長時間の路面清掃を経て再開されると、ポイントリーダーとして僚友に挑むべく飛び出していったカミッシュが、左高速コーナーの“ハミルトン”で姿勢を乱しバリアに衝突。ここでふたたびの赤旗となってしまう。規定に従い、これで最速ラップタイムが抹消されたカミッシュは最後尾からのスタートとなり、予選後には「正直、少し言葉を失っている」と失意の胸中を明かした。
「誰もクルマを衝突させるためにレースをしているわけではないので残念だ。結局のところ、僕らは限界に挑戦していて、それは紙一重ではあるんだけれど……僕は間違った側にいた」と続けたカミッシュ。
「ここで何年もドライブしてきたが、こんな事故は初めてだし、今後何年もここでドライブするだろうが、こんな事故は二度と起こさないだろう。ポイントリーダーとして最後尾にいるのは痛手だが、もう終わったことだ。巻き返そうと努力しなければならない」
最終的にディフェンディングチャンピオンのトム・イングラム(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)や、名門ウエスト・サリー・レーシング(WSR)の大エースであるターキントン、そしてジェイク・ヒル(レーザーツール・レーシング・ウィズ・MBモータースポーツ/BMW 330e Mスポーツ)らを従えたサットンが、驚くべきことに2021年以来初のポールポジションを射止めた。
「良いクルマをくれたら、それからすべてを手に入れられる」と、僚友とはクッキリ明暗が分かれる展開に持ち込んだサットン。「ラップを走らせた後、ラジオで『これは僕がドライブした中でも、最高のツーリングカーだ』と言ったが、それは間違いない。僕の要求をすべて満たして実行してくれたんだ!」
■再車検で失格。カミッシュが2位表彰台を失う
迎えた日曜決勝は、レース1から“万能感を与えてくれる”フォーカスSTで挑んだサットンがライバルを駆逐する展開となり、フロントロウ発進から出遅れたイングラムにも助けられ、後方のソフト勢に対しミディアムコンパウンドを履いていた元王者が、終盤のヒルの挑戦も退けてのポール・トゥ・ウインを飾った。
一方、24番手からハードタイヤで臨んだカミッシュも、後方集団から抜け出してトップ10の背後までカムバック。続くレース2はソフトタイヤを選択したサットンが、ヒルやターキントンら後続の集団を引き離して快適な勝利を収め「NGTC時代に4つのレースで優勝することは並大抵のことではなく、すべてチームの努力の賜物」と語ったサットンが、前戦から続く連勝を“4”にまで伸ばしてみせた。
そして週末最後のレース3では“グリッド・ドロー”で首位発進となったステファン・ジェリー(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)に対し、オープニングで“もう1台のフォード”ことダニエル・ロウボトム(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)が仕掛け、早々にリードを奪う。
しかし背後からアダム・モーガン(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)やジェリーらのBMWを仕留めたイングラムが迫ると、5周目の“リッチズ”でインを刺し、ここで首位浮上に成功する。
さらに満を持してのソフトタイヤを投入したカミッシュも、同じくソフトを履くスピードワークス・モータースポーツ(SWM)のロリー・ブッチャー(TOYOTA GAZOO Racing UK/トヨタ・カローラGRスポーツ)とともにチームメイトを捉え、今季初優勝のチェッカーを受けたイングラムに続き、2位カミッシュ、3位ブッチャーのオーダーでフィニッシュを迎え、予選での傷を最小限に留めるカムバックとなった……かに見えた。
しかしレース後の再車検でNAPAレーシングUKの27号車は「最低地上高検査で不合格」となり、表彰台剥奪というまさかの結果に。ほぼ大逆転に近い挽回を完了したと思われたカミッシュは、タイトル挑戦に向けた貴重なポイントを失うこととなってしまった。
「土曜はバリアに張り付いて気落ちしていたが、日曜はできる限りの反撃をして、最後はトム(・イングラム)をあと1周で刺せるところまで挽回した」と、これでランキング4位に後退したカミッシュ。
「トラックリミットであろうと再車検の不合格であろうと、全員がオンルールだ。これはチームスポーツであり、昨日は負けた僕を誰も責めなかったし、今日はチームとしてレースし、チームとして勝ち、そしてチームとして負けたんだ。僕は彼らを誇りに思っている」
続く2023年BTCC第4戦は、そのカミッシュが得意とする最速トラックのスラクストンで、6月3~4日の週末に開催される。
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