9月22日にスポーツランドSUGOで行われた2024スーパーGT第6戦のGT300クラス決勝では、レース終盤にPONOS FERRARI 296を駆るフェラーリ女性ファクトリードライバーのリル・ワドゥと、LEON PYRAMID AMGの篠原拓朗が一進一退のバトルを展開。最終的に篠原がオーバーテイクを決めて2連勝を飾ったが、PONOS RACINGにとっては初めてづくしの2位表彰台となった。
14時22分のフォーメーションラップ開始時に雨は止んでいたものの、路面は乾かずウエット路面のレース序盤で速さをみせたのが、5番グリッドからスタートしたケイ・コッツォリーノ駆るPONOS FERRARI 296だった。
PONOS RACINGからスーパーGTに挑むリル・ワドゥ「高いレベルの中で戦えることが楽しみ」
「自分のスーパーGTキャリアのなかで、いちばん気持ちいい走りができました」との言葉どおり、コッツォリーノは雨を得意とするミシュランのウエットタイヤを武器に、まさに“水を得た魚”のように前をいくライバルたちを攻略。13周目にはクラストップに躍り出る。
一時は2番手に11秒のリードを築いたコッツォリーノだが、フルコースイエロー(FCY)とセーフティカー(SC)導入でギャップはリセットに。そんななかトップを守ったコッツォリーノは41周目にピットインし、ワドゥに後半を託す。
「自分のスティントが簡単でないことはわかっていた」とレース後に語ったワドゥは、ドライのニュータイヤを履いてコースインする。ただ、その背後には蒲生尚弥の追い上げとFCY直前のピットインで大幅に順位を上げたLEON PYRAMID AMGの篠原が迫っており、2台はおよそ20周にわたるテール・トゥ・ノーズバトルを繰り広げた。
争いはコーナーで篠原が伺いつつ、ストレートスピードの速さも活かしてワドゥがポジションを守るという展開が続いた。しかし、「今回はウエットからドライに路面が変わりましたが、まだコーナーのミドル部分に水が残っていました。なので“確実にいける”ところを探していました」とバトルを振り返った篠原は、71周目の最終コーナーでワドゥのラインがわずかに膨らんだ隙を見逃さず、続く1コーナーでインを差してトップを奪う。
サーキット中の視線を集めたワドゥはレース後「どっちがコーナーが速い、どっちがストレートが速いという気持ちはまったくなかった。ドライブ中は『必ず守る!』と、もう必死だったけど、メルセデスに勝てるほどのペースはなかったから抜かれてしまった」と少し残念な様子。
「でも、チームにとってはすごく良い結果だったと思う。このチームはシーズンのはじめから全員が本当にいい仕事をしているから、この表彰台は非常に価値があると思っている。もちろん満足はしているけど次回は優勝したい」
トップこそ明け渡したものの、4.032秒差の2位フィニッシュを飾ったワドゥ。もちろん自身にとっては初のスーパーGT表彰台で、シリーズとしてはJGTC全日本GT選手権時代の1995年第1戦での岡野谷純の2位以来、2005年からのスーパーGTでは初めて女性ドライバーが表彰台に立った。
最後にワドゥは「スーパーGTは楽しいけど、まだファンのみんなは私のことをよく知らないと思う。でも、今日の結果と走りで、少しは私のことを知ってくれたり、認めてくれるとなおさら嬉しいな」と笑顔をみせた。
また、この2位は今季から参戦のPONOS RACINGに初の表彰台をもたらすと同時に、コッツォリーノにとってもスーパーGT初表彰台となった。「正直、今年から優勝争いができるとは思っていませんでしたが、まずは表彰台獲得という大きなリザルトを残すことができました」とコッツォリーノ。ワドゥについては「彼女の凄さはミスをしないことですね」と称賛する。
「日本のレースは今年が初めてで、SUGOでのレースも今回が初めて。トップ争いをしていてもメンタルを強く維持できる素晴らしい選手です。本当に組んでいて楽しいですし、これからも楽しみなドライバーです」
そしてポノスおよびPONOS RACINGの辻子依旦代表も「ワドゥ選手はミシュランのアドバンテージが少なくなっていくなか、ライバルを抑える走りでレースの見どころを作ってくれました。コッツォリーノ選手も含め、ドライバーふたりは100点満点ですね」とチームの初表彰台を喜んだ。
今季からの新規参戦チームでありながら、序盤戦から着実な結果を残しているPONOS RACING。ワドゥにとっては次戦オートポリスも初のサーキットになるが「ビデオやシミュレーターで勉強中」とのこと。「ミシュランは気温の低いほうが調子が良い」とコッツォリーノが言うこれからのシーズン後半戦、PONOS FERRARI 296が注目の一台になるかもしれない。
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