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ポルシェ963、最終盤のドラマを経て初優勝&表彰台独占。トヨタは7号車が6位【第1戦カタール/後半レポート】

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ポルシェ963、最終盤のドラマを経て初優勝&表彰台独占。トヨタは7号車が6位【第1戦カタール/後半レポート】

 史上最多14メーカーが参戦する今季2024年のWEC世界耐久選手権開幕戦『カタール1812km』の決勝レースが3月2日(土)、ルサイル・インターナショナル・サーキットで行われ、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車ポルシェ963(ケビン・エストーレ/アンドレ・ロッテラー/ローレンス・ファントール組)が総合優勝を飾った。

 ランボルギーニなどトップカテゴリーへの4社の新規参入をはじめ、LMP2クラスの廃止(ル・マンのみ継続)、LM-GTEアマに代わるLMGT3の創設といった新しい要素が満載となったWECの新シーズンは、これまた初めての開催となるルサイルで幕を開けた。

【正式結果】2024年WEC第1戦カタール 決勝

 カタールの建国記念日である12月18日にちなんだ1812kmレースは現地2日・土曜日の11時に、335周または10時間で争われる決勝レースの開始時刻を迎え、スタート直後の1コーナーでは5番手スタートの50号車フェラーリ499P(フェラーリAFコルセ)が、フロントロウに並ぶ5号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)と7号車トヨタGR010ハイブリッド(TOYOTA GAZOO Racing)を大外刈りでかわしトップを奪う。

 しかし約15分後、ニコ・ミューラー駆る93号車がこれをかわし、今戦が“リヤウイングレス仕様”ではラストレースになるとみられるプジョー9X8(プジョー・トタルエナジーズ)が総合首位に踊りでた。

 その後、6番手から順位を上げてきた6号車ポルシェが、フェラーリとプジョーを攻略してトップ浮上する。以降このクルマがレースを支配する展開が続き、93号車プジョーが2番手をキープ。その後ろでハーツ・チーム・JOTAの12号車とペンスキー5号車、2台のポルシェ963が3番手を争うかたちでレースが進んでいく。

 中段のグループではJOTAの38号車、スタートで順位を落とした小林可夢偉組7号車トヨタ、ワークス2台が序盤のトラブルなどで後れを取るなか健闘を見せる83号車フェラーリ499P(AFコルセ)などが中心となって5番手争いが繰り広げられた。

※レース前半の詳細レポートはこちら(https://www.as-web.jp/sports-car/1048616)

 スタートから6時間過ぎ、ニューカマーのうちのひとつである63号車ランボルギーニSC63(ランボルギーニ・アイアン・リンクス)がピットレースでリヤカウルを開けて後部を確認したが、ガレージには入らずにコースに戻る。

 トヨタ7号車のマイク・コンウェイは、7時間目にトラフィックを利用して12号車ポルシェ963のノルマン・ナトを攻略し4番手に浮上する。抜かれたナトは7号車のピットイン後、同門の5号車ポルシェを交わして3番手に。

 8時間目に入ると5号車のマット・キャンベルと38号車を駆るジェンソン・バトンの4番手争いが勃発。複数回のサイドバイサイドのバトルのなか、軽いタッチで互いにコース外に押し出すシーンも見られたが、大きなアクシデントには至らず。ポルシェの同門対決はキャンベルに軍配が上がり、先行車のピットインもありポルシェ・ペンスキーがワン・スリーとなる。

 8時間を経過してまもなく、5号車が5コーナー先で飛び出すがすぐにコース復帰を果たす。4番手の順位も守った。レース終盤、10時間のフィニッシュまで残り約90分となると上位勢が続々と9回目のピットインに入ってくる。2番手93号車プジョーがピットインした際にはペンスキー勢が一時ワン・ツーを築いた。この直後、首位を走る6号車と木村武史がドライブするアコーディスASPチームのマシンが3コーナーで接触するアクシデントがあり、87号車レクサスRC F GT3はコースを外れグラベルを通ってコースに戻ることに。このインシデントは審議対象となったが、レースコントロールはGTカー側に非があると判断。87号車にピット作業プラス10秒のペナルティを与えている。

 アクシデントで車両左側のゼッケンを失った6号車は残り1時間ちょうどのタイミングで10回目のピットインを行い、エストーレがフィニッシュに向けて最後のスティントに向かう。一方、長時間にわたり2番手をキープしてきた93号車プジョーは、カラム・アイロット駆る12号車の猛追を受けテール・トゥ・ノーズのバトルに。

 チェッカーまで残り50分、12号車がプジョーに先んじて10回目のピットへ。この間に5号車ポルシェが3番手に浮上する。トヨタの7号車に先行するかたちで6番手につけていた38号車は、最終盤にマシントラブルに見舞われ長時間のピットストップで入賞圏外にダウン。ステアリングを握っていたオリバー・ラスムッセンは感電を防ぐ降り方でコクピットを離れた。

 残り35分を切ってデ・フリース駆る7号車が最後のピット作業を行う。続いて2番手を走るプジョーもピットイン。これで5号車が1分30秒ほど先行するが、5号車も最後のスプラッシュを残している。93号車と12号車のタイム差は約7秒に拡がった。

 プジョーのピットインから約10分後、5号車ポルシェが最後の給油に入る。ピットアウト後、キャンベルのマシンは93号車と12号車の後方4番手となり、この段階でレースは残り10周に。

 328周目、2番手に対して1分26秒の差を築いた首位6号車が燃料的には足りるもののふたたびピットへ向かう。先のアクシデントで失ったゼッケンに代わる簡易ゼッケンを、左側のリヤフェンダーに貼り付けてピットアウト。後続との差は36秒に縮まったが、まだ充分なマージンがある。

 予定外のピット作業があったがポルシェ・ペンスキーのマシンは、その後の7周を危なげなく走り切り、スタートから9時間55分後にトップチェッカーを受け2023年のWECデビュー以来、初めてとなる総合優勝を飾った。ロッテラーにとってはアウディ時代の2015年第2戦スパ以来の優勝だ。

■あのル・マンを彷彿とさせるプジョーを襲った悲劇

 2番手争いは最終盤まで続き、残り2周の段階で93号車プジョーと12号車ポルシェの差が1.8秒、5号車も背後に迫る展開となる。迎えた334周目、93号車がまさかのスローダウン。ステアリングを握るジャン-エリック・ベルニュは1周遅れでなんとかマシンをフィニッシュラインまで運んだが、プジョー陣営にとっては2位表彰台に手が届くところから順位を5つ落とす悪夢のような結末となった。

 プジョーが戦列を離れた後のアイロットとキャンベルの戦いは、わずかに先行する12号車に軍配が上がりJOTAが順位を守って2位でフィニッシュ。ワークス5号車が続き、ポルシェ勢が開幕戦で表彰台を独占する結果となっている。

 4位は1周遅れとなったもののストラテジーを駆使し、ライバルよりも1回少ない計9回のピット作業で334周目終わりにチェッカーを受けたキャデラック・レーシングの2号車キャデラックVシリーズ.R。3台目の“黄色いフェラーリ”ことロバート・クビサ組83号車499Pがそこから14秒おくれて5位。最終盤に93号車をかわした7号車トヨタが6位に。7位プジョー、8位に50号車フェラーリが続き、35号車アルピーヌA424(アルピーヌ・エンデュランス・チーム)が新車勢の最高位となる9位でフィニッシュした。入賞圏内最後のスロットには前年のチャンピオンカーである平川亮組8号車トヨタが入っている。

 11位以下は99号車ポルシェ、20号車BMW、36号車アルピーヌ、51号車フェラーリ、63号車ランボルギーニ、15号車BMW、94号車プジョーというオーダー。残り45分まで上位を走行するもマシントラブルに見舞われた38号車ポルシェはクラス18位/総合34位でレースを終え、11号車イソッタ・フラスキーニについては157周でリタイアとなっている。

【追記】その後、スチュワードは93号車に対して失格の裁定を下している(https://www.as-web.jp/sports-car/1048955)

■LMGT3初代ウイナーはポルシェ911

 9メーカー/18台で争われるLMGT3は、序盤から多くの時間をクラス首位で過ごした92号車ポルシェ911 GT3 Rが、中盤から終盤にかけてもレースを優位に進めた。

 これに対抗したのは6時間目にクラストップを走行した27号車アストンマーティン・バンテージGT3だった。WECではデビュー戦となるこの新型マシンは7時間目に単独スピンがあり直後のピットイン時に92号車にトップを奪われたが、その後もマンタイ・レーシングがオペレートするポルシェ911に食らいつく。

 また、同じアストンマーチンを走らせるDステーション・レーシングも、レース折り返しの段階ではクラス8番手付近を走行していたが、ビスタAFコルセが走らせる54号車・55号車フェラーリ296 GT3勢とのバトルを制してトップ5圏内に順位を上げると、レース終盤にかけては百戦錬磨のアウグスト・ファーフスや二輪界の“スーパースター”バレンティーノ・ロッシらを擁するチームWRTのBMW M4 GT3勢とのバトルに。

 777号車アストンマーティンは7時間目に31号車を攻略。8時間目から9時間目にかけて姉妹車46号車BMWと3番手を争った。その後、チームのエースであるマルコ・ソーレンセン駆るイギリス車は、ロッシから交代したマキシム・マルタンのBMWをかわしてクラス3番手に浮上する。

 マンタイ・ピュアレクシグの92号車ポルシェ(アレクサンダー・マリキン/ジョエル・シュトーム/クラウス・バハラー組)が最終的に4.866秒差で27号車アストンマーティンから逃げ切った後、藤井誠暢がマネージング・ディレクターを務める日本籍のチームがクラス3位でチェッカーを受け、前年最終戦バーレーンに続くポディウムを獲得した。ロッシ組46号車は、3位となったアストンマーティンから12秒遅れてクラス4位に。同5位は54号車フェラーリ。31号車BMW、55号車フェラーリがこれに続き、アイアン・デイムスの85号車ランボルギーニが8位に入った。

 同クラスに参戦した日本勢は、小泉洋史組82号車シボレー・コルベットがプロトンの88号車フォード・マスタングに次ぐクラス10位で入賞を果たした一方、95号車マクラーレンでシリーズにデビューした佐藤万璃音と、フェラーリからレクサスに乗り換えた木村組はトラックリミット違反など度重なるペナルティを受けて後退。ユナイテッド・オートスポーツの95号車は13位、アコーディスASPチームの87号車は16位で今季最初のレースを終えることとなっている。

 WECの次戦は第2戦イモラだ。改修中のモンツァに代わって開催されるイモラ6時間レースは4月19~21日に行われる。なお既報のとおり、イタリアへの貨物輸送は当初予定されていた海上輸送から航空機を使った空輸に切り替えられている。これは開幕戦に先立って行われた公式テストが、海峡封鎖にともなう海上輸送コンテナの遅着で二日間延期されただけでなく、複数回にわたってスケジュールが組み直されたことが要因となっている。

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