WEC世界耐久選手権の2022年第1戦セブリング1000マイルレースは3月18日、アメリカ・フロリダ州のセブリング・インターナショナル・レースウェイで決勝レースが行われ、アルピーヌ・エルフ・チームの36号車アルピーヌA480・ギブソン(アンドレ・ネグラオ/ニコラ・ラピエール/マシュー・バキシビエール)が優勝を飾った。
現地時間11時55分、晴天のもとでフォーメーションラップがスタート。グリッド表の改訂により、PPスタートのアルピーヌはマシュー・バキシビエール、2番手グリッケンハウス・レーシング708号車グリッケンハウス007 LMHはオリビエ・プラがスタートドライバーを務めた。
マシン横転の大クラッシュ喫したトヨタのロペス、車両のダメージを「見誤った」/WECセブリング
4番手スタートのトヨタGAZOO Racing8号車GR010ハイブリッドはセバスチャン・ブエミ、7番手スタートの7号車GR010ハイブリッドは小林可夢偉がスタートを担当した。
12時すぎにスタートが切られると、全車がオレカ07・ギブソンというパッケージとなるLMP2クラスのユナイテッド・オートスポーツUSA22号車オレカ07のフィリペ・アルバカーキが、5番手スタートから2番手に浮上。しかし、グリッケンハウスが抜き返して1周目を終える。
3周目までにトヨタは8号車が3番手、7号車が4番手へと順位を上げ、ハイパーカークラスが総合トップ4を形成する流れとなった。
序盤、アルピーヌのバキシビエールは、1周1秒のペースで後続を突き放していく。グリッケンハウスとトヨタのラップペースはほぼ互角で、LMP2勢よりは1.5~2秒ほど速いタイムを刻んでいく。
ハイパーカークラスで1スティントがもっとも短いのは、ノンハイブリッドLMP1マシンで参戦するアルピーヌで、24周目には最初のピット作業を行う。続いて27周目にグリッケンハウス、28周目にはトヨタの2台がテール・トゥ・ノーズの状態でピットに向かった。
グリッケンハウスがロマン・デュマへのドライバー交代とタイヤ交換を行ったことで、ドライバー交代をしなかったトヨタの2台が2&3番手へと浮上。アルピーヌから12秒離れてトヨタの2台、その20秒うしろにグリッケンハウスという位置関係になった。
2スティント目の中盤、3番手の可夢偉はリヤをスライドさせたり、オーバーシュートしかかる場面も見られた。路面温度が40度を超えるなか、スペック選択の面も含め、タイヤには厳しいコンディションのようだ。
このあともアルピーヌが26周、グリッケンハウスが27~28周、トヨタが28周を1スティントの基本周回数とし、クリーンにレースが進んでいく。トヨタ7号車はホセ-マリア・ロペスに、8号車はブレンドン・ハートレーへと交代する間にアルピーヌがトップに戻り、やはり1周あたり1秒近いギャップを積み重ねていく。
■7号車の赤旗により8号車のピット回数が増える
レースが大きく動いたのは、3時間が経過してからだ。102周目にアルピーヌがピットインし、ラピエールからネグラオへとドライバー交代。これで、いったんはトヨタの2台が先行する。
直後の104周目、トヨタ7号車のロペスがターン10への進入でハートレーをオーバーテイク。スタートから3時間15分が過ぎて初めて、7号車が8号車の前に出る形となった。
このままリードを広げたいロペスだったが、111周目に入ったターン8で、LMGTEアマクラスのポルシェを左からオーバーテイクする際、接触してコース右側へとスピンしながらコースオフ。バリアにフロントから接触し、ダメージを負ってしまう。
ロペスはマシンをピットに戻そうと走行したが、高速ターン14への進入でコントロールを失い、タイヤバリアへとクラッシュ。7号車GR010ハイブリッドは裏返しの状態で着地した。このあと、ロペスは自力でマシンから降りている。
このロペスのクラッシュにより、レースは3時間30分経過時点、首位8号車が112周目に入ったところでで赤旗中断となった。
およそ35分の中断ののち、レースはセーフティカー(SC)先導のもとでリスタートが切られる。暫定トップの8号車ハートレーと、1回ピットが多いアルピーヌとのギャップがリセットされ、アルピーヌがさらに優位な状況に立った。
しかもピットインが迫っていたハートレーの8号車は、ガソリンが底をつきかけていた。このためSCからのリスタート直前にピットへと向かい、規則上許される5秒間の燃料スプラッシュのみを行ってグリーン状態のコースへ復帰。さらに翌115周目にもピットに入り、ルーティン作業を行うというロスに見舞われた。
ここで8号車は平川亮が、ハイパーカーで初めての決勝ドライブに臨んだ。アルピーヌとの差は1分ほどに拡大していた。
平川は172周目にピットに入ってブエミへと交代するまで、連続2スティントを走行。とくにトラブルなく、担当スティントを終えたようだ。
6時間をすぎ、デブリ回収のためこのレース初めてのフルコースイエローが導入される。バキシビエールがふたたびステアリングを握るアルピーヌと、2番手トヨタ8号車との差は80秒ほどに拡大した。
残り1時間を前に突如セーフティカーが導入。直後に赤旗が提示される。レースコントロールによれば、サーキット上空に雷雲が近づくなか、マーシャルやサーキット上の人々の安全を守るための赤旗とのことだ。
残り45分、セーフティカー先導のもとでレースが再開。周回おくれのパスアラウンド、および燃料が足りない車両のエマージェンシー・スプラッシュが行われるなか、リスタートが切られる前に3度目の赤旗が提示される。
夕闇が訪れるなか、残り23分でセーフティカーの先導でホームストレート上に留め置かれていたマシンは1周を走行し、全車ピットイン。15分ほどを残し、ここで実質レース終了となった。
この結果、優勝はアルピーヌ36号車、2位にトヨタ8号車、3位に1ラップおくれでグリッケンハウス708号車という総合トップ3で、開幕戦を終えている。平川はハイパーカーデビュー戦で2位表彰台に立った。
■ユナイテッド・オートスポーツ23号車が激戦区を制す
LMP2クラスは序盤、1周目でハイパーカーに割って入ったユナイテッド22号車がリード。およそ35分で1スティントを迎えるLMP2車両は、ハイパーカークラスとの差は広がっていったが、クラス内では激しい接近戦が繰り広げられた。
最初のピット後には22号車、23号車の順でユナイテッドのワン・ツーとなるが、プレマ・オーレン・チーム9号車のロバート・クビカがその背後へと浮上。さらにはチーム・ペンスキー5号車、リアルチーム・バイ・WRT41号車、リシャール・ミル・レーシングチーム1号車、WRT31号車ら、有力どころが上位に集まってくる。
ユナイテッド23号車が首位に立ったあと、一時プレマの9号車もトップを奪うが、トヨタのクラッシュによる赤旗後にはふたたびユナイテッド23号車がLMP2クラスをリードする展開に。
5時間が経過する頃にはWRTの2台が接近戦を繰り広げながら上位へ進出し、31号車が2番手、41号車が3番手につける形となった。
2度目の赤旗を迎える際にはユナイテッド23号車、WRT31号車、リアルチーム・バイ・WRT41号車、プレマ9号車、JOTA28号車というオーダーに。
雨雲が近づくなかSC先導でレースが再開されると、何台かの車両がピットインして5秒間のエマージェンシー・スプラッシュを行ったが、最終順位は2度目の赤旗時のものに戻されている。
この結果、ユナイテッドの23号車(ポール・ディ・レスタ/オリバー・ジャービス/ジョシュ・ピアソン)がクラス優勝を飾った。
LMP2のプロ/アマカテゴリーは、AFコルセ83号車(フランソワ・ペロード/ニクラス・ニールセン/アレッシオ・ロベラ)が制している。今季、LMGTEアマクラスからステップアップした彼らは、予選で総合3番手にも食い込む活躍を見せていた。
■LMGTEプロはポルシェとコルベットの一騎打ちに
ポルシェ911 RSR-19、シボレー・コルベットC8.R、フェラーリ488 GTE Evoが争うLMGTEプロクラスでは、序盤からポルシェGTチームの92号車と91号車、コルベット・レーシングの64号車が3台で1パックを形成。激戦を予感させる。
しかしスタートから1時間後、ちょうど1回目のピット作業が行われているタイミングで、ポルシェの2台にペナルティの判定が下る。
PPスタートの92号車はLMP2との隊列間隔の不保持により、2番手スタートの91号車はスタート直前に正しい位置を維持しなかったことにより、それぞれ次のピットインにおける15秒のストップ&ホールドが命じられた。
これにより2度目のピットを終えると首位コルベットは楽な展開となるが、3時間半経過時の赤旗によりギャップがゼロに。
レースが再開されると、リスタートした周の最終コーナーで92号車のケビン・エストーレがコルベット64号車のトミー・ミルナーのインに飛び込み、トップを奪い返した。
残り2時間を前にしたピット作業で91号車は左リヤタイヤが外れず、タイムロス。コルベットが2番手となり、この順位のままフィニッシュ。クラス優勝は92号車ポルシェのエストーレ/ミカエル・クリステンセンが手にした。
AFコルセの2台のフェラーリは、ポルシェとコルベットに対してラップペースが劣っており、表彰台争いには絡めなかった。
■Dステーション藤井が序盤に得意のジャンプアップ
LMGTEアマクラスでは、序盤から首位に浮上したノースウエストAMR98号車アストンマーティン・バンテージAMRが主導権を握る。
2番手にはTFスポーツ33号車アストンマーティンが浮上し、さらにスタートから順位を上げてきたDステーション・レーシング777号車の藤井誠暢が3番手となり、一時アストンマーティン勢がトップ3を形成する。
藤井は1時間経過を前に2番手まで順位を上げ、星野敏へと交代している。
ノースウエスト98号車は中盤に入っても首位を堅持する一方、2番手には一時デンプシー・プロトン・レーシング77号車ポルシェ911 RSR-19のセバスチャン・プリオールが浮上してくる場面も。
残り1時間半の時点ではチーム・プロジェクト1の56号車ポルシェが2番手に上がってきていたが、ここにTFスポーツ33号車のマルコ・ソーレンセンが追いつき、ターン15への進入で2番手を奪う。この直後、2度目の赤旗導入となった。
優勝はノースウエストAMRの98号車アストンマーティン(ポール・ダラ・ラナ/デビッド・ピタード/ニッキー・ティーム)。2位に33号車アストンマーティン、3位は56号車ポルシェとなった。
Dステーションの777号車はクラス6位で2022年の緒戦を終えている。
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みんなのコメント
所詮カーレースはスポーツではない、欧州人の趣味なんだね。