シリーズ初開催地、ポーランド西部の古都ポズナンにある1978年建設のレーストラック、トルン・ポズナンにて6月24~25日に実施された2023年ETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップ第3戦は、王者ノルベルト・キス(レベス・レーシング/MAN)が土日の両予選でスーパーポールを制覇すると、レース1で栄えある“初代ウイナー”の称号を獲得。
続くレース2では、選手権6冠ヨッヘン・ハーン(チーム・ハーン・レーシング/イベコ)の“帝王学”を受け継ぐ子息ルーカスが、リバースグリッドの好機を捉え自身キャリア2度目の総合優勝を記録するなど、最終ヒートを制したアントニオ・アルバセテ(Tスポーツ・ベルナウ/MAN)含め3名のウイナーが誕生した。
やはり王者は強し。深紅のMANを駆るノルベルト・キスが4戦4勝の完全制覇/ETRC第2戦
中世ポーランド王国の最初の首都として栄えた要衝として知られ、1978年に建設された4.083kmのレーストラックでは、金曜の公式練習から総重量5.3t、最高出力1100PS超えのレーシング・ヘッドが精力的に周回を重ね、シリーズの有力ドライバーたちもその挑戦的で困難な特徴にポジティブな感触を示した。
「少し路面がバンピーなのは、外から見ていても分かると思う。だからトレーラーはそこらじゅうで動き、跳ね回るんだ」と語ったのは、ディフェンディングチャンピオンのキス。それでも「いくつかの速いターンがあり、リズムが良くて楽しかったよ」との印象を付け加えた。
一方、史上最多6度の王座獲得経験を持つハーンも、その特徴を賞賛するコメントを残した。
「このサーキットは素晴らしいね。グリップレベルは非常に高いし、我々は良いセットアップを見つける必要があり、なんとかそこに到達できた。自信が持てるようになったし、天気予報はバッチリのようだ。我々はここが気に入っているし、大きなショーを作るために全力を尽くすつもりさ」
同じく3冠ドライバーのスペイン出身アルバセテも、その特徴に関し「かなりテクニカルで高速コーナーもあるし、中速コーナーや低速コーナーもバランスよく配置されている」との見解を示す。
「カートサーキットの周りには非常にテクニカルなパートとターン13があり、そこには非常に速い速度で到達するから、ブレーキングからのターンインは簡単じゃないね。そこでは少し難しい状況があったが、最終コーナーもとても好きだね!」
明けた土曜最初の予選は今季最も接近した勝負となり、最初の計時セッションでは首位キスから2番手ハーンと3番手サッシャ・レンツ(SLトラックスポーツ30/MAN)までが、わずか0.2秒差に。スーパーポールでは3人の差が0.5秒に拡大したものの、ポールポジションを得たキスもタイム更新はわずか0.2秒と、初開催地の路面進化を読み切る難しさが出た。
そのまま現地午後の12時45分にスタートしたレース1は、王者が典型的なライト・トゥ・フラッグを決め、前戦スロバキアリンクでの週末“クリーンスイープ”から続く5連勝を達成。背後にもハーン、レンツが続いて1号車、2号車、3号車のトラックナンバー順でポディウムを占める結果となった。
■レース3はスタート直後に赤旗。リスタート以降はキスが今季8勝目
続いてリバースグリッド採用のレース2は、レース・バイ・レースのエントリーでプロモーターズ・カップ登録となるルーカス・ハーンが、シュティフィ・ハルム(チーム・シュバーベントラック/イベコ)と並んでフロントロウ発進を決めると、昨季のニュルブルクリンク・レース2の再現とばかりにターン1でホールショットを奪う。
その背後では、4番手スタートだったホセ-エドゥアルド・ロドリゲス(ロボコノーテ・レーシング・トラックチーム/MAN)が早めのブレーキングを見せたことで後続が混乱。フィールドの大半がコースから飛び出して接触を回避し、コース上には大量の砂埃が舞うことに。
そうした後続の波乱を尻目に、力走を披露した首位ルーカスはそのままトップチェッカーを受け、リバースポールを総合優勝に繋げることに成功。2位ハルム、3位ジェイミー・アンダーソン(アンダーソン・レーシング/MAN/MAN)の全員が、今季初表彰台を獲得するフレッシュな顔ぶれとなった。
明けた日曜の予選も早々にポズナンを攻略したキスの独壇場となり、2023年開幕以降の全セッションばかりか、2022年から14回連続のポールポジションを確保する。
一方のレース3では、フロントロウ2番手に並んだアルバセテの反応が遅れ、ターン3までにレンツ、ハーン、アンダーソンらを交えた3ワイド、4ワイドのバトルを誘発。その結末はアルバセテ自身に跳ね返り、行き場を失ったトラックは真っすぐバリアに激突。レースは早々の赤旗中断となる。
ダメージを受けたトラックをピットに戻し、すぐさま修復に取り掛かったTスポーツ・ベルナウのクルーだったが、事故で左側のドアが損傷して閉まらず。時間との戦いとなり、他陣営も協力した修復作業でなんとか復帰を果たしたアルバセテは、ピットレーンからフォーメーションラップに加わり最後尾でレースを再開することに。
リスタート以降、平穏な展開となった勝負でポールシッターのキスが今季8勝目を飾るなか、14番手から9位まで挽回したアルバセテが、ライバルのペナルティもあり週末最終ヒートのリバースフロントロウを確保。これが重要な因子となり、ターン3でグラスエリアを横切ったリバースポール発進のマーク・テイラー(SLアポロ・タイヤズトラックスポーツ/MAN)を早々に逆転し、なんと首位浮上に成功。
そのままリードを6秒にまで拡大し「この週末は本当に不運続きだったが、チームの努力に感謝したいし、クルーに勝利をプレゼントできて本当にうれしい」と、大きなダメージを受けたトラックで有終の美を飾る結末となった。
続くETRC第4戦はシリーズ最大のハイライトとして、欧州の物流業界関係者やファミリーらが集結するドイツ・ニュルブルクリンクでの1戦となり、7月14~16日に『ADACトラック・グランプリ』が争われる。
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