「右フロントが当たってバースト」「引けばよかったとも思う」「落ち幅が大きい」【SF Mix Voices 第1戦決勝（1）】

　2024年全日本スーパーフォーミュラ選手権は3月10日、三重県の鈴鹿サーキットで開幕戦鈴鹿の決勝レースが行われ、スタートで首位を奪った野尻智紀（TEAM MUGEN）が今季初優勝を飾った。

　31周で争われたレース後、全ドライバーが参加して行われる取材セッション“ミックスゾーン”から、ドライバーたちが決勝について語った内容を2回に分けてお届けする。

■佐藤蓮（PONOS NAKAJIMA RACING） 決勝5位

　レース序盤、優勝した野尻に次ぐ2番手につけた佐藤は、上位勢が10周や11周のミニマムでピットインするなかステイアウトを選択。レース中盤までピットインを引っ張る作戦をとった。

　彼曰く、当初は岩佐歩夢（TEAM MUGEN）のように「引っ張り切る予定」だったという。「想定以上にアンダーカット組のペースが速かったので反応はしたものの、やっぱり少しタイミングが遅かったです。悔しいレースですが、これも経験です」と佐藤。

　一方、ペースの面では良好で、スタートで2台をかわした後は野尻とのギャップを調整していたという。「後半に、2台抜くことができたのでそれは良かった。バトルで結構タイヤを使いましたが、それを考えるとレースペースはかなり良かったと思います」と振り返った。

　次戦に向けては「2カ月空いてコンディションもサーキットも変わりますが、今回ポイント獲得はできたので、ポイントを重ねていけたらチャンピオン争いも見えてくると思うので、このまま頑張ります」と意気込んだ。

■福住仁嶺（Kids com Team KCMG） 決勝6位

　7番グリッドからスタートし、レース序盤は太田格之進（DOCOMO TEAM DANDELION RACING）と、後半スティントでは牧野任祐（DOCOMO TEAM DANDELION RACING）らとバトルを展開した福住は、決勝に向けて懸念材料があったという。

「予選はなんとかチームがみんなのおかげであの順位で終えることができ、フリー走行の段階でも『まあまあ走れるな』って感じだったんですけど、タイヤ（のグリップ）が落ちた時の落ち幅が結構大きい」と感じていた福住。

「かなり心配してた部分なんですけど、本当にその心配してた部分がかなり出てしまいました。戦略とかで前に行けたんですけど、そもそものペースがなくて……」

　そう決勝を振り返った福住は、6位でレースを終えたことに「ちょっと残念な気持ち」としつつも、「しっかりとポイントを取ることができたので良かったと思います」とポジティブに締めくくった。

■国本雄資（ITOCHU ENEX TEAM IMPUL） 決勝リタイア

17番手からスタートした国本は、スタートで一気に5台を抜いて12番手に浮上。そこから前を走る小高一斗（KONDO RACING）と接近戦を展開した。スプーンコーナーを立ち上がったところでオーバーテイクシステムを発動し、日立Astemoシケインで小高を追い抜いたが、ふたりの攻防戦は翌周も続き、2コーナーを立ち上がったところで両車のタイヤが接触した。

　その直後、ASURA S字コーナーに入ったところで国本の左リヤタイヤが破損してスピン。小高も巻き込む形でコースオフした。

「2コーナーを立ち上がって、S字にいくまでところで（小高）一斗が僕の方に寄ってきて、僕の左リヤに一斗の右フロントが当たってバーストしてしまいました。ぶつかった瞬間に振動が出て、S字に入ったらバーストしてしまいました」と、当時の状況を説明した国本。判定はレースアクシデントだったが、彼としては主張したいこともあったようだ。

「（彼は）後ろにいたので、僕は何もできないですし、僕は真っ直ぐ走っていたので、一斗は寄っていないと言いますけど、あの状況なら彼が真っ直ぐいけば問題はなかったと思います。僕のトラクションが良くて、前に行っている状況だったのに、それ右に寄ってきてヒットするというところは、ちょっと分からないです」

　今回は名門TEAM IMPULに移籍しての初戦。予選ではQ1敗退となり、決勝も1周でリタイアと本人もチームも望んでいない結果となった。

「1周しか走れなかったですね」と苦笑いを見せる国本。ただ、予選でのペースを含め課題がいくつかあるのは確かなようで、ちょっと流れの悪い週末でした。もう少しパフォーマンスを上げていかないとまずいので、頑張ります」と語った。

■小高一斗（KONDO RACING） 決勝リタイア

　その国本とのアクシデントによって2周目で戦列を離れることになった小高は、オープニングラップでOTS（オーバーテイクシステム）を使わなかったことが接触につながる状況を生んだと説明した。

　小高の前方には坪井翔（VANTELIN TEAM TOM’S）がいたが、小高曰く、その距離が「ちょっと微妙」であったといい、スプーンの立ち上がりで仕掛けるかどうかに迷いが生じたという。結果的にそこでOTSを使わなかった小高は、後方から仕掛けてきた国本にかわされ、これを抜き返そうとしたところで前述のアクシデントが起きた。

「正直、自分も引かなかった部分もあって、引けばよかったとも思うし、かといって強く出てしまったところもあり……ちょっと難しいところだと思うんですけど」と言葉を選びながら小高は心境を語った。

「お互いどちらかがすごく強引な感じであったわけではない」と見解と述べた小高は、最初の一周でポイント争いに加われる可能性を見出していたことからも、今回の件を「無駄な接触になってしまった」と悔やむ。

「自分としても、しっかりでレースを走りきって次につなげたかったというところがあるので、反省します」

　残念な終わり方とはなってしまったが、テストから不調に苦しんできた小高としては、前日13番手に終わった予選の時点で、手応えを感じていたという。

　ただ「一発はどうにかなっても、ロングランでタイヤのグリップしないところになってくると、厳しい部分がある」と決勝想定のロングランには引き続き課題を抱えている模様。チームメイトの山下健太が表彰台を獲得する好調ぶりを見せているだけに、小高としてもそこへ近づき「毎レース、トップ10以内でレースすることを今年は目指していきたい」と目標を語った。

■木村偉織（San-Ei Gen with B-Max） 決勝12位

　昨季のスーパーフォーミュラ・ライツ王者である木村は、今季4人いるルーキードライバーの中で岩佐に次ぐ2番手、12位で開幕戦を終えた。緊張のSFデビュー戦、スタートで「失敗してしまった」という彼は、状況を見て作戦を変えたという。

「本来はもっと引っ張る作戦だったのですけど、スタートで後方に沈んでしまっこともあり（ピットインのタイミング）早めに変えて、裏の方でポジションとペースを上げられるように（戦略を）変えました」と説明した。

　レース全体の振り返り、「今出せるパフォーマンスは、出し切れたと思います」と木村は語る。

「アウトラップとかでのペースだったりとか、初めてのところがすごく多かったので、とりあえず自分のデビューレースでもあるんで、ちゃんとチェッカーを受けることが次に向けてのステップだと考え、とにかく無理せず淡々とやるべきことをやることを意識しました」と決勝中の意識について語った。

　クルマを煮詰めていくことに関しては手応えを感じているようだが、同時に上位との差も理解しており「早く追いつきたいし、追い越したいと思っているので、それに向けて何ができるかというのを考えていかないといけないと思います」とコメントしている。