T50スーパーカー発表
text:Steve Cropley(スティーブ・クロプリー)
【画像】ゴードン・マレーT50、マクラーレンF1、フェラーリ488 GTB、ランボルギーニ・ウラカンEVO、フォードGT【スーパーカー比較】 全105枚
ゴードン・マレーの、新しいV12エンジンを搭載したT50スーパーカーが、英国・サリー工場で発表された。
同じくマレーがデザインを手がけた、1992年型マクラーレンF1の「事実上の後継モデル」とされるこのロードカーは、来年後半に生産開始、2022年の初めに納車が始まる予定となっている。
マレーが「最も純粋で、最も軽く、最もドライバー重視のスーパーカー」と呼ぶこの新車は、ミドエンジン、フルカーボンファイバーの3人乗りとなる。
半世紀以上にわたるデザイン・キャリアを持つマレーの、記念すべき第50番目のモデルとして、T50と名づけられている。
1978年のF1シーズンのグランプリレースで、ブラバムBT46Bで初めて導入された、ダウンフォース重視の「ファンカー」テクノロジーの、更新バージョンを使用している。
T50は、回転数1万2100rpmを達成する、新しい660psの自然吸気4.0Lコスワース製V12エンジンを搭載し、ゴードン・マレー・オートモーティブ (GMA)によって構築される。
2017年、マレーは既存のデザイン事業と並行してこの会社を設立、T50の生産を発表している。
100台限定で生産され、税抜きの販売価格は236万ポンド(3億2700万円)とされている。
米国と日本をメインとする世界の自動車愛好家によって、すでにほとんどが売約済みとなっており、それぞれ60万ポンド(8300万円)のデポジットが支払われている。
詳細なスペック決定の際に75万ポンド(1億400万円)と、納車時にその残りが支払われることとなる。
記念すべき1台目のT50は、2022年1月にそのオーナーの手に渡る予定となっており、残る99台も年内に生産される予定となっている。
その後、25台のハードコアなサーキット・エディションが投入される。
カーレースへの参戦についてマレーは、現在進行中のロードカーに専念しており、また2022年以降のスポーツカーやGTレースの規制がまだ明確になっていないため、積極的には考えていないと語っている。
6つのエアロダイナミクス・モード
マレーがデザインチームのリーダーとなり、完全に社内でデザインされているこのT50は、マクラーレンの先代モデルと同様、後輪駆動で、ジェット戦闘機のようにキャビンの中央にドライバーシートが配置されている。
そのサイズ感は、ポルシェ911より小さく、アルパイン110よりも軽い、ミニ・カントリーマンに近い。
ドアミラーがカメラに置き換えられているため、1.85mの広めの車体幅にもかかわらず、タイトな場所でも走行がしやすくなっている。
コンパクトサイズ、先のとがったフロントパネル、ルーフに取り付けられたエアスクープ、ディヘドラルドア、サイドガラスへの「チケットウィンドウ」の採用など、F1とのデザインの共通点が多く見られるが、さらにコンパクトに見えるように尽力されている。
優雅なフロントエンドに対し、リアエンドには、大きなエグゾースト、エンジンンベイ・クーリングのための機能が重視されたメッシュ、巨大なボディ下のディフューザー、400mmのファンが備えられている。
48V電気システムからパワーを得るファンは、車体の下の空気の流れを急速に加速してダウンフォースを発生させる。
マレーは、これにより「ロードカーのエアロダイナミクスの常識を塗り替えます」と胸を張る。
ファン、ディフューザー、テールに取り付けられた2組のダイナミックなエアフォイルにより、非常に大きなダウンフォースが発生し、これまでのスーパーカーでは実現できなかったレベルのコーナリング・グリップが可能となる。
6つのエアロダイナミクス・モードがあり、そのうちオートとブレーキングの2つのモードでは、スピードとドライバーの操作に応じて、自動的に機能する。
そのほか、ハイダウンフォース、Vマックス、ストリームライン、テストのモードは、コックピットから選択が可能となっている。
ストリームラインとVマックスは似ているが、ストリームラインは、フルスピードでファンを作動させ、上面と底面のアクティブフラップを引き込むことにより、「仮想ロングテール」でエアロダイナミクスを作り出す。
Vマックスは、V12にクランクマウントされた30psの統合スタータージェネレーターを、フルスピードで実行し、3分間のバーストで追加のパワーを提供する。
スピードが240km/hを超えると、ルーフに取り付けられたインダクション・エアスクープが最大出力を約710psまで引き上げる。
あらゆる点でF1より優れたクルマへ
印象的なインテリア空間は、T50のもう1つのテーマとなっている。
T50のキャビンは、そのライバルやF1よりも広々としており、フロアがフラットになったため、センターシートへのアクセスがしやすくなっている。
ジェット戦闘機スタイルのアナログスイッチギアとインストゥルメントは、比較的シンプルだが、スイス時計と同等の品質を誇る。
サイドマウント式の2つのラゲッジ・コンパートメントは、F1と同じように広々としているが、トップロードも可能となっている。
230万ポンド(3億円)以上のコレクターズ・カーとなるが、日常的に使えるクルマとなるとマレーは言う。
「T50は完全なロードカーとなります」
「パッケージングとラゲッジスペースの、新しいスタンダードを設定します」
「出入りのしやすさ、ラゲッジ容量、保守性、メンテナンスとサスペンションのセットアップなど、あらゆる点でF1より優れたものとなります」
「選択可能なエンジンマッピングにより、あらゆる状況に適した運転モードを提供します」とマレーは述べている。
超軽量ボディ
マレーは、T50の開発中に最も頻繁にベンチマークしたスーパーカーは、1972年に生産されたF1だったと言う。
その理由として、このターボフリーV12とマニュアルギアボックスを備えた、超軽量のセンターシート・スーパーカーを、これまで誰も真似しようとしなかったためだと述べている。
T50の縁石重量は986kgで、マレーが「平均的なスーパーカー」と呼ぶクルマの、約3分の2の重量となっている。
重量の管理のためには、新しい素材を使用するだけではなく、意識を変えていく必要があるとして、設計チームは毎週会議を開いた。
T50のカーボンファイバー製タブシャシーの重量は、すべてのパネルを含め150kg未満となっている。
約900に上る、すべてのナット、ボルト、ブラケット、ファスナーは、軽量化の観点から個別に精査された。
英国のトランスミッションメーカー、エクストラックが提供し、新しい薄壁鋳造技術で設計され、横向きに取り付けられた6速マニュアルギアボックスは、F1で使用されているフェザーウェイトボックスよりも10kg軽量となっている。
一方、コスワースV12は、F1のBMW派生エンジンと比べさらに60kg軽量となっており、カーボンファイバー製のドライバーシートはわずか7kg、そのほかのシートはそれぞれ3kgとなっている。
重いクルマでは実現できない、軽いクルマならではの利点を提供するため、こだわりぬいたと、マレーは言う。
T50は、新しいV12の軽さと660psのポテンシャルで、ほとんどのスーパーカーが960psの出力を必要とした、パワーウエイトレシオを実現する。
排気量は、もともと予想されていた3890ccではなく、3994ccとなると確認されている。
価値のあるドライビング・エクスペリエンス
マレーは、ニュルブルクリンクのラップ記録を破ることや、加速時間の短縮などは、目指してはいないと言う。
「そのようなことには、まったく興味がありません」
「わたし達は、これまで製造されたスーパーカーの中で、最も価値のあるドライビング・エクスペリエンスを提供することを目指しています」と述べている。
マレーは、新型コロナウイルスのパンデミックが始まった際に、T50がまだ生産に入っていなかったことは幸運だったと言う。
サプライヤーの協力のおかげで、開発スケジュールの遅れは、ほぼ取り戻すことができている。
「わたし達には、コスワースやエクストラックを含む、イギリスの最高の部品サプライヤーがいます」
「T50は、イギリスが世界に誇るクルマの1つになると、確信しています」と述べている。
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