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フォードGT 2017年型、英国試乗 走りは世界クラス 細部への配慮がキモ

掲載 更新
フォードGT 2017年型、英国試乗 走りは世界クラス 細部への配慮がキモ

もくじ

どんなクルマ?
ー 競技用を市販車に 逆のアプローチ

ヴァルキリー国内発表 デザイン責任者/VIPセールスマネージャーとのQ&A

どんな感じ?
ー 力強いが、たんに「大味」ではない
ー 走り 能力が高いだけに細部の配慮求む

「買い」か?
ー 世界クラスのフォードGT 「追っ手」も

スペック
ー フォードGTのスペック

どんなクルマ?

競技用を市販車に 逆のアプローチ

いかにもスーパーカー然としたフォードGTは、今後4年間で合計100台が英国オーナーの元へ届けられる予定だ。前世代のフォードGTと比較すると約4倍の販売数で、価格は3倍に跳ね上がっている。

フォードには6000件以上の購入に関する問い合わせがあり、生産予定台数は合計1000台に増やされたとのこと。それでも前モデルの生産台数の約1/4ほどである。

ピックアップトラックやハッチバックの輸出には苦労しているようだが、スーパーカーの販売数に関しては余り神経質ではないようだ。古いイタリアのレースカー同様に、希少価値を持たせることの重要性を理解しているのだろう。

生産は、昨年のル・マンに初めて参戦しクラス優勝を遂げたフォードGT FIA GTEを生み出したカナダの企業、マルチマティック社によるもの。

5月のレポートにもあるが、市販されるフォードGTはコンペティションマシンを公道用に作り変えたもので、一般的なスーパーGTが市販車をベースに競技用マシンを生み出すのとは、逆の手法だ。 

英国ではわずか100名のオーナーが味わえる、カーボンファイバー製ボディと656psを発揮するエンジン持つスーパーカーは、公道でどんな走りをするのか、気になるところ。今回、ヨーロッパに届けられた2台のうちの1台をフォードから借りることができたので、レポートしたいと思う。

どんな感じ?

力強いが、たんに「大味」ではない

ランボルギーニとは全く異なるスタイリングだが、それ以上に、フォードGTは力強く、とても注目を集める存在だ。

ワイド&ローなプロポーションを持ち、エグゾーストノートはうるさいが、挙動は非常に整えられたもの。素直で恐怖感のない路上での性格は、ライバルとなるミッドシップのエキゾチックカーと同程度に扱いやすいクルマだと言える。 

そして核心。フォードGTは、アヴェンタドールほどの完成度を持っている訳でもなく、マクラーレン720Sほど速い訳でもない。しかしながら、極めてエキサイティングで特別な印象を感じさせるクルマなのだ。

座り心地の良い固定式のバケットシートに、450mm程の調整しろを持ったスライド可能なペダルとステアリングホイール。フォード社が展開するモータースポーツから派生した、サーキット走行を待ちわびているようなクルマだ。

コクピットは、彫刻的な造形のカーボンファイバーと、まばらにレイアウトされる金属のスイッチ類とのコントラスト、職人技のようなフィッティング精度が特徴的な空間だ。そして、ドライバーとパッセンジャーとの距離が近い。

インストゥルメントパネルはフラットなモニターに表示され、それほど洗練された印象はない。ステアリングホイールには、スイッチやコントロール・ノブが密に並んでいる。

走り 能力が高いだけに細部の配慮求む

エンジンをスタートさせると、ひとを魅了するような甘い音ではなく、手段を選ばないような圧倒的なサウンドが襲ってくる。レスポンスは非常に鋭く、8500rpmからレッドゾーンとなる。かなりの注目を集めることだろう。

走行しはじめると、ストレートカットされたギアのメカニカルな回転音や振動はなく、ツインクラッチギアは驚くほど滑らかだ。ロードリーガルなレーシングカー、というほどのスパルタンさはない。

フォードGTにはウェット、ノーマル、スポーツ、トラック、Vマックスの5種のドライブモードがあるが、乗り心地は微妙だ。トラックとVマックスは車高が50mm下がり、スプリングレートは倍にまで硬くなる。アダプティブダンパーも備わり、ノーマルやコンフォートで発進すれば、平均的な路面なら流れるように追従してくれる。

しかし路面からの突き上げが大きくなるとサスペンションの処理が追いつかなくなる。ブッシュ類の変形やノイズなどは感じられないが、乗り心地は常にガタガタだ。

一方、ドライバーズカーとして見た場合、驚くほど強力なトラクション、手応えやレスポンスなどが煮詰められたステアリングフィール、安定したグリップとコミュニケーション豊かで、運転が上手になったように感じるシャシーが印象が公道の乗り心地を覆い隠す。

ただ、ボディ・コントロールは第一級のレベルであっても、他の同クラスのスーパーカーと比較すると、ボディサイズが大きすぎ、俊敏さも若干欠けてはいる。さらに気になる点と言えば、サウンドの変化に乏しいエンジンが挙げられる。

それと、イギリスでは路肩側に座ることになる左ハンドル専用ボディのため、視界が良くなく、運転を難しく感じさせてしまう。

スロットルを踏み込めば、スーパーカーらしい息を呑むような加速ができるだけに、フォードには細かい部分の見つめ直しと市場での戦い方を再考してほしい。

「買い」か?

世界クラスのフォードGT 「追っ手」も

世界クラスのコンペティションマシンに見合う、ずば抜けたグリップとパフォーマンスを持ち、公道での走行を(ある程度)可能としたクルマであることは間違いない。

ただ、追っ手にはメルセデス-AMGプロジェクト・ワンやアストンマーティン・ヴァルキリーなどがいる。

フォードGTのスペック

文:AUTOCAR JAPAN マット・ソーンダース
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