ライバルは協力だがパートナー企業の布陣に強み
2016年のWRC(世界ラリー選手権)は、フォルクスワーゲン・ポロWRCを駆るセバスチャン・オジェ選手のドライバーズチャンピオンが決定、最終戦を待たず、なんと4連覇の達成となった。
そのWRCに2017年からトヨタが復帰することが発表されているが、これほど強力なフォルクスワーゲンに対して、同等のパフォーマンスを実現するのは、かなり難しいことだと考えるのが普通だ。
しかし、2017年というのはWRCのレギュレーションが変わる。エンジンこそ、従来どおりの1.6リッターターボだが、最高出力は高められ、またボディサイズも大きくなり、空力デバイスも進化することが決定している。
さらに電子制御の駆動力配分も可能となる。ある意味で、全メーカー・全チームが同じスタートラインにつくことになるわけだ。だからこそ、トヨタは2017年から復帰するのだろう。
そのベースマシンとなるのは、欧州で販売されているヤリス(日本名:ヴィッツ)。レジェンドドライバーであるトミ・マキネン氏のマネージメントにより開発が薦められていることは公式発表されているとおりだ。
また、2016年9月のパリモーターショーでは、WRC活動のパートナー企業としてマイクロソフト、パナソニック、DMG森精機といった各界のトップブランドとなっているのもさすがだ。
マイクロソフトやパナソニックはいうまでもないが、注目は工作機械メーカーのDMG森精機。2016年はWEC(世界耐久選手権)でポルシェをスポンサードしている同社がトヨタWRCのパートナーとなるのは興味深い。
このように着々と準備が進むトヨタWRCプロジェクト。トヨタのWRC活動といえば、過去にセリカやカローラでドライバー・マニュファクチャラーのタイトルを獲ってきているが、それは20世紀の話。常に進化するモータースポーツの世界では過去の栄光が通用しないのは、マクラーレン・ホンダの状況を見てもわかるとおりだ。 たしかにトヨタに関していえば、レギュレーション違反により一年間の出場停止を受け、ブランクからの復帰後にもマニュファクチャラーズタイトルを獲得しているが、18年前の活躍を知っているスタッフは、ほとんどいない(TOYOTA GAZOO Racing Factory本部長であり、WRCチーム副代表の嵯峨宏英 トヨタ自動車 専務くらい?)。
つまり、過去とはつながりのない、TOYOTA GAZOO Racingという新ワークスチームを立ち上げての参戦と捉えるべきだ。さらに、ライバルはフォルクスワーゲンだけではない。新レギュレーションに合わせて、シトロエンも復帰予定であるし、現在参戦しているヒュンダイやフォード(Mスポーツ)も新レギュレーションに合わせたマシンを投入予定。こうして見ていくと、トヨタが復帰してすぐに活躍するのは難しいと考えられる。
もっとも、トヨタの可能性についていえば、すべてが明らかとなっていないドライバーのラインアップにキーがあるともいえる。2017年については最大3台を走らせる予定となっているが、2016年10月18日時点では、ユホ・ハンニネン(ドライバー)/カイ・リンドストローム(コ・ドライバー)ペアしか発表されていない。
さらに2組がトヨタのWRCカーを駆るはずだ。すでに有力選手についてはほかのワークスが押さえているという見方もあるが、チーム代表のトミ・マキネン氏が、どんなヤングタイガーを見出すのか興味津々だ。
(文:山本晋也)
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