型にはまらないスタイル
コンバーチブル(オープンカー)は一般的に、2人乗りのスポーツカーと4人乗りのドロップトップの2種類に大別される。マツダ・ロードスター、ポルシェ911カブリオレ、メルセデス・ベンツEクラス・カブリオレなどなど。しかし、型破りなコンバーチブルも少なくない。
【画像】個性あふれる型破りなコンバーチブルたち【IDライフからスコダ・フェリシア・ファンまで、各モデルを写真で見る】 全84枚
フォルクスワーゲンが2021年に発表したコンセプト「IDライフ」は、コンパクトなEVでありながら、軽快なファブリックルーフとタルガ風デザインを備えた印象的なクルマだった。残念なことに、このまま市販化されることはなさそうだが……。
いずれにせよ、IDライフに魅せられた英AUTOCAR編集部は、他とは一味違う20台のコンバーチブルをリストアップした。型にはまらないスタイルというのは、いつ見ても痛快だ。
スマート・クロスブレード
市街地よりリゾート地の方が似合うクルマもある。スーパーヨットに燃料とジンを補給しながら、ローラースケートのようなクルマで太陽の降り注ぐマリーナをクルージングするのは魅力的な展望だろう。屋根もフロントガラスもドアもない左ハンドルのクルマで、雨の高速道路を大型トラックに混じって走るのは、あまり好ましいことではない。
2001年に登場したスマート・クロスブレードは、2000台の限定生産とされた。ロビー・ウィリアムズがクロスブレード(ナンバー0008)を購入したのは、おそらく接待のためだろう。
フォルクスワーゲンTロック・カブリオレ
好き嫌いは別として、Tロック・カブリオレは現行のフォルクスワーゲン唯一のコンバーチブルである。フォルクスワーゲンは、中型のクロスオーバーSUV市場に熱を上げているため、ゴルフやビートルのコンバーチブルには目もくれない状態だ。「大衆車」にオープントップは必要ないのだろうか。
果たしてTロック・カブリオレは成功するのか、それとも日産ムラーノ・クロスカブリオレやレンジローバー・イヴォーク・コンバーチブルと同じ道をたどるのか、時間が経てばわかるだろう。今のところ、市場はそれほど熱狂しているわけではなさそうだ。
ランドローバー・フリーランダー・ソフトバック
ランドローバー・フリーランダー・ソフトバックは、2018年には「新車のディフェンダーに最も近いスピリットを持つ」と紹介したこともある。標準のフリーランダーは1997年に発売された小型SUVで、3ドアのコンバーチブル仕様がソフトバックと呼ばれる。
日本にも導入されたが、中古車情報サイトで確認できる個体数は少なく、錆やヘッドガスケットが飛ぶなど信頼性にも不安は残る。しかし、他のコンバーチブルが到達できないような場所にあなたを連れて行ってくれるだろう。
スズキX-90
ジムニーやエスクードのルーフレス仕様じゃ普通すぎる!……と思うなら、ちょっと変わったX-90はどうだろう?
2人乗りのX-90が発売されたとき、スズキが何を考えていたのか誰にもわからなかったが、多くの点で時代の最先端を走っていた。四輪駆動で悪路を走破でき、取り外し可能なルーフパネルによってポルシェ911タルガを運転しているような錯覚に陥ることもあったのだ。あくまでも錯覚である。
クライスラーPTクルーザー・カブリオ
標準のPTクルーザーですら人目を引く斬新なクルマなのに、これをオープントップにしてしまおうというのだから、なんとも景気のいい話である。しかし、素性は悪くなく、実用性もそこそこ高い。この見た目にツボを刺激される人もいるだろう。晴れた海岸沿いを走る光景を想像したら、ちょっと手を出してみたくなる。
しかし、何を血迷ったか、クライスラーは雨の多い英国市場にPTクルーザー・カブリオを導入した。2004年、クライスラーは英国における需要を調査するため、50人のスタッフを現地に送り込んだ。結果、右ハンドル仕様を輸入するほど、スタッフの皆さんは気に入ったようだ。
米国人はフォルクスワーゲン・ビートルのコンバーチブルよりも理にかなっているとして、「考えるまでもない」と主張したのだ。まぁ、西海岸ではそうかもしれないが、ウェストン・スーパー・メアではそうもいかない。
日産ムラーノ・クロスカブリオレ
本稿執筆時点で、米国の人気クラシファイドサイトに30台弱の日産ムラーノ・クロスカブリオレが掲載されており、価格は1万3500ドル(140万円)から3万6000ドル(490万円)だった。2011年の新車価格が4万7000ドル(640万円)だったコンバーチブルSUVとしては、少々強気な金額だ。
自動車専門誌では軒並み酷評されたが、民衆が専門家の言うことを必ずしも聞かないことを証明するかのように、ムラーノ・クロスカブリオレはカルト的なオープンカーとなっている。北米専売モデルだが、たまに日本にも輸入されているらしい。
日産マイクラC+Cピンク
日産の英国部門は、乳がん撲滅チャリティ「ブレイクスルー・ブレストキャンサー」を支援するTLCツアーを成功させ、その記念としてマイクラC+Cピンクを限定生産した。その名の通りピンク色のマイクラC+C で、100台の限定生産、価格は1万4495ポンド(約230万円)とされた。英国では購入希望者が殺到したという。
標準のマイクラC+Cは、2005年に欧州で発売され、2007年には日本にも入ってきた。3代目マーチをベースとした「クーペ・カブリオレ(C+C)」で、格納式ハードトップを採用している。オープンカーで定評あるドイツのカルマン社製ルーフ「C-View」は、22秒で開くことができる優れもの。
シトロエンC3プルリエル
引き算の美学という言葉がある。最近、マツダがよく使う言葉だが、物事をシンプルにしておくというのはあらゆる観点で好ましい。2005年、ワンタッチ操作の折りたたみルーフやクーペ・カブリオレが人気の時代に、シトロエンは「もう少し複雑なものはどうですか」と提案してきた。
もし、趣味がDIYで山奥に一軒家を建てることだとしたら、C3プルリエルは魅力的かもしれない。「4台のクルマが1つになった」という奇妙な自慢話も堂々とできるだろう。DIYの人気が高まっている昨今なら、C3プルリエルの複雑なボディ形態の変更作業も、意外と受け入れられたりして。でも、そういう趣味がない人には、シンプルなコンバーチブルをおすすめしたい。
レンジローバー・イヴォーク・コンバーチブル
ランドローバーは、2012年のジュネーブ・モーターショーでレンジローバー・イヴォーク・コンバーチブルのコンセプトを発表した。その時は、フリーランダー・ソフトバックの失敗のことなど都合よく忘れていたのだ。
「世界初のプレミアム・コンバーチブルSUVの可能性を探る」と息巻いたランドローバーは、必死にフリーランダーを舞台袖に押しやろうとしていた。800万円近い新車価格に納得する人はそれほど多くはなかったが、意外にも中古車価格は大きく落ち込んでいないようだ。
スコダ・フェリシア・ファン
本来の意味でいうコンバーチブルではないが、型破りなスコダ・フェリシア・ファンには常識は通用しない。標準のフェリシア・ピックアップは2人乗りのトラックだが、フェリシア・ファンは独特のリアシートを装備することで、さらなる「fun」を加えた派生モデルだ。
キャブ後部を荷台にスライドさせると、屋根のないリアシートが現れるという仕組みである。ビーチでナンパした女の子をリアシートに乗せ、彼女たちが日焼けしたり風雨にさらされたりするのを楽しむことができるのだ(このようなエピソードがスコダの公式HPに掲載されている)。いやぁ、楽しそうなクルマだ。
ダッジ・ダコタ・コンバーチブル
ダッジはアメリカン・サンルーフ社と組んで、ダコタ・コンバーチブルを開発した。その売れ行きは……期待外れだった。おそらく誰もコンバーチブルのピックアップトラックを欲しがらなかったからだろう。
1989年の発売以降、わずか2842人の勇者が購入し、ダコタ・コンバーチブルは1991年にその惨めな状況から解放されることになった。発売当時、ダッジはディーラーに「ショールームに並べた瞬間に売れ始める」と約束していたそうだ。しかし、そうはならなかった。
トヨタRAV4ソフトトップ
トヨタRAV4は世界初のクロスオーバー車の1つで、オンロードのダイナミクスとオフロードの走破性をうまく融合させたクルマだった。1994年に2ドア4人乗りのクロスオーバーとして発売され、4ドア仕様、さらには完全EV仕様も発売された。
1998年にはコンバーチブル仕様も登場したが、トヨタは「リアコンバーチブルルーフのレイアウトがいささか複雑なため、ファンが少なく、2000年に静かにラインナップから廃止された」と認めている。
ウッド&ピケット・シアー・ローバー・グッドウッド
レンジローバーやミニなどのカスタムを手掛けるウッド&ピケット社のラインナップの中でも、シアー・ローバー・グッドウッドはかなりマイルドなモデルであった。六輪のレンジローバーを販売するようなコーチビルダーとしては、四輪のコンバーチブルはかなり「お洒落」と言えるかもしれない。
シアー・ローバー・グッドウッドは2ドアまたは4ドアで注文することが可能だった。電動モヘアルーフ、リアボディエクステンション、ロールオーバーバーが標準装備されている。
マトラ・ランチョDecouvrable
現代のクロスオーバー車の先駆けであるランチョは、シムカ1100ピックアップトラックのシャシーを強化・延長したものがベースになっている。前輪駆動のランチョは、4×4のフリはできても、4×4の走り方はできない。しかし、そんなことはお構いなしに、ランチョは多くの人に愛された。
1981年に発売されたコンバーチブル仕様の「Decouvrable」は、キャンバス地とビニールシートが特徴的だった。その多くは地中海沿岸で姿を消した。
キア・スポテージ・コンバーチブル
キアの小型クロスオーバー車、スポーテージは2022年も最新モデルが欧州で販売されているが、1993年の初代モデルには驚くべきことに3ドア・コンバーチブルがあった。初代はマツダ・ボンゴの部品を使用したボディ・オン・フレーム構造で、2.0L 4気筒エンジン、パートタイム四輪駆動システムが自慢だった。
コンバーチブルなら、これに太陽の下で楽しむという高貴な遊びが加えられていたのだ。しかし、現行のスポーテージのコンバーチブル仕様など想像できるだろうか。作ってほしいとは思わないのだが。
シボレーSSR
これに乗れば目立つこと間違いなし。2000年のデトロイト・モーターショーで初公開されたSSR(スーパースポーツ・ロードスターの略)は、5.3L V8エンジンを搭載していたが、後にC6コルベットの6.0L V8を搭載するようになった。2006年の生産終了までに約2万4000台が販売され、日本の中古車市場でも極稀に遭遇することがある。
ジープ・ラングラー
コンバーチブルの4×4と言えば、おそらくほとんどの人がジープ・ラングラーを思い浮かべるだろう。バービーとケン、デイジー・デューク、そして米国西海岸の道を気ままにクルージングするイメージを思い起こさせるクルマだ。
ルーフやドアを取り外してアメリカンな気分を味わうこともできるし、他に類を見ないオフロード性能でどんな場所にもたどり着ける。粗削りだが、大きな感動がある。
クレイフォード・アレグロ・コンバーチブル
英国のコーチビルダー、クレイフォード社が開発した2ドア・コンバーチブル。ベースは1970年代のブリティッシュ・レイランド(BL)によるオースチン・アレグロだ。
クレイフォードによると、アレグロは完全なコンバーチブルに改造するには強度不足だったため、サンルーフの拡張版としたそうだ。それでも強度が足りず、現場ではシルにコンクリートを充填して剛性を高めるという、ブリティッシュ・ジョークなのか本気なのかわからない言葉まで飛んでいたという。
品質管理上の問題から、クレイフォードがフォードと手を組むまで、わずか17台しか製造されなかった。最終的に9台が現存している。
クレイフォード・ハインツ57ウォーズレー・ホーネット
ウォーズレー・ホーネットは、初代ミニをベースとした上級モデル。これをクレイフォード社がコンバーチブルに改造したのだが、一見すると特に奇妙な点はない。4ドアのミニのオープントップ版というのは確かに目を引くが、興味深いのはその開発の背景である。
クレイフォードは1966年、ケチャップなどで知られる米国の大手食品メーカー、ハインツ社から、スープコンテスト「グレイテスト・グロー・オン・アース」の景品として57台の特注車を製作するよう依頼された。なぜ57台だったかというと、「57 Varieties(57種類の商品)」という宣伝文句に見られるように、「57」がハインツの象徴的な数字となっているためだ。
こうして、通常の方法では決して手に入らない超希少車が誕生した。バーチ・グレーとトーガ・ホワイトの2色のボディカラーが用意され、すべてコンテスト受賞者にのみ配られた。受賞者のほぼ全員が女性だったそうだ。
フォルクスワーゲンIDライフ
2021年のミュンヘン・モーターショーでデビューしたフォルクスワーゲンIDライフ・コンセプト。ペットボトルを再利用したファブリック素材のルーフや、天然の着色料として木片を使用したペイントに注目。本来は、このコンセプトの外観をほぼそのままに市販化される計画だったようだが、企業戦略に変更はつきものである。まもなく登場する市販モデルは「ID.2」と命名される可能性が高く、外観は大きく変わりそうだが、ファブリックルーフが残されていることを期待したい。
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みんなのコメント
どんなオープンカーを選んだとしても、オープンにしなければ意味がないと思っています。
スマホの雨雲レーダーをチェックして、30分雨雲が来ないコースを選んで走っていますよ。
妙ちきりんな導入部は置いといて、面白い記事でしたが。
キワモノと一緒にラングラーみたいなジープとしては普通のクルマが混じってるのはよくわかりませんが。