心をリフレッシュするための快楽増幅装置
アバルトといえば「小さいからってなめんなョ。サソリのひと刺しをご覧あれ!」というかのごとく、小排気量車をチューンアップ。アバルト・マジックと呼ばれる手法で高性能車に仕立て上げ、モータースポーツシーンでいとも簡単に大排気量車をやっつけてしまう。いい意味でヤンチャなメーカーだと個人的には思っている。
アバルトF595の限定カブリオレモデルの第2弾が日本デビュー
1949年にAbarth&C.として、カルロ・アバルト氏がイタリアのトリノ市に興したレーシングコンストラクター&チューナーが起源。その後フィアット傘下となり、いまではステランティスのブランドとして活躍する歴史を持つ。
そのアバルトの血統を現代に具現化したのが、アバルト500である。現在は595や695というラインアップに加え、BEVの500eまでデビューするという大躍進。どんなパワートレーンを搭載しようと「アバルトの血は熱い」ことを、乗った瞬間から感じさせてくれる。それが、このブランド最大の魅力だ。
個人的な思い出となるが、私は全日本ラリー選手権でアバルト500ラリーR3Tという、ドッグミッションを搭載し、ドアのカギさえない完全なレーシングカーを駆っていた。センシティブで、ピーキーで、正直乗りこなすのは大変だった。だがうまく走れたときは、クルマを操る喜びにドップリと浸ることができた。そんなドライバーを選ぶマシンに乗れたのは光栄だったといまでも思っている。
でもこの性格、市販車のアバルト500/595だって同様だと思う。トレッドは狭く、ホイールベースが短く、でも背は高い。ディメンションからして、速く走るのにはとうてい向いていない。ちょっと操作が遅れれば、簡単にスピンモードに入ってしまう。アバルト500ラリーR3Tなんて、ドライバーの感覚としてはホンの一瞬、コンマゼロ2秒、ブレーキを残しすぎただけで、あっという間にスピンモードに入ってしまうように感じた。市販車だったらその1秒が命取り! 極端にいうとそんな危うさがたまらないのだ。
だからドライビングは真剣勝負。操る醍醐味がそれほどのハイスピード領域ではなくても味わえる。それこそがアバルトの魅力だ。
安心が最優先されがちないま、あくまで楽しみを最優先しているのがアバルトである。BEVも悪くはないけれど、尖ったナイフのような切れ味、鋭い味わいはエンジン車が勝る。「走る・曲がる・止まる」にいい汗がかけるリトルギャングである。
アバルト595主要諸元
モデル=2020年式595コンペティツィオーネ(MT)
新車時価格=5MT 383万円
全長×全幅×全高=3660×1625×1505mm
ホイールベース=2300mm
トレッド=フロント:1415/リア:1430mm
車重=1120kg
エンジン=1368cc直4DOHC16Vターボ(プレミアム仕様)
最高出力=132kW(180ps)/5500rpm
最大トルク=250Nm(25.5kgm)/3000rpm ※スポーツモード
JC08モード燃費=13.1km/リッター(燃料タンク容量35リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:トーションビーム
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=205/40R17+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=4名
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