経営を立て直す確かな牽引役になる?
アルファ・ロメオの未来への足取りが、軽く感じられるのは筆者だけだろうか。誇り高きイタリアン・ブランドは、しっかり進むべき道を見据えているように思う。この小さな電動SUV、ジュニア・エレットリカを携えて。
【画像】ジュリエッタ・ユーザーを呼び戻す アルファ・ロメオ・ジュニア 近似サイズの電動SUVは? 全177枚
古くからのブランドファン、アルフィスタが、コンパクトSUVを待ち望んでいたとは考えにくい。それでも、経営を立て直す確かな牽引役になる可能性は高い。
従来のアルファ・ロメオのラインナップは、トナーレとジュリア、ステルヴィオという3台体制。これにジュニアが加わることで、大幅にシェアを拡大できると同社の上層部は予想する。ミトとジュリエッタの、元ユーザーを呼び戻せることにも期待しつつ。
英国でも、アルファ・ロメオは攻勢を強めつつある。2025年までに、新たに6か所のディーラーが増える計画だという。これにより、合計30拠点へ強化される。増えたスタッフを喜ばせる商談数を得られそうか、試乗で確かめてみよう。
AUTOCARでは、既にジュニア・エレットリカへ試乗している。それは282psのヴェローチェ仕様で、爽快な運転体験を求めて、引き締まったサスペンションが組まれていた。車高は25mm低く、20インチ・ホイールがフェンダーへピタッと収まっていた。
しかし、英国でより支持を集めるのは、もっと穏やかな仕様。今回試乗したスペチアーレが、6割を占めると見積もられている。
マセラティを想起するテールライト 車内は広め
英国仕様のジュニア・エレットリカ・スペチアーレでは、18インチ・ホイールと高音質オーディオ、レザー巻きのステアリングホイールを獲得。運転支援システムも、ベースグレードより高機能になる。
見た目の印象は、実際のところヴェローチェの方が魅力的。横から見ると、タイヤとホイールアーチとの隙間が意外と目立つ。クルマに詳しくない人は、プジョーe-2008と見間違える可能性もありそうだ。
それでも、ブーメラン状のテールライトは、古いマセラティ3200GTを想起させる。彫刻的なスクデット・フロントグリルも、記憶に残る表情を生んでいる。
ジュニア・エレットリカの基礎骨格をなすのは、ステランティス・グループのe-CMP。フィアット600eやジープ・アベンジャーだけでなく、先述のe-2008も採用するプラットフォームだ。
サスペンションは前がストラット式で、後ろがトーションビーム式。駆動用モーターはフロントに積まれ、最高出力は156ps。駆動用バッテリーの容量は54kWh。これらもe-2008と共有するが、アルファ・ロメオは独自にチューニングしたと説明する。
インテリアは、ステランティス・グループのアイテムを用いつつ、巧みに高級感を演出している。高い位置のセンターコンソールが、クルマの低い位置へ座った印象を与える。カウルの付いたメーター用モニターは、歴史へのリスペクトだ。
車内空間は、このクラスとしては広め。大人5名が問題なく座れる。荷室容量も400Lと大きい。
モードを問わず洗練性は高い 乗り心地は良好
確認を終えて、スタートボタンを押してみよう。エコ・モードは出力が80psへ絞られ、1545kgあるジュニア・エレットリカが重く感じられる。カタログ値の402kmの航続距離を狙うような場面でない限り、選びたいとは思わないかも。
ナチュラル・モードは、110psへ上昇。ダイナミック・モードにすると、156psが開放されるのと同時に、アクセルペダルの反応も鋭くなる。パワーデリバリーはしっかり調整され、速度管理は容易。110km/hを超えるまで、加速が鈍くなる様子もない。
ただし、ダイナミック・モードでも動力性能は活発だと感じる程度で、ボルボEX30の鋭敏な加速力には及ばない。恐らく、普段使いでも筆者はこの設定を選ぶだろう。
モードに関わらず、洗練性は非常に高い。風切り音や転がり音はしっかり抑えられ、車内は静かだ。ダンパーの伸縮音もほぼ聞こえない。
サスペンションはしなやかに動き、乗り心地は良好。舗装が隆起した部分や、剥がれた穴を通過すると、小さな振動が伝わるものの、快適性は高い。ヴェローチェより小径なホイールも、プラスに働いているはず。
小さめのサイズと良く利く小回りで、市街地での扱いやすさは優秀。郊外のカーブが連続する区間へ飛び込めば、アルファ・ロメオがブランドの個性を注入したという主張を実感できる。
ライバル以上のダイナミックさ HVも登場予定
ステアリングは適度にクイックで、反応は正確。重量配分も悪くないようで、シャープに回頭していく。4本のタイヤはしっかり路面を掴み、安定性も高い。
同じe-CMPをベースとするSUVとしては、姿勢制御もタイト。ヘアピンカーブを攻め込んでも、ボディの動きは巧みに制御され、出口でアクセルペダルを踏むと滑らかな加速を披露してくれた。
唯一、惜しいと感じたのがブレーキ。踏み始めの反応が弱く、効きも漸進的とはいえないようだった。
本当のアルファ・ロメオの輝きがあるかと聞かれると、イエスとは答えにくい。だが、マイルドなスペチアーレでも、ライバル以上のダイナミックさを獲得している。腕利きのアルフィスタを夢中にはさせないかもしれないが、充分な落ち着きと精度は備わる。
何より、好適なタイミングで好適なモデルが投入されるということに、大きな意味がある。競争力の高い価格設定も与えられるようだ。同社の期待通りの販売を、稼げそうに思える。
ちなみに、2025年にはマイルド・ハイブリッドのジュニアも登場予定。欧州ではバッテリーEVの販売に陰りが出ているが、それも補完できるはず。
◯:バランスに優れ、個性を感じられる動的特性 従来の同社のハッチバックにも似ている 複数から選べるパワートレイン
△:ホットなヴェローチェは高価で航続距離が短くなる ステランティス・グループ内に似た内容のモデルが複数ある
アルファ・ロメオ・ジュニア・エレットリカ・スペチアーレ(英国仕様)のスペック
英国価格:3万5695ポンド(約685万円)
全長:4173mm
全幅:1781mm
全高:1535mm
最高速度:149km/h
0-100km/h加速:9.0秒
航続距離:402km
電費:6.6km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1545kg
パワートレイン:他励同期モーター
駆動用バッテリー:50.8kWh
急速充電能力:100kW
最高出力:156ps
最大トルク:26.4kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)
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