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カップ史上「最大のクラッシュ」発生で27台が脱落、ステンハウスJr.が復活の3ワイド勝利/NASCAR第31戦

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カップ史上「最大のクラッシュ」発生で27台が脱落、ステンハウスJr.が復活の3ワイド勝利/NASCAR第31戦

 まさに劇的。NASCARカップシリーズ史上最大のクラッシュが発生した2024年第31戦『イェラウッド500』は、今季最後のスーパースピードウェイ(SSW)決戦となる2.66マイル、傾斜角33度のタラデガで27台を飲み込む“ビッグワン”が勃発。その過程で7名のチャンピオンシップ候補者が巻き込まれ、ポストシーズン“Round of 12”も残り1戦で、次のチャンピオンシップに進む8名の枠に大きな影響を及ぼすことに。

 そんな残り5周での悲劇を経て、乱戦の締め括りもわずか0.006秒差のオーバータイム決着となり、ブラッド・ケセロウスキー(RFKレーシング/フォード・マスタング)、ウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)と横並びのスリリングな“3ワイド”フィニッシュを制したリッキー・ステンハウスJr.(JTGドアティ・レーシング/シボレー・カマロ)が、まさに劇的な復活勝利を飾っている。

またも“非”プレーオフからウイナーが誕生。ロス・チャスティンが待望の今季初優勝/NASCAR第30戦

 各ステージ3戦ごとで脱落者の決まるプレーオフも、このタラデガで5戦目を迎えた。しかしレースウイーク直前の話題はプレーオフ出場資格の行方だけでなく、来季NASCAR参戦契約署名期限までにサインをしていなかった2チーム、トヨタ陣営の23XIレーシングと、同フォード陣営のフロントロウ・モータースポーツ(FRM)が、主催団体たるNASCARとCEOのジム・フランスに対して『反トラスト訴訟』を起こした1件だった。

 アメリカスポーツ界の伝説的存在であり“バスケの神様”として崇められるマイケル・ジョーダン所有の23XIは、FRMらと共同で先週水曜にノースカロライナ州で訴状を提出し、2025年のNASCAR憲章協定を標的としつつ、NASCARとフランス家が「反競争的慣行を使用し、透明性のない運営を行い、競争を抑制し、他者に対して不公平な方法でスポーツをコントロールしている」と主張した。

 全米の他のスポーツ(当のNBAやホッケー、アメフト、さらにはMLBや大学スポーツの分野に至るまで)でもこうした統括団体に対する「参加者の権利回復」を主張する訴えは後を絶たず、公平性の観点でその多くが「訴えを認める」との判断を勝ち獲っているだけに、チームの意思が“NASCARを変える”ことになるか、その行方に注目が集まっている。

 その一方、技術面でも今季最後のSSWを前に新しい部品供給が通達され、車両バランス喪失時のリフトオフを抑止しようと、ボディ側面下部にロッカースカートが追加され、右側のルーフフラップ内側にはファブリックを添付。右側ルーフレールも、ポリカーボネート材を使用して2インチ延長された。

 これらNext-Gen規定への追加施策は8月のデイトナでジョシュ・ベリー(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)が、同ミシガンでコリー・ラジョイ(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が宙を舞い、ルーフを下にして滑走した事故からのフィードバックを盛り込んだものとなる。

 そんなタラデガで予選最速を射止めたのはやはりこの男で、今季最多6度目、シーズンのSSW戦では開幕デイトナのフロントロウ2番手を除き、5回連続のポールポジション獲得を決めたマイケル・マクドウェル(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)が「いつだって最大限の準備をするだけ」と、所属先がリーグを訴えている難しい状況を打破する最前列グリッドを手にした。

 しかし迎えた決勝は、バンク内の20台以上が“4ワイド”で周回を続けるなか、クリス・ブッシャー(RFKレーシング/フォード・マスタング)が制したステージ1を経て、オースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)がウイナーに輝いたステージ2のフィニッシュでは、早くもマルチタングルが発生して決着の行末を暗示する展開となる。

 ここで姿勢を乱した“王者”ライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)と、前戦ウイナーのロス・チャスティン(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)が早々に脱落。続く“Round of 8”に自動的に出場するためには基本的に勝利が必要だったシンドリックは、優勝戦線に留まり最後の20周でステンハウスJr.と何度もリードチェンジを繰り返す。

 そして迎えた運命の瞬間。残り5周でトップスピードのまま車間を詰めた隊列は、まさに“アコーディオン効果”で前走者に接近。首位を行くシンドリックの2号車に背後からブラッド・ケセロウスキー(RFKレーシング/フォード・マスタング)の6号車がプッシュ、これでコントロールを失った2号車は錐揉み状態で隊列中央に雪崩れ落ち、3列目以降のほぼ全車が巻き添えを喰う事態となる。

「もちろん、ものすごくイライラしている」と勝利の可能性が目前で絶たれたシンドリック。「チームと、この日の走りを本当に誇りに思っている。ステージ2で優勝を果たし、グリーンフラッグのピットサイクルで先頭に立ち、もう1度(優勝を)狙うことができたはずなんだ」と、この結果によりカットラインより一気に29点も後方へ沈む結末に。

「今は文句を言う気分ではない。怒りすぎて、何もできないんだ。改めてチームを誇りに思う。プレーオフのすべてのレースに本当に速いレースカーを持ち込んで来たし、来週ももう1台持って来なければならなくなったね……」

 同じく、ステージ2の最後に僚友の流れ弾でダメージを負いながら、優勝争いの輪に加わっていたジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)も、最後の脱落でカットラインを13点下回る厳しい状況に追い込まれた。

「あまり違うことはできなかったと思う」と、事故回避のために自分にできることは何もなかったと説明するカップ“2冠”のロガーノ。

「ボトムはかなりうまく機能していたが、ターン2を抜ける頃には21号車(ハリソン・バートン)からのプッシュが6号車(ケセロウスキー)に伝わり、さらに首位の2号車(シンドリック)に悪い角度で伝わって、彼は去った」

■事故後の対応についてNASCARの審判団に批判が集まる

 さらにレギュラーシーズン王者のタイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)や、アレックス・ボウマン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)、そしてタラデガを得意とする優勝候補常連のチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)らもこの事故で影響を受け、グラスエリアに留まった複数台のクルマへの対応でもNASCARの審判団に批判が集まることに。

 本来、車両に装備される“エアリフト”のシステムを使用しても自走不可の場合、そこでレースは終了となる規則を繰り返し適用してきた。しかし今回は、うち数台がレッカーで搬送され、10分間の赤旗中断からイエロー、ペースカー先導に変化する過程で簡易的な修復を終えたドライバーが復帰する事例が発生。規則運用の一貫性と、不公平さを指摘されることとなった。

 そしてレースは残り2周、最後の延長戦ではプレーオフ出場資格のない36歳のステンハウスJr.が195周中19周をリードしたスピードで意地を見せ、ケセロウスキーとバイロンを従え自身も「アンダードッグの役割が肌に合う」という65戦ぶりのトロフィーを掲げてみせた。

​​「本当に気分がよかった」とプレーオフ5戦中3人目の“スポイラー”となったステンハウスJr. 「後ろにはシボレーのチームメイト(24号車のバイロン)がいて、カイル(・ラーソン/4位)が6号車(ケセロウスキー)をそこまで追い詰めないことを願っていた。それに24号車がゴールラインにたどり着こうとするのは分かっていた」

「このチームは一生懸命頑張ってきたが、2023年のデイトナ500以来勝てていなかった。ここまで浮き沈みの激しいシーズンだったが、このトラックは我々のものだということは分かっていたさ」と、2017年のここタラデガでカップ初優勝を飾っているステンハウスJr.。

 併催となったNASCARクラフツマン・トラック・シリーズの第20戦『ラブズRVストップ225』は、地元の声援を集めたグラント・エンフィンガー(CR7モータースポーツ/シボレー・シルバラードRST)が、来月のチャンピオンシップ最終戦への自動出場権を獲得。

 同じく併催のNASCARエクスフィニティ・シリーズ第28戦『ユナイテッド・レンタルズ250』は、延長戦の末に逆転劇を演じたサミー・スミス(JRモータースポーツ/シボレー・カマロ)が、唯一のリードラップをモノにしてプレーオフの次のラウンドへの出場権を手にしている。

文:AUTOSPORT web
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