【ロイヤルエンフィールド メテオ350 試乗インプレ】走る、旅する、バイクの醍醐味を感じる1台
英国発祥で、現在はインドのメーカーとして活躍するロイヤルエンフィールド。’21年に国内導入された「メテオ350」 は、空冷のまま現代の厳しい環境規制に適合化されたシングルモデル。大人気モデル・ホンダGB350の強力なライバルになりうる存在だ。
●文:ヤングマシン編集部(田宮徹) ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:ロイヤルエンフィールド
【テスター:田宮 徹】原稿の執筆スピードは業界随一を誇るフリーライター。サーキットやモトクロスが大好きで、猪の解体などの趣味が高じて時々何屋かわからない状態に。
味わい絶妙なエンジンは一度体験すべき存在!
かつての…と言ってもつい最近までの話だが、ロイヤルエンフィールドのエンジンに抱いていた印象は”クラシック”だった。”クラシカル”ではない。昔のエンジンが、そのまま現代に生き残っているような感覚。言葉は悪いが、農耕機や発電機を思い出さずにはいられない古めかしさだった。
そんなイメージのままこの新型「メテオ350」と対峙したので、まずはエンジン始動と同時に驚かされた。「あれ、静か…だよね!?」と。メカニカルノイズは、以前の単気筒エンジンと比べて明らかに少ない。しかし、アイドリングで奏でられるエンジン音はロイヤルエンフィールドそのもの。スロットルを軽くスナップすると、重みのあるレスポンスで吹き上がる。
―― 【ROYAL ENFIELD METEOR 350 SUPERNOVA】クルーザースタイルだが、ホイールベースは1400mmでスポーツモデルと比べてそれほど長くない。リヤサスはツインショックタイプで、6段階のプリロード調整ができる(試乗時は最弱にセット)。■全長2140 全幅845全高1140 軸距1400 シート高765(各mm) 車重191kg(装備) ■空冷4スト単気筒SOHC 349cc 20.23ps/6100rpm 2.75kg-m/4000rpm変速機5段 燃料タンク容量15L ■タイヤサイズF=100/90-19 R=140/70-17 ●価格:62万2600円 ※諸元はイギリス仕様
―― スーパーノヴァには、かなり高さがあるウインドシールドが標準装備される。シングルエンジンということもあり、車体は細身。丸型のヘッドライト/前後ウインカー/テールランプがクラシカルだ。
―― 【ライディングポジション】ロー&ロングではないので、シート高はそれなりにあり、かかとは浮く。ステップはミッドコントロールといった雰囲気で、意外と高めにセットされているが、その分コントロール性には優れる。[身長167cm/体重63kg]
走り始めと同時に感じられるのは、極低回転域の力強さ。平地であれば、アイドリングのままクラッチを適当につないでも前に進むし、人間が歩くよりも遅い速度でもクラッチを操作することなく1速で走り続けられ、そのときにギクシャクすることもなく、そこからスロットルを開ければ何事もなく加速が始まる。こういう特性を持つエンジンは、あるようで意外とない。
そのまま一般走行をスタートすると、かつてのエンジンと比べて振動がかなり少ないことにも驚かされる。農耕機の匂いは皆無。極めて現代的なフィーリング…なのだが、一方でそのエンジン音や排気音には、絶妙に”こもった”ロイヤルエンフィールドらしさも継承されている。パルス感も強めだ。
ホンダが日本で今年新発売したGB350/Sは、同じくインド市場向けのモデルがルーツで、350ccクラスの空冷バーチカルシングルエンジンという点も同じ。ホンダのエンジンは、振動を徹底的に排除しながらパルス感だけを残しているところがスゴいが、対してロイヤルエンフィールドのエンジンは振動を消しすぎていない。高回転域まで引っ張れば細かい振動がそれなりに増え、レブリミットに近い領域を高速巡航などで使い続ければ、お尻や足裏にむずがゆさも感じる。
しかし、この”消しすぎていない”ことはむしろメリットでもあり、「もうそろそろ苦しいですよ~」とか「シフトアップしてくださいね~」なんてバイクからの言葉がちゃんと伝わる。もちろん中には、「振動なんて絶対ないほうがいい」というライダーもいるだろう。しかし、実用域ではほとんど不快感がなく、高回転域では多少…という程度なら、これはむしろバイクが持つ”味わい”につながると思う。ロイヤルエンフィールドが狙ってこういう仕様にしたのか、それとも振動を消し切れず結果的にこうなったのかはわからないが、とにかく絶妙だ。
ちなみに、狙ったかどうかわからないという点では、ライダーに伝わるエキゾーストノートも同じ。他人が走行するそばにいても、それほど排気音は大きくないが、ライディング中にはいい感じで伝わり、なおかつ音質も心地いい。サウンドチューニングは、近年のバイク設計では当然の要素になりつつあるが、ロイヤルエンフィールドもこれを取り入れたのだろうか…。
さて、話題がエンジンばかりになってしまったが、もうひとつ驚かされたのはそのハンドリング特性だ。クルーザースタイルだが、一般道のコーナリングで変なクセはまるでなく、普通のオンロードバイクに近い。前輪は19インチ径だが、大径の前輪にありがちなリーン後にフロントが遅れるような感覚も皆無で、何も考えず旋回できる。それでいて高速域では、前輪のジャイロ効果が大きくなるぶんオンザレール感がアップ。安定性にも優れる。
エンジンの重厚感は大型クラスのようで、これを普通二輪免許で乗れるというのはお得。ロイヤルエンフィールドは最大排気量が650で、大きな排気量のバイクを生産していないので、350だからといって引け目を感じることもない。エンジンの乗り味だけで比較するなら、GB350の強力なライバルになるような存在。普通二輪免許クラスにも”楽しいバイク”はたくさんあるけど、”気持ちいいバイク”に出会ったのは久々で、そういうバイクを求めるなら、やっぱり優等生な国内メーカーよりも外国ブランドか…なんて考えされられる試乗だった。
―― 【味も残した新作エンジン】空冷方式や、シリンダーが直立したバーチカルシリンダーレイアウトを継承しながら完全新設計されたシングルエンジンは、ロングストロークで一軸バランサーを搭載。もちろん、燃料供給はインジェクションだ。本国で発表済みの新型クラシックにも使われる。
―― 前後ホイールはキャストタイプで、フロントは19インチをチョイスする。タイヤは、インド製のセアト(CEAT) ズームプラス。ブレンボのグループブランドとなるバイブレ製の前後ブレーキキャリパーを採用する。 [写真タップで拡大]
―― 【ナビ搭載】メーターは、指針式速度計とモノクロ液晶パネルの組み合わせ。スマホ連携機能付きで、右側のカラー液晶パネルには、トリッパーナビゲーターと呼ばれるシステムにより、グーグルマップと連動したターンバイターンナビ表示ができる。 [写真タップで拡大]
―― シートは前後セパレートタイプ。ステラおよび今回試乗した最上級仕様のスーパーノヴァは、タンデムライダー用のバックレストを標準装備する。燃料タンクは丸みを帯びたクラシカルな形状で、余裕のある15L容量を確保。 [写真タップで拡大]
モデル&カラーバリエーション
仕様は3タイプで、もっともシンプルなのが「ファイアーボール」。こちらは前後フェンダーやサイドパネルがブラックで、燃料タンクロゴはステッカーだ。「ステラ」と「スーパーノヴァ」は前後フェンダーやサイドパネルが燃料タンク同色で、タンクエンブレムが立体になり、バックレストも標準装備。そしてスーパーノヴァは、ウインドシールドも備える。
◆スーパーノヴァ
―― 【ROYAL ENFIELD METEOR 350 SUPERNOVA】●色:青 茶 ●価格:62万2600円 [写真タップで拡大]
◆ステラ
―― 【ROYAL ENFIELD METEOR 350 STELLA】●色:黒 青 赤 ●価格:60万8300円
◆ファイアーボール
―― 【ROYAL ENFIELD METEOR 350 FIREBALL】●色:赤 黄 ●価格:59万6200円 [写真タップで拡大]
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みんなのコメント
ついた最高グレード「SUPER NOVA」など、かつて80年代初頭に存在した
「和製アメリカン」のような雰囲気がありますね。
シートもワイドなサドルタイプで座り心地も良さそう。
ところで現在新車で買える普通二輪免許対応のクルーザーは、国産車だと
ホンダのレブル250しかない(¥599,500~638,000-)ハズなので、
そういった意味ではこのメテオシリーズは案外貴重な存在かもしれません。
お値段的にもメテオとレブルはかなりバッティングしてますね。
(インポーターさん拡販がんばって!w)
しかし…ついこないだまであんなにあったのに…国産クルーザー
やっぱり皆さん大型取ってHDとか乗っちゃいますからねぇ…