7月7日から8日にかけて、富士スピードウェイにて行われたスーパーフォーミュラ公式テスト。2日目は、セッション3は山下健太(KONDO RACING)が、セッション4は坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)がトップタイムを記録した。
ここでは2日目の走行終了後に行われた取材セッション”ミックスゾーン”に参加したドライバーたちの声をお届けする(走行初日分はこちら)。
【タイム結果】2024スーパーフォーミュラ富士公式テスト 2日間総合結果
■山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)
セッション3=16番手/セッション4=2番手
「今回がレースウイークではなくて良かったです」
1日目の走行を終え、ミックスゾーンでそう語っていた山本。当然ながらさまざまなメニューを用意してテストへと臨んだものの、「どれも求めていた感度がなく」、終始中盤に沈んでしまっていた。
迎えた2日目、全体が僅差となったセッション3で16番手となった山本だったが、午後のセッション4では終盤の予選シミュレーションで1分23秒271を記録し、セッション2番手でテストを終えた。
ただし、2日目に明確なゲインがあったかというと、どうもそうではない様子だ。
「2日間、グリップ感を感じられず、まとめきれなかったなと思っていたのですが、最後は新品タイヤを履いたなりのグリップが得られ、なぜか最後だけタイムが出たという感じで……。あの感触が、新品を履いたときにつねに出ればいいのですが」
2日目に向けては「見方によっては小さいかもしれませんし、大きいかもしれませんが、それなりには(セットアップは)変えていますね」と説明した山本は、「ちょっとしたバランスの調整というよりは、結構無理してクルマがどう変わるのか、とテストしたので、いろいろと“引き出し”は作れたのかなと思います」と収穫を口にしつつも、最終アタックを迎えるまでグリップ感が得られなかった点については、やはりひっかかっているようだった。とりわけ、2日目午前のセッション3が「一番酷くて、ニュータイヤを履いた感覚がありませんでした」という。
「最後にまとめることはできたと思うのですが、実際にレースになったときにも、同じパフォーマンスを出せるようにしなければいけません。それを出すことができれば、しっかりと上位で戦うことはできるかなと思っています。まだ詰めるシロは残っていると思うので、うまく組み立ててしっかりとレースを戦いたいです」
微細なコンディションの変化、そしてそこへの対応の良し悪しで勢力図が大きく変わるスーパーフォーミュラの世界を熟知する山本だけに、最後に好タイムを刻めたことを受けて「正直、『自信を持っていけます』と言える感じではないです」と、タイム結果を慎重に捉えていた。
■大湯都史樹(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)
セッション3=5番手/セッション4=7番手
前戦SUGOでつかめた手応えをもとに今回のテストへ臨んだという大湯。「若干迷った部分もありますが、良い部分も見つけられたのですごくポジティブに終えられた2日間だったと思っています」と総括した。
“迷った部分”とした内容については、セッション中に大きく変わるコンディションが影響したようで「序盤にいいと思ったものを終盤に確認で試してみたら違ったりして、これが正解なのかと迷うところがありましたね」と語ったが、それでも大湯自身は「間違いなくやってよかった」と笑顔を見せた。
「このコンディションでは、どれだけ知識を得られたかで勝負が決まってくると思います。今回僕らはあまりポジティブな結果は得られなかったのですが、とくに熱に対してはこれからさらに分析していきたいです」
2週間後に控えた第4戦に向けては「決勝レースの方を重視しています。ロングランで課題が見つかった分、やらなきゃいけないことはある」と大湯。
「おそらく2週間後も今回のような天気になると予想されますし、ここまで暑い富士スピードウェイもなかなかないので、レース前に走れてある程度自信を持てると思っています」
■佐藤蓮(PONOS NAKAJIMA RACING)
セッション3=3番手/セッション4=3番手
今回のスーパーフォーミュラ富士公式テストでは、1日目午後を除く3つのセッションでトップ5圏内につけていた佐藤。テスト2日目は午前・午後ともに3番手タイムを記録し、好調さをみせた。
「今日は昨日の2セッションから引き続き、さらにクルマの良いところ探していろいろとトライをしてトップ3に入ることができました」と2日目を振り返る。
その”トライ”をしているなかでポジティブなものを見つけ、最後にアタックシミュレーションを行ったが、トラフィックに捕まりタイム更新はできなかった。しかし「クルマのポテンシャルは全体的に高い」と自信を覗かせる。
午後セッションでは佐藤は、2時間の走行時間のなかで、およそ1時間半ほどをロングランのテストに割いた。そのなかで「良いものと悪いものを見つけることができた」と言うが、ライバルから「少し遅れている」部分もあると分析。
2週間後の第4戦に向けては「予選で今日のようにトップ3に入り、決勝では優勝争いができるように頑張っていきたいですね」と抱負を語った。
■小高一斗(KONDO RACING)
セッション3=8番手/セッション4=16番手
テスト2日目午前のセッション3で8番手タイムを記録した小高。そのアタックには「自分のミス」があったということで、しっかりとまとめ上げることができていれば「たぶん2番手、3番手」が見えていたと悔しさをみせる。
小高は「今までは本当にスーパーフォーミュラで富士をまともに走れたことがなく、けっこう苦しんでいたのですが、少し良いところが見えてきたかなと思います」と続け、今回のテストをきっかけに上位進出を狙う。
アタックのみならずロングランに関しても良い方向性が見えたという小高だが、午後のセッション4ではスロットルのトラブルが発生しており「走行中にアクセルが戻らなくなって1コーナーで死にかけました(苦笑)」と、思わぬアクシデントに見舞われたことを明かした。
そんな有事にも無事に対処してピットまでたどり着いた小高。次戦に向けては「前回のSUGOで今年初めてQ1を突破することができたので、良い流れで来れているはずですが、すぐに表彰台に上がることができるほど甘いレースではないです」と気を引き締める。
「予選Q2に進出して上位を走っていれば、いつかチャンスが回ってくると思うので、富士でもしっかりとしたレースをしたいですね」
■大草りき(TGM Grand Prix)
セッション3=18番手/セッション4=17番手
テスト初日には大津弘樹がステアリングを握ったTGM Grand Prixの55号車。迎えた2日目は昨年最終戦以来のスーパーフォーミュラドライブとなる大草がテストを担当した。
一日を終えて大草は「大津さんが昨日いろいろとセットアップの方向性を決めてくれたので、今日はそのなかで”良い”と思われる方向でうまく味付けできれば、という目標で進めました」と振り返った。
「ですが、思っていたよりも気温と路面温度が上がってしまったので、フィーリングとしては、いろいろとまだやらないといけないことは感じました。なので、チームの皆さんと一緒にテストしていくという部分では、いろいろなことを試すことができたのですごく良かったです」
今回のテストがTGM Grand Prixから二度目のスーパーフォーミュラ参加となる大草。昨年最終戦でドライブしたのは53号車ということで、チームからは『53号車と55号車のフィーリングやキャラクターの特性違いを見てほしい』とのミッションも伝えられていたという。
その両車の違いについては「季節が違うので比較は難しいところはありますけど、グリップ感やダウンフォースの出方などが明らかに違いましたね。そのあたりは『同じなのかな』と思っていたんですけど、意外と個体差がありました」と、その印象を語る。
TGM Grand Prixによると、大草と大津のドライブはひとまず今回のテストのみということ。大草は今回の経験を活かし「まずは自分のメインレースであるGT500クラスにしっかりとフィードバックをして、結果を残したいと思います。そのうえで、スーパーフォーミュラに乗るチャンスがあれば頑張りたいです」と笑顔を見せた。
■太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
セッション3=14番手/セッション4=10番手
「普通に速く走れると思っていたのですが、案外調子が上がらなくて」と語るのは太田。
テスト1日目を終えた時点では、「すごい悪いわけじゃないけれど、低迷している感覚。自分では『今の周は良かったな』と思っていても、トップからは遠かったりして」と、期待していたよりもスピードが乗ってこない感覚を口にし、好感を示すことは少なかった。
一方、第2戦オートポリスで優勝を飾ったチームメイトの牧野任祐は、セッション1/2をともにトップで終える快走ぶり。2日目のセッション3/4でも牧野を上回るタイムを刻むことはなかった太田だが、「結構違うセットで走っていたのもあったし、ふたりで違うことをして、フィーリングが良い方に合わせていくのが僕たちの強み」とコメント。今回はタイムの直接的な上下よりも、“テストとしての収穫”に着眼している様子だ。
「テストで良かったのは、いろいろと試したアイテムのなかでも、それなりに効果のあるものと、あまり変化を感じないものとを選別することができたことですね。それで、マシンが良くなる方向が明確に分かった感じもあります」
近い第4戦富士については「思うようにはいかなかったところもありますが、これからチームメイトとデータを共有しながら、相乗効果で上には行けるかなと。そこまで心配はしていないですし、2台で良いところを取りつつチームと準備していけたら大丈夫かな」と淡々と見据える。その太田の本意には、今回のテストを目先の勝利に繋げるよりも、チャンピオンを獲るために活かせるかどうかに重きを置いている心持があるようだ。
「今は正直、『今年まだ勝ってないから』というようなことは考えてなくて、チャンピオンを獲るためにどうなのか、というところをつねに考えています」
「もちろん勝ちたい気持ちもありますけど、それに固執するよりは、もっとシーズン全体を見ていますね。『勝ちたい』ばかりだと、見えていたはずのものも見えなくなっていくと思うので、着実にやっていきたいです」
太田のデビューイヤーであった2023年には、同時期に行われたこのインシーズンテストで流れを掴んで上位勢へ仲間入り、その先には最終戦鈴鹿で初優勝を掴むという成長劇を見せた。細かな変化も大きな上昇へと繋がり得るこのスーパーフォーミュラで、今回得たヒントを糧に、上向いた次章を歩む事ができるだろうか。
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