開幕戦オーストラリアGPの中止をはじめ、第2戦バーレーンGP以降も延期(もしくは中止)が相次いでいる2020年のF1。新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大は、いまやアジアよりもヨーロッパやアメリカが深刻な状態だ。
世界が封鎖され、行き来が制限されていることを踏まえればカレンダーの大幅変更はやむを得ない。今季はF1史上最多となる年間22戦が予定されていたが、日本時間3月23日時点で少なくともシーズン序盤の1/3は何かしらの修正を余儀なくされている。
F1バーレーン・バーチャルGPに、現役ドライバー他ミュージシャンなど多彩な顔ぶれ揃う。優勝はルノー
メルボルンでは金曜日フリープラクティス1回目の開始直前に、急きょグランプリの中止を決定・発表したことにより多くの非難を浴びたF1だが、それから1週間も経たないうちに彼らはさまざまな措置を講じてきた。
その筆頭がカレンダーの再構築に向けた動きだ。例年、ハンガリーGPからベルギーGPのあいだに設けられていた“14日間のファクトリー操業停止(=夏季休業)”を、“3月末~4月末に移し、期間は21日間に延長”することを決めた。ハンガリーからベルギーのあいだには3回の週末(8月9日/16日/23日)があり、休暇を“夏から春に前倒す”ことで8月の3週をカレンダーの調整シロとして活用できる。
ご存じのとおりF1は各国でグランプリが行われることによって、チームに資金がもたらされる仕組みで、レース数の減少はすなわちチームの財政悪化に直結する。そのダメージを最小限に食い止めるべく、1戦でも多くグランプリを開催しようという意志の表れが長期休暇の時期変更だ。
また、2021年からは大幅に技術規則が変更され、新レギュレーションに対応した車両が導入される予定だったが、この動きが2022年まで見送られることになった。いうまでもなく各チームが置かれた現在の不安定な財政状況を考慮しての対応だ。
夏季休業前倒しによるカレンダーの再構築、新技術規則車両の導入延期など、F1は自分たちが生き残るためにさまざまな手を打ってきた。しかも、これらがメルボルンから1週間も経たないうちに決まるというスピード感だ。
こうした内向きな対応に加えて、外向きの(=ファンに向けた)動きもある。
本来、バーレーンGPが開催される予定だった3月22日(日本時間23日)には、F1が新たに立ち上げた『F1 Eスポーツ・バーチャル・グランプリシリーズ』も開幕した。公式ゲーム『F1 2019』を使った試みで、ランド・ノリスとニコラス・ラティフィという現役F1ドライバーに加え、アンソニー・デイビッドソンやニコ・ヒュルケンベルグ、ストフェル・バンドーンら元F1ドライバーらも参戦。その模様を報じた動画の再生回数はレース終了から半日の時点で130万回に達し、ひさびさに多くのファンにレースの愉しさを与えてくれた。
“悪夢のメルボルン”で多くの批判を浴びたF1だったが、そこから失地回復を目指す勢いが凄まじい。新型コロナと戦おうとする知恵や勇気が、わずか1週間のうちに次々とかたちとなって現れてきている。
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