自動運転への取り組み
来たるべき自動運転社会に向けて各自動車メーカーは技術開発に邁進している。BMWも例外ではなく、車両開発はもちろん市街地での安全運転を保証するための機械学習機能を備えた「環境認識テクノロジー」の開発にも巨額の投資を行っている。自動運転の実現には車両/インフラ/法整備の三位一体が不可欠だが、現在は各自動車メーカーが様々なアプローチでまずは自動運転が可能な車両の開発に取り組んでいるのが現状だ。
自動運転“レベル4”とは何か?
ひと言で自動運転と言っても、その内容に応じてレベルがある。BMWが考える自動運転のレベルは以下の通り。
レベル1:「運転支援」 前走車との車間距離を自動調整、衝突を防ぐための歩行者警告など
レベル2:「部分的な自動運転」 ハンドル操作や車線コントロールアシスタンスなど
レベル3:「高度な自動運転」 特定の条件下(高速道路など)における車両の自律運転
レベル4:「完全な自動運転」 ドライバーの介入無しで複雑な運転状況に車両が対応。ただし運転手の操作も可能
レベル5:「自律運転(運転手不在)」 車両が完全に自律運転を行い、操縦席や運転手や免許も不要
現在、BMWは上記で言うところのレベル1はすべての車両で実現し、レベル2もクリアしている。そして2021年にレベル3を実現すべく公道テストを繰り返しているが、今回日本に持ち込まれた7シリーズをベースに製作された実験車両は、さらにその先であるレベル4を目指したものだ。
テスト走行距離は2億4000万kmに及ぶ
BMWの自動運転の実証試験は長期に渡って繰り返され、2006年にはホッケンハイムのサーキットを3シリーズの自動運転車が周回し、2011年の半ばからはドイツのA9高速道路をレベル3の試験車両が走行している。さらに2014年にはラスベガス・スピードウェイで自動運転プロトタイプがドリフト走行を行い、2017年にラスベガスで開催されたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)では5シリーズセダンがレベル3のデモ走行を披露した。
現在は、世界中で80台ほどの試験車両がテスト走行を続けており、その総走行距離は約2億4000万kmにも及ぶという。今回、BMW 8シリーズ グラン クーペの発表会には7シリーズをベースに開発されたレベル4の実験車両が持ち込まれ、デベロップメント・ジャパン本部長のルッツ・ロートハルト氏が自動運転に関するプレゼンテーションを行い、続いてBMWグループ・イベント・スペシャリストのクリストフ・グローテ氏が自動運転デモンストレーションについて解説した。
試験車両は全身にセンサーとカメラを満載。カメラは市販モデルにも搭載されているフロントとリヤ、画像認識用の3眼(短距離、中距離、長距離)に加え、左右のAピラーに各1基、フロントフェンダー左右に各1基、ルーフアンテナ部に1基搭載。さらに前後バンパーの左右角にはLiDARとレーダーを計4基備え、それ以外にも精細なマップと連動するGPSアンテナが2基設置されている。
発表会当日は悪天候でデモンストレーション走行は中止になったが、会場で流された実際のテスト風景を撮影した動画では、運転席に人がいない状態でのテストコース走行を見ることができた。その際の操作は後席の乗員がスタートスイッチを押すのみで、あとは車両が自律的に判断して走行していた。
これらの自立運転に欠かせないのが膨大な量にのぼる情報の処理。BMWグループは2018年にミュンヘン郊外のウンターシュライスハイムに自動運転キャンパスをオープンし、2019年の3月にはデータ駆動型の開発センター「BMWグループ・ハイパフォーマンス3Dプラットフォーム」を稼働させている。ここでは230ペタバイトの記憶容量と10万コア及び200GPUを超える処理能力を兼ね備えているという。
夢の完全自動運転を享受する時代へのハードルはまだ高く、解決すべき問題も少なくない。しかしBMWは現在、限られたコースではあるが既にレベル4を一般公開するまでの技術開発を達成している。今後、BMWが推し進める自動運転実現への期待は大きい。
なお、BMWジャパンは「#NEXTJOY」と題した、最先端テクノロジーを体感するイベントを10月26日(土)と27日(日)、11月2日(土)~4日(月)に東京都・青海のBMW GROUP Tokyo Bayにて開催。抽選でレベル4実験車両の体験試乗を実施している。
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