時代を反映するクルマのカタチ
2ドアのワゴン、タルガトップ、ランドーレットはどこへ行ってしまったのか?
【画像】希少ゆえに心揺さぶる【珍しいスタイルの現行車種4選】 全115枚
こんなことを考え始めると、夜も眠れなくなる。ボディスタイルは、定期的に生まれては消えていく花火のようなものだ。時代の変化、ファッションの変化、技術の進歩によってクルマの「カタチ」はどんどん変わっていく。
近年は、スポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)が世界的なブームとなり、ステーションワゴンなどを駆逐しようとしている。すべてのクルマがSUVになる前に、一度立ち止まって現状を把握してみてはどうだろうか。
どのスタイルが絶滅の危機に瀕しているのか、もしくは絶滅してしまったのか。あるいは、呼称が変わっただけなのか。今ではほとんど見られなくなったスタイルを見ていこう。
2ドア・ワゴン
覚えているだろうか?50年代から80年代まで、ごく普通に見られた光景だ。ハッチバックの前身となる労働者階級のクルマである。
2ドア・ワゴンは、フォード・プリフェクトやエスコート(写真)のような小型車に定番のスタイルとして人気があった。そう、小型から中型のワゴンは、2ドアとして作られることが多かったのだ。車種は豊富で需要も高く、マトラ・ランチョのような面白い変り種もあった。
しかし、ハッチバックがこれに置き換わってしまった。
シューティングブレーク
2ドアのワゴンとは一線を画している。リアドアと長いボディを持つ、実用性を兼ね備えた本格的なスポーツカーである。
もともとは英国貴族が狩りをするために作られたコーチビルドだったが、紳士のためのグランドツアラーへと進化した。高級車ばかりではなく、リライアント・シミターGTEやランチアHPE(写真)など、主流メーカーも手を出していた。
2ドア・セダン
シンプルな2ドア・セダンは、4ドアに比べて安価だったこともあり、50年代以降の定番スタイルだった。しかし、BMW 3シリーズのような高級モデルはクーペに変化していった。
全体的にセダンはファストバックスタイルになり、高級車はクーペに生まれ変わったのである。フォード・エスコート、ヴォグゾール・ノバ、フォルクスワーゲン・ダービー(写真)などは、まさにハッチバック黎明期の犠牲者であった。
ちなみに、ワンボックスのセダン(初代ミニなど)も死滅している。
水陸両用車
旧ドイツ軍のシュビムワーゲンやアルヴィス・スタルワートのような軍用車以外では、アンフィカー(写真)しかない。結局のところ、水と市販車は相容れないということだ。
3人乗りのロードスター
ベンチシートにはさまざまな活用法がある。英国では1950年代に流行したもので、アラード・パームビーチ(写真)、マローダー、ライリーRMCなどの美しいクルマがあり、誰もが華やぐことができた。
最終的には偶数席のコンバーチブルやロードスターが主流となった。
4ドア・コンバーチブル
このスタイルは構造的に難しいものであったが、30年代から50年代にかけて、多くのモデルが登場した。最も有名で痛快なのは、リンカーン・コンチネンタル・フェートン(写真)であろう。
少数のお金持ちのために変則的に作られたものも多い。そうでなければ、技術的な問題の解決に時間をかける価値がない。メルセデス・ベンツは2006年に「コンセプト・オーシャン・ドライブ」と名付けた、V12エンジン搭載の4ドアオープンカーのコンセプトを発表したが、その後は特に何の音沙汰もない。
3ドア・ハッチバック
皮肉なことに、多くのボディスタイルを駆逐したハッチバックも、時代の変化にさらされている。というのも、特に欧州ではメーカーに課せられるCO2排出量の基準が厳しくなり、都市向けの小型車そのものが存続の危機にあるからだ。
3ドアのヴォグゾール・コルサ(写真)やトヨタ・ヤリス(ヴィッツ)はもう手に入らないが、4ドアもいずれパンフレットから消えていくと思われる。
3シーター・クーペ
ベンチシートではなく、個々のバケットシートを備える3人乗りのクーペ。マトラ・シムカのバゲーラとその後継車ムレーナが旗手だった。ロータスよりも1人多く乗れるが、必然的にスペースは狭くなる。
その流れを変えたのが、運転席を中央にセットしたマクラーレンF1だった。他に誰も真似をせず、マクラーレンだけがスピードテール(写真)でこのスタイルを引き継いだのである。
ユーティリティ
昔は、実際に軍用車として使われていたものや、それを模したものを一般に販売していた。初代ランドローバーはもちろんのこと、ミニモーク(写真)のように、パラシュート降下で戦場に持ち込めるように設計されたものもあった。
ロールス・ロイス製エンジンを搭載したオースチン・チャンプ、ダイムラー・ベンツのウニモグ、シュタイア・プフ・ハフリンガー、フォルクスワーゲン・トレッカー(別名シング)やイルティス、スズキのLJ80、ビーチに似合うシトロエン・メハリなども登場した。これらは決してクロスオーバー車ではない。
スピードスター
今ではかなりポルシェに特化した呼び方になっているが、歴史的には20世紀初頭にレース用に簡素化・軽量化されたロードスターを指す言葉だった。少量生産車(プリムス・プロウラーなど)や、ウィンドスクリーンがオプション設定のコンセプトカーにも使われている。
現在最もよく知られているのは、911スピードスター、モーガン・プラス8(写真)、アストン マーティンV12スピードスターあたりだろう。
コマーシャル
コマーシャル(商用車)とは税金を逃れるための策略であり、サイドウィンドウやリアシートのないバン形式のクルマをビジネスツールとして利用するものだ。英国ではリー・フランシスのような高級車に使われ、狩猟や釣りをする人のためのステーションワゴンやシューティングブレークになった。
最近では、ランドローバー・ディスカバリー・コマーシャルや短命に終わったミニ・クラブバン(写真)など、資金に余裕のある職人たちのブランディングに使われている。
また、環境規制も乗用車に比べて緩いことから、スズキがジムニーを商用車として英国へ導入した。
タルガトップ
フィアットX1/9(写真)、ダットサン280ZX、フェラーリ328 GTSなどでは、屋根を手動で着脱することが魅力の1つだった。
タルガとは、1966年に発売されたポルシェ911に初めて使われた言葉で、現在の992型の911にも採用されている。
ファストバック
事実上、これは名前の変更だ。ファストバックの多くは50年代、60年代、70年代のクーペであり、フォード・マスタング(写真)などが思い浮かぶ。
近年、BMWのグランクーペやメルセデスのCLSなど、リアがなだらかに傾斜した4ドア車がよく見られる。高級車だけでなく、ヒュンダイi30のファストバックも登場しているので、復活しようとしているのかもしれない。
ロードスターと2ドア4×4
購買層やファッションの変化によって、人気が低下しているモデルはたくさんある。ステーションワゴンは、長年のであるSUVに徐々に取って代わられている。ロードスターは、マツダMX-5(写真)やケータハムのように、全体に占める割合が少なくなってきている。
クーペはコスト面でますます不利になっている。2ドアの4×4も、商用車でない限り脅威にさらされている(前述のジムニーのように)。ラーダ・ニーヴァはしぶとく生き残っており、ジープ・ラングラーのようにすぐに新しいモデルが登場するだろう。
ランドーレット
馬車の時代から長く使われてきた名称で、50年代から60年代にかけて高級車に見られたスタイルだ。ランドーレットはオープントップのリムジンのことで、上流階級が座る後席には開閉可能なルーフが備わっている。
フェートン
フェートンの名前はギリシャ神話に由来し、主に5人が乗車できる広々としたオープンカーのことを指す。その好例が、写真の1931年キャデラックV16デュアルカウル・スポーツフェートンである。
コロナード・ハードトップ
ゼネラル・モーターズは1973年にクーペモデルをいくつか設計したが、結局は実現しなかったロールオーバー規制を見越して、シボレー・シェベル・ラグナ(写真)のようなBピラーを備えたハードトップ車を開発した。
コロナード・ハードトップと呼ばれるこのスタイルのクルマは、1970年代に米国で起こった「パーソナルカー」ブームの一環として大量に販売された。その後10年間で人気が衰え、現在では米国の自動車メーカーは製造しておらず、メルセデスのEクラス・クーペなどが最も近い存在となっている。
リフトバック・ステーションワゴン
基本的には2ドアとテールゲートを持つワゴンで、マーキュリー・ボブキャット・ヴィレッジャー・ステーションワゴンのようなコンパクトカーがある。しばしば写真のような「ウッド」が追加されていた。
しかし、もっとスポーティなピラーレスタイプのマーキュリー・コミューターなど、4ドアのモデルも存在した。
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みんなのコメント
卑屈な負け惜しみを言ったところで、今のクルマには付けられないのだから。
(そもそも日産車にタルガトップはあるのか?)