「あそこさえ守りきれていれば表彰台で終えることができたのかな」
九州オートポリスで10月20日に開催されたスーパーGT第7戦の決勝後、100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GTの山本尚貴は、3号車Niterra MOTUL Zを駆る“GT500ルーキー”三宅淳詞と20周近くにわたって繰り広げた3番手争いを振り返り、冒頭の言葉を述べた。
エンジン面で「試行錯誤してきた」。ポール獲得に表彰台2台、手応えと悔しさが交錯するニッサンZ陣営【第7戦GT500あと読み】
計4回のセーフティカー(SC)が入った『AUTOPOLIS GT 3Hours RACE』の中盤から終盤に差し掛かった頃、3度目のSCが導入。レース序盤のうちに牧野任祐から山本へのドライバー交代を済ませていた100号車STANLEYは、この直前に2度目のピット作業を完了させ直前までトップ3を独占していたニッサンZ勢の間に割り込み、3番手でコースに復帰した。
「2番手の23号車(MOTUL AUTECH Z)を追い抜こうと思ってプッシュしたのですが、ちょっと行き場がなくて仕留められませんでした」と3回目のリスタート後に勝負を仕掛けにいった山本。
「その後もしばらくペースは良かったのですが、段々ペースが落ちてきて後ろの3号車Niterraに詰められてしまいました。残り周回数を考えたとき、今のフィーリングだと(順位を)守りきるのは結構厳しいと思いつつ、相手(のタイヤ)がタレることも予想できたので要所要所を抑え、なんとか最後まで踏み留まれればと思っていました」
「しかし、残念ながらGT300との絡みがあって……。その時点ですでに左フロントタイヤが結構キツくて右コーナーで全然曲がらない状態でした。最終コーナーでもうまく曲がれないところにGT300がいて、自分的にはうまく処理できたと思ったのですが、それ以上に3号車Niterraがトラフィックを上手にかわしてきて射程に入られてしまいました」
「直線はやはり、ニッサンZのスピードが速いなかで僕たちのクルマは燃リス(燃料リストリクターの調整)が3段階入ってしまっているため、ちょっと守りきれなかったです」
「三宅選手は僕がキツいのは理解していたと思います。無理にGT300を抜きにいって接触するリスクを取るより、タイヤをセーブできるところで抜いていく賢さが前から見えたので。狙われているというか、後ろでチャンスを窺っている感じが伝わってきました。それでも絶対に押さえ切るつもりで走ってはいたのですけどね」
■少ないチャンスを一発で仕留めた三宅淳詞
一方、100号車STANLEYを上回るペースを持ちながら山本の見事なブロックに抑えられるかたちとなった3号車Niterraの三宅は、GT500車両ではオートポリス初走行、それもウォームアップでの5周しか走れていない状況だった。
「それでも落ち着いて走れました。山本尚貴選手との戦いは、相手がベテランで経験値も多いため、いい意味でいやらしかったり、ワザでGT300のクルマをうまく使ってくるので『これは厳しいかな』と思ったりしました」と三宅。
「でもどう考えてもペース的には僕のほうがよかったので、そのあたりは落ち着いて戦えたと思います」
「また、オートポリスはピックアップがつらいというのを事前に聞いていたので、自車のゴムによるピックアップもありますけど、コース上のタイヤかすを拾ってタイヤの表面を汚してしまわないよう、GT300のクルマを抜いていくときは意識していました」
表彰台の最後の枠を争う2台は85周目の最終コーナーで最接近。ストレートで100号車STANLEYのスリップに入った3号車Niterraが、続く1コーナーでアウト側から豪快にオーバーテイクを決めた。
「やはりGT300を使わないと抜けないのかなと思っていたのですが、本当にたまたまタイミングよく(100号車STANLEYが)GT300のクルマに詰まるタイミングがあり、そこを一発でモノにできたのは良かったと思います。燃リス的にもこちらが2段階で向こうが3段階だったので、そこの差もうまく使えたのかなと思います」
なお、1コーナーでアウト側から仕掛けるのは勇気が必要だったのではという質問に対しては「オートポリスは初めてで全部勇気がいるので」と笑顔で答えた三宅。その後「逆に先入観なく戦えたのではないかと思います」と付け加えた。
■残るは2戦。「上手に戦いたい」と山本尚貴
第7戦終了後、レースを4位で終えた100号車STANLEYはチャンピオンシップを争うトムスの2台との点差を縮め、ランキング首位に立つau TOM’S GR Supraとわずか2ポイント差、同2位のDeloitte TOM’S GR Supraとは51ポイントで並んだ。
これにより100号車STANLEYは、サクセスウエイトが“獲得ポイント×1kg”となる第8戦もてぎで燃料リストリクターが1段階絞られることとなる。100号車STANLEYと山本尚貴は4年ぶりの王座奪還を目指すことになる。
「(3号車Niterraとのバトルについて)あの場面さえ守りきれていれば表彰台で終えることができたのかなというのがあって余計に悔しさを覚えるのですが、それでも最大限やれることはやったと思いますし、自分たちの強いレースはできたと思います」
「次のレースを考えると燃リスにも入ってしまうため、その状態で上位に行くのはなかなかキツいはずです。ですが、なんとか最後の鈴鹿戦につなげられるように次のもてぎを上手に戦いたいと思います」
選手権リーダーからランキング4位につける3号車Niterraまで7ポイント差と上位ランカーが接近した状態で迎える第8戦MOTEGI GT 300km RACE。第5戦鈴鹿の開催延期にともない、シーズン7戦目として11月3日(日)に行われるレースではチャンピオン争いのゆくえとともに、どんなバトルが繰り広げられるのか、タイトル争いの動向とあわせて楽しみにしたいところだ。
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