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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第13回】「1ストップ戦略しかない」と臨んだ鈴鹿。FP2ではアタックのタイミングがカギに

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【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第13回】「1ストップ戦略しかない」と臨んだ鈴鹿。FP2ではアタックのタイミングがカギに

 小松エンジニアの母国レースであるF1第17戦日本GP。毎年楽しみにしているという木曜日のピットウォークは晴天のもとで行われたが、今年の鈴鹿は台風19号の影響で予選と決勝レースを日曜日に行うという変則スケジュールとなった。そんななか、金曜日のフリー走行にこれまでとは違う“おもしろみ”を見つけたという。今回も小松エンジニアの言葉で現場の事情をお届けします。

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2019年F1第17戦日本GP
#8 ロマン・グロージャン 予選10番手/決勝15位
#20ケビン・マグヌッセン 予選19番手/決勝17位

タイヤの問題に苦しみ続けるハースF1、2019年シーズン中の解決は困難とチーム代表が示唆

 1年で1番楽しみにしていた日本GPは、今年は台風の影響があったものの、木曜日からすごく楽しかったです。いつも来てくださるハースファンの方曰く、ハースのシャツを着ている人の数も増えているようで嬉しかったです。

 毎年ヘルメットを作ってきてくださる方がいらっしゃるのですが、今年はケビンとロマンの分まで用意してくださったので、直接ドライバーたちに渡してもらう機会を作りました。ドライバーもすごく喜んでいましたよ。僕自身もレース後までたくさん声をかけてもらえてよかったです。

 鈴鹿でのパフォーマンスはあまり心配していなかったのですが、最終的なレース結果はロマンが15位、ケビンが17位となりました。ケビンは日曜の朝の予選で最終コーナーでクラッシュしてしまい、ギヤボックスやリアウイングを壊してしまったので、午後のレースまでにクルマを直すのが大変でした。

 またクルマを修理した後にFIA立ち合いのもとでクルマのセットアップが予選開始時と同じになっているということを確認しなければいけません(もし予選後にクルマのセットアップを変えると、レギュレーション違反によりピットレーンスタートとなります)。これが終わったのが、ピットレーンが開く直前だったので本当にギリギリで間に合ったという感じです。

 レースの戦略は、最初から1ストップにしようと決めていました。今のウチのクルマではオーバーテイクが難しいので、1ストップ作戦のライバルチームに対して2ストップ作戦を採り、全開でライバルを抜いていくというレースはなかなか出来ないのです。

 しかし問題は、ロマンのスタートがとても悪かったことでした。10番手スタートだったのに、1コーナーでは19番手スタートのケビンと並んでいましたからね。ソフトタイヤのロマンが新品のミディアムタイヤを履いたケビンの後ろになってしまうという最悪の状況でした。

 最初のスティントでは、前を走っていたアントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)に詰まってしまい本来のペースでは走れず、またダウンフォースが抜けた状態でずっと走っていたので、スティントの後半はさらにペースが落ちてしまいました。

 キミ・ライコネン(アルファロメオ)が15周目にピットインしたので、まずはロマンを16周目にピットに入れてこれをカバー、17周目にはケビンも入れました。これで予定では、一連のピットストップ前のケビン、ロマン、ライコネンいう順番に戻るはずでした。

 しかしケビンはインラップでダニール・クビアト(トロロッソ・ホンダ)とバトルをしていたのでタイムをロスしてしまい、さらに悪いことにピットストップでもミスがあり1秒ロスしてしまいました。この結果、ケビンがロマンとライコネンの2台の後ろでコースに復帰することになってしまったのは大きな誤算でした。

 16、17周目と比較的早い段階でのピットストップとなったので1ストップ作戦で走り切るためにここでハードタイヤを履くことに躊躇はありませんでした。この週末はフリー走行で1度もハードタイヤを試していませんでしたが、第10戦イギリスGPでのデータがあったので心配はしていませんでした。イギリスGPでは20周目にセーフティカーが入ったので、多くのクルマがここでハードタイヤに履き替え、悪くないペースで最後まで走りきっていました。

 日本GPのタイヤを選んだのは7月4日ですので、7月14日に行われたイギリスGPよりも前です。この時点ではハードタイヤは硬すぎると考えていたので、鈴鹿で金曜にハードで走る選択はしませんでした。

 ですがシルバーストンでのレース結果を見て、鈴鹿でもハードはそれほど悪くないだろうと考えていたので、金曜にハードで走れなくてもあまり懸念はしていませんでした。金曜日のフリー走行でレーシングポイントがハードタイヤを試していたのを見ても、ミディアムタイヤには劣るものの、レースでもいけるなという感覚でした。

 第2スティントで、誰も前にいないフリーエアーの状態で走っている時のロマンのペースはまあまあ良かったです。しかしその後のブルーフラッグで苦労しました。特にバルテリ・ボッタス(メルセデス)の2度目のピットストップの前後両方でブルーフラッグを掲示されてしまいタイムをロスしたのは痛かったです。これが無ければ2ストップをしたセルジオ・ペレス(レーシングポイント)の前、ミディアムタイヤでペースが落ちてしまっていたピエール・ガスリー(トロロッソ。ホンダ)の集団でポイント争いが出来たと思うので残念でした。

■ロングランと予選アタックを同時に行ったFP2はタイミングがカギ
 日本GPでは、台風の影響で土曜日の走行がすべてキャンセルになりました。レギュレーション上では、予選が行われなかった場合はフリー走行3回目(FP3)の順位がそのまま決勝レースのグリッドになりますが、FP3が行われなかった場合のことは書いてありません。

 結局、予選とFP3が中止になった場合にフリー走行2回目(FP2)の順位でグリッドを決めるという最終決定が正式に出たのは、フリー走行1回目(FP1)が終わった後でした。何日も前から台風が来るとわかっていたのに、もう少し判断を早くできないものかなと思いました。ラグビーのワールドカップを見てみれば、木曜日(10日)の時点で土曜日の試合をキャンセルすると決まっていましたからね……。

 この決定により、FP2は通常とは異なるプログラムで進めることになりました。これは普段とは状況が違うということで、個人的にはおもしろかったです。FP3が無くなったのでFP2ではFP3用のタイヤも含めて、計4セット使いました。そして、日曜の朝に予選が出来ない場合はFP2の結果がグリッドとなる可能性があることも考えると通常のFP2のプログラムに加えて、実質上の予選アタックもFP2でしなければいけません。

 通常の予選では時間がかなり限られているので、みんな大体走り出すタイミングが決まっています。ですから、ある意味、ウチもライバルチームもお互いに予定を立てやすいんです。しかしFP2の90分という時間のなかでロングランとアタックラップの両方をこなさなければいけない状況では、予選アタックをかけるタイミングにバラつきがあります。もし他チームとアタックのタイミングがずれ、多くのチームがロングランをやっている時にウチがアタックすることになったら、トラフィックに引っかかってしまいます。ロングランをやっているのであれば予選アタックをしているクルマにラインを譲る義務はないので、予選アタックをかけているクルマがタイムを出すのは難しくなります。

 しかし路面状況はFP2終了間際が最も良いと考えるのが普通なので、ここでは路面状況をとるか、他車に引っかかるリスクを避けるかを天秤にかけます。ルノーは前者をとり、セッション終盤に2度アタックを試みましたが、いずれもロングランを行っているクルマに引っかかり、タイムを出せませんでした。

 ウチはまずセッション序盤に1度目のアタックをかけた後に、2度目のアタックも比較的早い段階で行いました。この時のタイムはかなり良いものが出そうだったのですが、運悪くボッタスが最終コーナーで黄旗を出してしまい、2台ともにタイムを計測することができませんでした。結果、この時点で15番手と16番手。本来は3回目のアタックを出来る限り遅らせて行おうと思っていたのですが、この状況ではリスクを負えません。そこでまた比較的早い段階で最後3回目のアタックをかけ、その後は燃料を積んでロングランに入りました。最終的にFP2は13番手と16番手で終えましたが、作戦としては悪くなかったと思います。

 現在F1の将来について様々なことが話し合われていますが、そのひとつに、レースを2日間で開催するという議論があります。当然サーキット側はお客さんを入れたいので3日間の開催を望んでいますが、そのためには金曜日の走行をもっと意味のあるもの、つまりレース結果に影響するものにしたいという意見があります。

 もし土曜と日曜の両方でレースをやるのでしたら、予選のひとつをこの様に金曜にやるのも良いかもしれません。まあしかし、どんな新しい形式を考えても、3イベントぐらいやると、大体みんな同じ結論を出すので、結局やることは同じになってしまうのですが……。それでも金曜の走行にもっと意義を持たせるのは良いことではないかと思います。

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