ひらりひらりとコーナーを駆けぬける軽快さ。電動車両ではたどりつけない、そんな世界がある。パワーユニットを高回転域まで使いながら純・内燃機関をワインディングで堪能した。
ライトウェイトの分類に異論はあるかもしれない?
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精緻な設計図を必要とするパーツの集合体=機械であるというのに、自動車の分類に使われるさまざま々な呼称の多くには、これといった明確な基準が不思議と存在しない。スポーツカーとミニバンの区別くらいは誰でも簡単にできるが、スポーツカーの定義は? と聞かれたら途端、返答に窮する。
ましてやライトウェイトスポーツカーはなんぞや? などと聞かれたら、”その時代における相対的な分類”とするほかない。重量やサイズにその絶対的な基準があっても良さそうなものだけれど、まるでないのだ。クルマという商品には強く時代性が宿っており、それゆえ相対的に評価するほかない、ということなのだろう。
【写真29枚】最強のライトウエイトスポーツはどれだ? 4車4様のライトウエイトスポーツを写真で見る
今回集めた4台も、今の時代においては”ライトウェイト”に分類されるスポーツモデルばかり。とはいえ、異論もあるはずだ。車検証上の車両重量を少ないモデルから順に並べてみれば、マツダ・ロードスター990Sの990kg、アルピーヌA110Sの1120kg、スバルBRZ Sの1270kg、ポルシェ718ボクスターTの1380kgとなる。ライトウェイトピューリタンにいわせれば、ロードスター以外はみな”失格”とのそしりを受けかねない。
例えばボクスターそのものをライトウェイトモデルに分類することは、正直にいって少々躊躇われる。けれどもポルシェ製の最新市販スポーツカーの中ではもっとも軽い部類であることは確か。重量級の電動ハイパワーカーが増える傾向にあるのだから、アンダー1400kgでも軽いと思える時代にはなっている。逆にいうと、ロードスターのようなアンダー1000kgクラスのモデルは今の時代にとても貴重なわけで、それを誇るかのようなネーミングもまたそのことをよく物語っている。
軽量指向の2台は方向性の異なる楽しさ
当然ながら”軽さは正義”の恩恵をもっとも受けていたのは、ロードスター990Sだった。そもそもロードスターは軽量化に関してはやり尽くしていて、実をいうとベースとなったSグレードでも車重は990kg(MT)でしかない。990Sとするにあたってさらに軽くする手法はもはや材料置換くらいしかなく、大型ブレーキを装備しつつ、鍛造ホイールを標準とすることでバネ下を合計3kg、やっと削ることに成功した。実際には987Sというわけだ。
オープンデフの990Sでは、この足元の軽さとKPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)+ブレーキLSDのおかげで、左右輪において回転数差の出るような速いコーナリング領域でもリアは落ち着いていて、とても”安心”して踏み込んでいける。リアの浮きが抑制されて不安が明らかに減っているから、非力なエンジンパワーを目一杯使ったコーナリングが楽しみでならない。
伝統的にロードスターの動きは古典的なFRそのもので、フロントの上下動をしっかりコントロールする楽しさが如実に残っている。クラシックスポーツの醍醐味を現代によく伝える貴重な存在だ。
A110には軽量スポーツカーのクラシックな魅力と、現代的なGTの洗練された落ち着きが高いレベルでバランスされていた。スポーツドライビング中には”軽いクルマ”な印象が常につきまとっている反面、リアミドシップということもあってロードスターよりも全般的に路面に近く、這うようにコーナーをクリアする。
今回はSというアシを固めた仕様だったため、街中や高速道路では路面の状態に忠実は動きをみせ、ちょっと辛いと思うこともあったが、そのぶんワインディングロードではまさに水を得た魚。十二分なエンジンパワーとDCTの電光石火な変速が相まって、4台のなかではもっとも刺激的だった。クルマから降りてもスキップしたくなるほど気分が浮きたった。
唯一の2ペダル。回して楽しいエンジンかというとそうでもない。街中でのボロンボロンという音も無粋。ならば、強くしなやかなボディ&シャシーの性能を存分に楽しむという意味でも2ペダルの方がお似合いだろう。
現代的な完成度の2台は全方向にハイポテンシャル
BRZとボクスターの2台は明らかに(そして当然のことながら)最新スポーツカーに特有のモダンなドライビングファンテイストを備えていた。十二分なエンジンパワーと計算されたボディ剛性、精密なシャシーの動きが欠点なく連携する点で、非常に完成度の高いスポーツカーだ。FRにMRというエンジンレイアウトの違いこそあれ、誰が乗っても楽しいと思えると同時に、高い日常性を有している面においても、いわば同類、最新のテイストを持っている。
奇しくもこの2台にはフラット4が搭載されているのだけれど、エンジンそのもののフィールに魅力があることでも似通っている。BRZのそれは2.4Lで、コンパクトなモデルには今どき珍しい”大排気量”自然吸気ユニット。マニュアルミッションを駆使してエンジンを味わうという意味では、今回の4台のなかでもっともファンだった。昔のピュアなエンジンノイズに比べれば、サウンドといえるほど人工的に調律されており、それゆえ興醒めな瞬間もなきにもあらず、だったが、この時代に魅力あるエンジンをしゃぶりつくせる3ペダルのFRというだけで存在理由は大きい。
ボクスターTは軽量グレードであっても完成度の高さはキープしており、まるで隙のないミッドシップカーとして普段乗りからスポーツドライビングまでをよくこなす。フラット4ターボは快活で、まわす楽しみこそ限定されるものの、3ペダルで操ることの楽しさはきっちり備わっていた。オールマイティな実力が、4台のなかで頭抜けているのは間違いない。
こうしてみると、自動車の進化そのものが重量増であったという皮肉な事実は見逃せない。もっとも軽いロードスターから順に、スポーツカーを操るというクラシックな喜びそのものは減じてしまう。楽しいクルマにはアジがある。アジとはつまり進化の伸び代であったのかもしれない。
ライトウェイトを最も体現するマツダ・ロードスター990Sを選ぶ
ライトウェイトという肩書きが必須なら、ロードスターを選ぶ。"御す"というクラシックな感覚がもっとも濃く今に残るクルマであり、電動化の進むこの先、マツダがエンジン搭載を諦めたときには、絶滅する可能性大。
【SPECIFICATION】マツダ・ロードスター990S
■全長×全幅×全高=3905×1735×1225mm
■ホイールベース=2310mm
■車両重量=990kg
■エンジン/排気量=直4DOHC16V/1496cc
■最高出力=132ps(97kW)/7000rpm
■最大トルク=152Nm(15.5kg-m)/4500rpm
■トランスミッション形式=6速MT
■サスペンション形式(F:R)=Wウイッシュボーン/コイル:マルチリンク/コイル
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ=195/50R16
■車両本体価格(税込)=2,893,000円
■問い合わせ先=マツダ ☎0120-386-919
【SPECIFICATION】ポルシェ・ボクスターT
■全長×全幅×全高=4385×1800×1260mm
■ホイールベース=2475mm
■車両重量=1380kg
■エンジン/排気量=水平対向4DOHC16V+ターボ/1988cc
■最高出力=300ps(220kW)/6500rpm
■最大トルク=380Nm(38.8kg-m)/2150-4500rpm
■トランスミッション形式=6速MT
■サスペンション形式(F:R)=ストラット/コイル:ストラット/コイル
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=235/35R20:265/35R20
■車両本体価格(税込)=9,210,000円
■問い合わせ先=ポルシェジャパン ☎0120-846-911
【SPECIFICATION】アルピーヌA110S
■全長×全幅×全高=4205×1800×1250mm
■ホイールベース=2420mm
■車両重量=1120kg
■エンジン/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1798cc
■最高出力=300ps(221kW)/6300rpm
■最大トルク=340Nm(34.6kg-m)/2400rpm
■トランスミッション形式=7速DCT
■サスペンション形式(F:R)=Wウイッシュボーン/コイル:Wウイッシュボーン/コイル■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=215/40R18:245/40R18
■車両本体価格(税込)=8,970,000円
■問い合わせ先=アルピーヌ・ジャポン ☎0800-1238-110
【SPECIFICATION】スバルBRZ S
■全長×全幅×全高=4265×1775×1310mm
■ホイールベース=2575mm
■車両重量=1270kg
■エンジン/排気量=水平対向4DOHC16V/2387
■最高出力=235ps(173kW)/7000rpm
■最大トルク=250Nm(25.5kg-m)/3700rpm
■トランスミッション形式=6速MT
■サスペンション形式(F:R)=Wウイッシュボーン/コイル:Wウイッシュボーン/コイル■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ=215/40R18
■車両本体価格(税込)=3,267,000円
■問い合わせ先=スバル ☎0120-052-215
マツダ公式サイト
ポルシェ公式サイト
アルピーヌ公式サイト
スバル公式サイト
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