相次ぐセーフティカー導入で波乱の展開となった2024スーパーGT第7戦決勝。なかでもGT500クラスは、その“セーフティカー導入のタイミング”が明暗を分け、DENSO KOBELCO SARD GR Supraが4年ぶりの優勝を果たした。その一方で、レース前半からライバルを圧倒する速さをみせていたMOTUL AUTECH Zは2位でフィニッシュ。千代勝正、ロニー・クインタレッリともに「あのタイミングでセーフティカーが入らなければ……」と悔しい表情をみせた。
2番グリッドからスタートした22号車MOTUL Zは、千代が第1・2スティントを担当。スタートで14号車ENEOS X PRIME GR Supraの先行を許すも、2周目で抜き返してトップの24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zに迫っていった。
「あそこさえ守れれば」ワンチャンスの明暗。STANLEY山本とNiterra三宅が魅せた極上の3位バトル
「スタートで14号車に抜かれて、早い段階で抜き返さないと中団に埋もれるかもしれないと思っていました。ちょっと無理をして14号車の前に出ました」と千代。
「その後は24号車を追いかける展開になって、最初は(24号車の)ペースが良かったですけど、どこかで落ちてくるだろうなと冷静に見ていました。ちょうど落ち始めてきたタイミングで抜くことができました」
12周目にトップに立った千代は、一気に後続を引き離していき、最大で20秒以上のギャップを築いた場面もあった。
「タイヤのグリップを感じながらクルマのパフォーマンスを最大限引き出せるように努力していました。ペースはすごくあったので後ろとのギャップを広げながらいきましたけど、何が起こるか分からないから安心はできなくて、自分のスティントは常にプッシュしていました」
しかし、今回のレースではアクシデントが多発し、その度にセーフティカー(SC)が導入。せっかく築いたリードがリセットされるたびに千代もやり切れない思いが頭のなかを駆け巡ったという。
「最初のSCが出た時も『うわぁ、この20秒のギャップが……』と思いましたけど、気持ちを切り替えてリスタートから集中力を切らさないように走っていきました。2回目のSCも同じで、そこまで築いたギャップがなくなってしまいました。それでもロニーさんに交代するときにはなるべくギャップがあった方が良いからと頑張ってプッシュしました」
2スティント目の終盤も20秒近いギャップを築いてクインタレッリに交代。アウトラップでペースが上がり切らないタイミングでセーフティカーが導入され、その時ちょうどピット作業をしていた39号車DENSO Supraがトップに躍り出る形となった。
「(最初の2スティントで)トータルで40秒くらいは引き離したはずなので……本当に残念ですね」と方を落とす千代。
「今回は勝つレースをするという気持ちで臨んでいて、その通りにできていたと思うので……本当に勝てるレースだったと思いますし、勝てるクルマでした。本当にセーフティカーのタイミングだけで勝利を逃してしまったなと。レースは全てが揃わないと勝てないですけど、今回何が足りなかったかというと運だけだったなと思います」と語るも、速さを見せていながら優勝できなかったという悔しさが表情に表れていた。
⚫︎ロニー・クインタレッリ「SCのタイミングで逆転されたのを知った時はガッカリした」
「今回は前半からリードがすごくあった状態で、あの時も10数秒のリードを持って千代選手がピットインして、僕が乗り込みました」
そう語るのは、今回3スティント目を担当したクインタレッリ。ピットアウトしてタイヤを温めている最中にModulo CIVIC TYPE R-GTの伊沢拓也が3コーナーでクラッシュし、セーフティカーが導入された。
「アウトラップはすごく良くて、ちょうどジェットコースターストレートあたりでセーフティカー導入の無線が入っていきました。『このタイミングでSCか』と思いながらストレートに戻ってきたら39号車がちょうど1コーナーにいるという状況で、最初はどうなっているか分からなくて無線で確認しました」
「(39号車に逆転されたこと)それを聞いた時はすごくガッカリしましたね」
それでも再逆転を狙いにいったクインタレッリ。リスタート後の1周目はタイヤのウォームアップの兼ね合いで自分たちが有利だと判断し、68周目の再開時は猛チャージをかけていったという。
「リスタート後の1周目は僕たちの方が温まりが良かったので、1コーナーで仕掛けましたが、うまくディフェンスされました。あそこがビッグチャンスだったと思います。(39号車の)タイヤが温まってからは向こうのペースが良かったですし、僕たちはGT300と絡むタイミングが良くなくて、タイムを落とす量が多かったですね」
一時は9秒近く引き離されたが、残り15分のところでアクシデントが発生して今回4度目となるセーフティカー導入。今度は追いかける立場としてギャップをリセットできたが、レース再開前に3時間を迎えて2位チェッカーとなった。
レース後の囲み取材では悔しそうな表情が印象的だったクインタレッリだが、「ペース的に少し足りないところがあって残念でしたけど、第2戦以来の2位表彰台ですし、予選ポイントを含めて合計17点を稼ぐことができたので、ランキング的にも残り2戦に向けても凄く貴重な得点だったと思います」と今回の結果を前向きに捉えていた。
ランキング6位となって迎える第7戦もてぎ、23号車のパフォーマンスは上向きなだけに、チャンピオン争いにもまだまだ食い込んできそうな気配だ。
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